一つの竹や木や銅の表面に文字などを記し,それを二つに割って別々に所持し,両者を合わせることで互いに相手を信用する方法。
中国では一種の身分証明用のふだとして使用され,剖符とも記す。この制度は,《周礼(しゆらい)》《孟子》に〈符節〉〈符節を合す〉などの語が見えるように,統一秦以前から存在していた。最初は竹の節(ふし)を用い,節のところを縦に割いたものであったことがその名の由来であろう。統一国家になると,特に中央の指令を使者が地方に伝えるとき符が用いられる。漢での主要な符として〈銅虎符〉と〈竹使符〉があり,ともに長さ6寸(10cm余)程度,右半分を中央に,左半分を地方長官のもとにおいた。前者は銅製で虎の形をしたもので軍事に関する連絡用(虎符),後者は竹の節をかたどった銅製のもので軍事以外の重要事項の連絡に用いられた。このほか,漢では一定の関所に限って使用される通行証としての符も存在しており(過書),また符節をあつかう官として〈符節令〉が中央に置かれた。割符の制度は漢以後,近代まで続く。唐代では銅虎符にかわり鯉をかたどった(唐王室の李姓と同音による)〈銅魚符〉が使用され,門下省に符節担当官〈符宝郎〉が置かれた。以後,宋・明と割符の使用は,基本的には漢とあまり変わらないが,明には別に外国貿易にあたって諸外国に分かち与えた割符〈勘合符〉がある。なお,日本の中世に用いられた為替手形については〈割符(さいふ)〉の項を参照されたい。
執筆者:冨谷 至
中世の為替手形。金銭や米穀の預り証書をいう。本来は木や竹などの札に証明となる文字・文句を書き,中央に証印を押して,これを二つに分割したもの。振出人と支払人とが別々に所有し,支払の際に受領人の持参した割符と支払人所持の割符を合わせて証拠とする。支払人は割符の裏に支払期日を書いて(裏付),支払の証明とする。支払を拒否された割符を違割符という。鎌倉時代のころからこうした割符を利用した為替行為がはじまり,それは替銭・替米などとも呼ばれたが,室町時代になって商品流通や遠隔地間交易がいっそう展開すると,京都,山崎,堺,坂本などに割符を取り扱う専業の商人があらわれ,割符屋,割符人と呼ばれた。割符はまた切符,切手,わりふとも呼ばれ,宰符,際符,細符などとも書かれた。
執筆者:小田 雄三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鎌倉期以降、遠隔地へ送金する際に替銭(かえぜに)を手形に組んで使用した為替(かわせ)手形。「わりふ」ともいう。室町時代の代表的な国語辞典『下学集(かがくしゅう)』では「切符(きっぷ)」と同意義とされている。鎌倉後期以降、年貢の銭納化や隔地間交易が盛んとなり、銭貨流通が拡大した。しかし銭貨は重量がかさみ持ち運びに不便であったため、割符が活用されるようになった。南北朝末期から室町前期にかけて成立したといわれる『庭訓往来(ていきんおうらい)』に「湊(みなと)々の替銭、浦々の問丸(といまる)、同じく割符を以(もっ)て之(これ)を進上す」とあり、すでにこの時期に割符による取引が一般化していたことがわかる。割符の運用例として、東寺(とうじ)領備中(びっちゅう)国新見荘(にいみのしょう)(岡山県新見市近辺)では、荘内の市場にくる畿内(きない)商人に年貢米を売却し、その代金が割符に組まれて東寺へ送られ、東寺では指定された割符屋でこれを現金化している。このほか旅行途上での資金不足などから借銭し、その返済を代人による他地払いで行う旨を約束する割符もあった。これには利息がつけられるのが一般的である。割符による取引は信用取引であるから、これを支える有力商人が必要であり、割符屋、替銭屋が出現した。しかし当時はかならずしも割符の支払人(割符屋)と振出人(割符主)との関係が円滑にいったわけではなく、換金を拒否される場合も生じた。このような割符を「違割符(ちがいさいふ)」と称した。
[鈴木敦子]
『『中世日本の商業』(『豊田武著作集 第2巻』1982・吉川弘文館)』
文字やしるしを木片や竹片などに書き、それを二つに割ったもの。それらを別々に所有しておき、のちに二つを合わせて真偽確認の証拠とした。「わっぷ」はその音便であり、「割札(わりふだ)」「割符(さいふ)」「切符(きりふ)」ともいう。
[藁科勝之]
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「わっぷ・わりふ」とも。切符・切手とも。中世の為替手形。形式は不定だが,送金額や受取人・支払人(替銭屋(かえせんや))の名などが記され,これを受取人が指定の替銭屋に提示すると,一覧払いの場合はただちに換金され,期限払いの場合は替銭屋が裏付(うらづけ)を行い,そこで指定日に支払われた。裏付を拒否された割符は違割符といい,その場合は受取人から送金依頼人に返送されて,割符を振り出した替銭屋に補償を請求する。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…銭を対象とするものを替銭(かえぜに∥かえせん∥かわしぜに∥かわし)と呼び,米を対象とするものを替米(かえまい∥かわしまい)といった。また利用された手形・証書を割符(さいふ∥わりふ∥かわし),切符(きつぷ),切紙(きりがみ)などと呼んだ。替銭・替米は,(1)年貢の輸送などの遠隔地への米銭送付に際して,荘園あるいはその近傍の都市で手形に替え,これを荘園領主に送付し,京都,山崎,奈良,堺などで米銭で受け取る場合と,(2)米銭の借用に際して,荘園年貢を引当てとし,荘園現地での支払を約束する手形を振り出す場合との両義を意味した。…
…江戸時代における破産をさす語。割賦(割符)(わつぷ)ともいう。しばしば〈身代限(しんだいかぎり)〉と混同され,明治初年には両者が制度的に合体するが,江戸幕府法上は,裁判所による強制執行としての〈身代限〉と,債権者・債務者間の契約による〈分散〉とを,明確に区別している。…
…銭を対象とするものを替銭(かえぜに∥かえせん∥かわしぜに∥かわし)と呼び,米を対象とするものを替米(かえまい∥かわしまい)といった。また利用された手形・証書を割符(さいふ∥わりふ∥かわし),切符(きつぷ),切紙(きりがみ)などと呼んだ。替銭・替米は,(1)年貢の輸送などの遠隔地への米銭送付に際して,荘園あるいはその近傍の都市で手形に替え,これを荘園領主に送付し,京都,山崎,奈良,堺などで米銭で受け取る場合と,(2)米銭の借用に際して,荘園年貢を引当てとし,荘園現地での支払を約束する手形を振り出す場合との両義を意味した。…
…銭を対象とするものを替銭(かえぜに∥かえせん∥かわしぜに∥かわし)と呼び,米を対象とするものを替米(かえまい∥かわしまい)といった。また利用された手形・証書を割符(さいふ∥わりふ∥かわし),切符(きつぷ),切紙(きりがみ)などと呼んだ。替銭・替米は,(1)年貢の輸送などの遠隔地への米銭送付に際して,荘園あるいはその近傍の都市で手形に替え,これを荘園領主に送付し,京都,山崎,奈良,堺などで米銭で受け取る場合と,(2)米銭の借用に際して,荘園年貢を引当てとし,荘園現地での支払を約束する手形を振り出す場合との両義を意味した。…
…これは符籙(ふろく)ともいわれ,道士にとっては免状にあたるもので,彼らはこれをたいせつに封印し,御守としてつねに身につける。 符がこのような霊力をもつとされるのは,符に割符(わりふ)の意味があるのと関係するだろう。割符は権威あるものから特許された権利を保証するもので,もともと竹や木のふだを半分に割り,与えるものと与えられるものとが半分ずつをもって,必要なときに照合するものであった。…
…本来は木や竹などの札に証明となる文字・文句を書き,中央に証印を押して,これを二つに分割したもの。振出人と支払人とが別々に所有し,支払の際に受領人の持参した割符と支払人所持の割符を合わせて証拠とする。支払人は割符の裏に支払期日を書いて(裏付),支払の証明とする。…
…日本古代の律令制下で三関の開閉の際に用いられた木製の割符。関契ともいう。…
※「割符」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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