(読み)コウ

デジタル大辞泉 「向」の意味・読み・例文・類語

こう【向】[漢字項目]

[音]コウ(カウ)(漢) キョウ(キャウ)(漢) [訓]むく むける むかう むこう さきに
学習漢字]3年
〈コウ〉
ある方にむかう。「向寒向上向日性傾向出向転向動向
心がめざす。おもむき。「向学意向志向趣向
つき従う。「向背
むき。「風向方向
〈キョウ〉(「きょう」と通用)さきに。「向来
[名のり]ひさ・むか・むけ
[難読]一向ひたすら日向ひなた日向ひゅうが向日葵ひまわり

きょう【向/亨/孝/香/校/梗/興】[漢字項目]

〈向〉⇒こう
〈亨〉⇒こう
〈孝〉⇒こう
〈香〉⇒こう
〈校〉⇒こう
〈梗〉⇒こう
〈興〉⇒こう

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精選版 日本国語大辞典 「向」の意味・読み・例文・類語

むこうむかふ【向】

  1. [ 1 ] ( 動詞「むかう(向)」の終止形・連体形の名詞化した語とみて、歴史的かなづかいは「むかふ」とするが、他に連用形「むかい(むかひ)」のウ音便形とみて「むかう」とする説もある )
    1. 対する前面。前方。かなた。
      1. [初出の実例]「向かうに、雉が居まする」(出典:虎寛本狂言・禁野(室町末‐近世初))
    2. 物をへだてたあちら側。
      1. [初出の実例]「むかふの在所は入間の在所」(出典:波形本狂言・入間川(室町末‐近世初))
      2. 「むかふの岸に舟をあがれば」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)象潟)
    3. 距離があって、直接見ることのできないあちら側。外国など。
      1. [初出の実例]「亡き父が西洋(ムカフ)から取り寄せたものである」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一五)
    4. 相手。先方。
      1. [初出の実例]「向ふから打って参る、斯う請まする」(出典:虎寛本狂言・棒縛(室町末‐近世初))
    5. 未来の時。向後。また、時を表わす語を伴って、「この次の」「次にやってくる」などの意になる。
      1. [初出の実例]「全部三巻となし、むかふ巳の春の新撰にそなへんとす」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)七)
    6. ある物事の反対、あるいは対照
      1. [初出の実例]「儲けといふは損の向ふ勝といふは敗(まくる)といふがあればなり」(出典:当世商人気質(1886)〈饗庭篁村〉三)
    7. 歌舞伎で用いる語。
      1. (イ) 花道への出入り口。花道へ出る揚幕のあるところ。
        1. [初出の実例]「皆皆花道へかかる、向ふより秀則、上下衣装にて高股立、大きなる金の幣束をかつぎ出て来り」(出典:歌舞伎・名歌徳三舛玉垣(1801)三立)
      2. (ロ) 舞台正面
        1. [初出の実例]「造り物、平舞台、向ふ浅黄幕」(出典:歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)三)
      3. (ハ)むこうさじき(向桟敷)」の略。
    8. 和船の水押(みよし)の正面の総称。上部を張出(はりだし)、喫水線付近を潮切という。
      1. [初出の実例]「むかうの中之厚さ之事 櫓壱丁に付八厘つつ、五拾丁には四寸の厚さ」(出典:関船之書物(1675)三)
    9. むこうづけ(向付)」、また、「むこうづめ(向詰)」の略。
      1. [初出の実例]「むかふにひきたる一献やきのうほなどを、手をのばして取もみぐるし」(出典:浮世草子・男色十寸鏡(1687)下)
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙
    1. 正面を向いたものである意を表わす。「むこうずね」「むこうきず」など。
    2. 相手の側、物をへだてた反対側の意。「むこうぎし」「むこう三軒」「むこうづけ」「むこうみず」など。

むき【向】

  1. [ 1 ] ( 動詞「むく(向)」の連用形の名詞化 )
    1. むいている方角。むいている方向。
      1. [初出の実例]「コノ イエノ muqiga(ムキガ) ヨイ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    2. そういう事柄・傾向・性質。また、それを持った人。
      1. [初出の実例]「かかる顔だちをイキとやらたたへて、よろこべるむきの人もありとぞ」(出典:藪の鶯(1888)〈三宅花圃〉二)
      2. 「ちょっとした落度を大目にみるむきはあったし」(出典:がらくた博物館(1975)〈大庭みな子〉犬屋敷の女)
    3. ある方面に関わること。また、その人。その筋。
      1. [初出の実例]「かかるむきの事ぞ」(出典:漢書帝紀抄(1477‐1515)景帝紀第五)
      2. 「おのおの其向の authority とすべき人物を選んで」(出典:ヰタ・セクスアリス(1909)〈森鴎外〉)
    4. ある方面に適当すること。似つかわしいこと。「むきふむき」
      1. [初出の実例]「如何しても青雲の雲の上には向(ム)きの悪い男であるから」(出典:福翁自伝(1899)〈福沢諭吉王政維新)
    5. ちょっとしたことに本気でおこること。くそまじめになること。→向きになる
      1. [初出の実例]「それはむきでもねいにおめいつみになりやすよ」(出典:洒落本・廓通遊子(1798)発端)
    6. 数学でいう語。
      1. (イ) 直線や線分の方向。
      2. (ロ) 不等号の開きの方向。
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙
    1. ある方向・方角に向いていることを表わす。
      1. [初出の実例]「みなみむきにおはす」(出典:枕草子(10C終)一〇四)
    2. あるものに似つかわしいこと、適していることなどを表わす。
      1. [初出の実例]「都の町に北国むきの傘を仕込む職人有」(出典:浮世草子・本朝桜陰比事(1689)五)

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普及版 字通 「向」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 6画

[字音] コウ(カウ)・キョウ(キャウ)・ショウ(シャウ)
[字訓] まど・むかう

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
(けい)(窓の形)+口。口は(さい)、祝詞を収める器の形。窓は神明を迎えるところ。そこに神を迎えて祀った。〔説文〕七下に「北に出づる(まど)なり。宀(べん)に從ひ、口に從ふ」とし、〔段注〕に口を窓枠の形とするが、窓枠は(けい)の形にしるす。古く地下形式の住居は、中央に空庭を設けて光を取り、そこから横穴式に四方に房を設けた。その窓明かりを神明にみたて、月光の入るところを(明)として祀った。〔儀礼、士虞礼記〕「(しゆく)、從ひて(いうきやう)を(ひら)く」とは、その窓を開くことをいう。はその向(まど)に(郷)(むか)う意。姓に用いるときは、ショウの音でよむ。

[訓義]
1. まど、神明を迎えるまどの形、きたまど。
2. むかう、すすむ、むきあう、したう。
3. と通じ、さきに。

[古辞書の訓]
名義抄〕向 ムカフ・サキ・ナンナントス・イマシ・イタル・カミ・マサニ・ユクヘ/向來 イマシ・タダイマ〔字鏡集〕向 オモムク・ユクスヱ・マホル・イマシ・アツ・ムカフ・サキ・ムネ・イタル・マド・カミ・サキツカタ・サキニ

[声系]
は向(きよう)声。〔説文〕に載せず、後起の字。

[語系]
向・享・xiangは同声。獻(献)xianも声義に通ずるところがあり、向とはもと神明を迎える窓に享献を行うこと、その享献の場であった。

[熟語]
向隅・向者・向風・向物・向壁向慕・向来・向例・向学・向後・向上・向背向陽向使
[下接語]
意向・一向・回向・下向・外向・帰向・傾向・参向・志向・指向・趣向・出向・趨向・性向・対向・転向・動向・内向・背向・偏向・方向・影向

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【向付】より

…日本料理で膳の向こう側につける料理,また,それを盛りつける器をいう。江戸時代半ばには使われていたことばで,なますか刺身を用いることが多かった。…

※「向」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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