返す(読み)カエス

デジタル大辞泉 「返す」の意味・読み・例文・類語

かえ・す〔かへす〕【返す/反す】

[動サ五(四)]
表であったものを裏にしたり、上であったものを下にしたりして、ものの向き・位置を反対にする。裏がえす。ひっくりかえす。「せんべいを―・しながら焼く」「手の平を―・す」「差し手を―・す」
たがやす。土などを掘りかえす。「田を―・す」
(返す)物をもとあった所に戻す。「読んだ本を棚に―・す」
(返す)受けたり借りたりしたものを、もとの所有者に戻す。返却する。返済する。また、返上する。「借金を―・す」「官位を―・す」
(返す)変わってしまった物事をもとの状態どおりにする。「話を白紙に―・す」
(返す)相手から受けた行為に対して、それと同じことをこちらからする。相手の働きかけに、同等の働きかけでこちらが応える。
返報返礼をする。「恩をあだで―・す」「お金で―・す」
返答返歌をする。「言葉を―・す」「視線を―・す」「歌を―・す」
食べた物を吐く。戻す。〈和英語林集成
雅楽などで、律呂りつりょの調子を変えてうたう。
《「反切はんせつ」の「反」を「かえす」とよむところから》反切によって漢字の音を示す。
10 もとへ戻る。返る。ひきかえす。「寄せては―・す白波の」「取って―・す」
11 違った色に染める。染めかえす。
小桜を黄に―・いたる鎧きて」〈平家・一〉
12 動詞の連用形に付けて用いる。
㋐その動作を初めからもう一度、または何度もしてみる。くりかえす。「本を読み―・す」「糸を巻き―・す」
㋑相手からされたのと同じことを、こちらから相手に対してする。「言い―・す」「なぐり―・す」
[可能]かえせる
[用法]かえす・もどす――「本を返す(戻す)」「もとの位置に返す(戻す)」などでは相通じて用いられる。◇「返す」は「借りた金を返す」「恩を返す」のように対人関係に用いるほか、「たなごころを反す」「きびすを返す」のような位置の転倒を意味する用法がある。これらに「戻す」を用いることはない。◇「戻す」は同じ道筋をたどって原位置に置く意が強く、「本を戻す」は、もとの場所に置く意である。「振り出しに戻す」「話を本題に戻す」のようにも用い、これらでは「返す」との交換は無理である。◇「本を返す」は所有者に返却する意であり、「返す」をもとの位置に戻す意で使うときは、多く「本を書架に返す」のように「…に」の形で場所を限定して示す。
[下接句]裏を返す裏釘うらくぎを返す恩をあだで返すかいなを返す回瀾かいらん既倒きとうかえきびすを返す唇を反すくびすを返す軍配を返す言葉を返す杯を返す反りを返すたなごころを反す手を反す手の平を返す取って返す白紙に返す
[類語](3戻す差し戻す押し戻す押し返す引き戻す呼び戻す呼び返す/(4返却返還返品還付返上返送返戻奉還償却償還返納返済完済皆済弁済返金返本返杯倍返し払い戻し割り戻し割り戻す払い戻すリベートキックバックペイオフ

かや・す【返す】

[動サ五(四)]かえす」の音変化。中世以降の語。現代では関西・北陸地方の方言。
「ただで―・したらつまらん」〈水上大阪の宿

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「返す」の意味・読み・例文・類語

かや・す【反・返・帰・覆】

  1. 〘 他動詞 サ行四段活用 〙 ( 動詞「かえす(反)」の変化した語 )
  2. もとの場所、状態にもどす。前にもっていた人にもどす。
    1. [初出の実例]「汝かへりてかやさんとて、多く人の物をかりたり」(出典:九冊本宝物集(1179頃)八)
  3. 裏を表に出す。ひるがえす。
    1. [初出の実例]「縫ひやう、ふせ縫也。すそをかやして縫べからず」(出典:娵入記(1443‐73頃))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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