後の祭(読み)アトノマツリ

デジタル大辞泉 「後の祭」の意味・読み・例文・類語

あと‐の‐まつり【後の祭(り)】

祭りのすんだ翌日。また、その日、神饌しんせんを下ろして飲食すること。後宴。
祭りのあとの山車だしのように、時機遅れで、むだなこと。手遅れ。「今さら悔やんでも後の祭りだ」
[類語]最早もはや早早はやばや早早そうそう早め尚早もうはや早くも今やすでにとっくにとうにとうの昔とっくの昔つとに先刻後悔先に立たずこのに及んで今さら覆水盆に返らず遅い手遅れ生まれた後の早め薬証文の出し後れ争い果ててのちぎり木喧嘩けんか過ぎての棒ちぎり十日の菊六日の菖蒲あやめに合わぬ花夏炉冬扇かろとうせん寒に帷子かたびら土用に布子

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精選版 日本国語大辞典 「後の祭」の意味・読み・例文・類語

あと【後】 の 祭(まつり)

  1. [ 一 ]
    1. 祭札の翌日。また、その日、神饌(しんせん)を下げて飲食すること。後宴。
      1. [初出の実例]「八月十六日八幡へ参詣して、跡の祭(マツリ)するや臨時の放生会(はうじゃうゑ)」(出典:俳諧・鷹筑波(1638)四)
    2. ( 祭の済んだ後の山車(だし)の意から ) 物事が、その時機をはずして、無益なものになってしまうこと。手おくれ。
      1. [初出の実例]「死して後に紙銭を焼て不祥を除く也。をかしいこと也。無用処也。あとのまつり也」(出典:虚堂録臆断(1534)五)
  2. [ 二 ] ( 男女の交わりを、隠語で「おまつり」というところから ) 男色の異称
    1. [初出の実例]「跡の祭りやろうのけいせいをあげ」(出典:雑俳・末摘花(1776‐1801)三)

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ことわざを知る辞典 「後の祭」の解説

後の祭

時機を逸して、どうにもならないことや、悔やんでも取り返しがつかないことのたとえ。

[使用例] 所詮末のつまらぬ事と。無理に引立いんだのは。娘にひけをとらすまい為おれが気迷ひ。〈略〉コリャ宗岸が一生の仕損ひとサくやんでも跡の祭[浄瑠璃艶容女舞衣(三勝半七)|1772]

[使用例] 新聞に一度出たものを今更、あの記事は間違っているといったところで後の祭です。新聞社に談じこめば、記事の訂正は出すでしょうが〈略〉読者なんか見やしません[三浦環*お蝶夫人|1947]

[使用例] 綿入れを着ていたからといって何も冬とはかぎらないのです。〈略〉つまり、小生の容疑者の犯行が成立するわけでございます。が、こう考えついたのはあとの祭、二十年前に考えおよばなかったのを後悔するばかりでございます[松本清張*点と線|1958]

[解説] このことわざの解釈には、二つの考え方があります。一つは、「六日菖蒲あやめ十日の菊」と同様に、比較的軽い意味で時機に遅れたたとえとするもので、今日でもこの意味でよく使われています。
 もう一つは、「死んだ後の祭」と同義とするもので(「諺語大辞典」)、明治前期のことわざ集「国民品位」(1891)では、織田信長の教育係を自任したひらまさひでが自刃して諫めた話を引き、信長が大いに悔いて寺まで建てて供養したのも後の祭としています。突き詰めると、「後の祭」が祭のすんだ後なのか死後の祭なのか、ということになりますが、「悔やんでも後の祭」とする用例がいまもあることを考慮すると、底流には、死者を祭るときの後に残された者の悔恨の思いがあったものと思われます。

[類句] 死んだ後の祭/六日の菖蒲十日の菊

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