精選版 日本国語大辞典「早」の解説
はやく【早】
[1] 〘副〙 (形容詞「はやい」の連用形から)
① ずっと以前から。とうに。すでに。つとに。はやくに。はよう。
※書紀(720)允恭八年二月・歌謡「花妙(ぐは)し 桜の愛(め)で こと愛でば 波椰区(ハヤク)は愛でず 我が愛づる子ら」
② 以前に。はよう。
※古今(905‐914)恋五・七九四「よし野がはよしや人こそつらからめはやくいひてしことはわすれじ〈凡河内躬恒〉」
③ (多く「はやく…けり」の形で用いる) それもそのはず。驚いたことには。わかってみればなんと。はよう。
※枕(10C終)九五「針をひき抜きつれば、はやくしりを結ばざりけり」
※古今著聞集(1254)一二「おそろしながら、ことの子細をとふに、はやく盗人なりけり」
④ もともと。やっぱり。
※古今著聞集(1254)一六「其時ぞこの證人のためにはやくさそひけるよと心えてけり」
[2] 〘名〙
① 昔。以前。また、早い時期、時刻。「早くから知っている」
※土左(935頃)承平四年一二月二八日「はやくの守(かみ)の子」
※彼の歩んだ道(1965)〈末川博〉二「朝ははやくから晩はおそくまで働きぬいて」
② 危険が迫っていること。危篤の状態。
※たまきはる(1219)「はやくにておはしませば、申すばかりなし」
はや・める【早】
〘他マ下一〙 はや・む 〘他マ下二〙
① 速度を加える。早くする。いそがせる。
※落窪(10C後)二「牛かけて、はやめて、おひ惑ひて帰れば」
※路上(1919)〈芥川龍之介〉三〇「電車はもう速力を早(ハヤ)めて」
② 期日を繰り上げる。時刻を早くする。
※説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)八「ひめかまつごを、はやめんと、てづから、ろうごしになさるれば」
※海と毒薬(1957)〈遠藤周作〉一「強引に手術を早めたからだと」
はやめ【早】
〘名〙 (動詞「はやめる(早)」の連用形の名詞化)
① 歌舞伎の下座音楽で、同じ曲を早めて演奏すること。また、「早めの合方」の略称。
※歌舞伎・貞操花鳥羽恋塚(1809)四立「『この品、身共が清盛公へ』ト双盤の早めにて、雷雲、額を抱へ、向うへ走り入る」
② 「はやめぐすり(早薬)」の略。
※女重宝記(元祿五年)(1692)三「戸あけの水下るとそのまま催生(ハヤメ)の薬を用ゆべし」
はよう はやう【早】
[1] 〘副〙 (「はやく(早)」の変化した語)
① =はやく(早)(一)①
② =はやく(早)(一)②
※枕(10C終)二八「はやう見し女のことほめいひ出でなどするも」
③ =はやく(早)(一)③
[2] 〘名〙 =はよ(早)(二)
はよ【早】
[1] 〘副〙 (「はよう(早)」の変化したもの) 早い時期に。また、すみやかな速度で。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「早(ハヨ)起て遅寝れば」
[2] 〘名〙 ((一)の体言化したもの) 早い時期。「朝もはよから」
そう サウ【早】
〘名〙 一日のうちのはやい時刻。朝。〔詩経箋‐召南・小星〕
はや・し【早】
〘形ク〙 ⇒はやい(早)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報