(読み)チン

デジタル大辞泉 「沈」の意味・読み・例文・類語

ちん【沈】[漢字項目]

常用漢字] [音]チン(漢) ジン(ヂン)(呉) [訓]しずむ しずめる
水などの中に深く入り込む。「沈下沈殿沈没撃沈轟沈ごうちん自沈爆沈浮沈陸沈
気分がふさぎ落ち込む。「沈鬱ちんうつ沈滞沈痛消沈
物事に深入りする。「沈酔沈潜沈湎ちんめん
奥深く静か。落ち着いている。「沈毅ちんき沈静沈着沈黙沈勇深沈
長い間変わらない。「沈痾ちんあ
[補説]中国人の姓の場合は、沈徳潜しんとくせんのように「しん」と読む。
[名のり]うし
[難読]沈香じんこう沈丁花じんちょうげ

じん〔ヂン〕【沈】

沈香」の略。「く」

じん【沈】[漢字項目]

ちん

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精選版 日本国語大辞典 「沈」の意味・読み・例文・類語

しず・む しづむ【沈】

[1] 〘自マ五(四)〙
① 人や物が、水面より下に行く。水中に没する。また、水底につく。⇔浮く
万葉(8C後)二・二二九「難波潟潮干なありそね沈(しづみ)にし妹が姿を見まく苦しも」
平家(13C前)七「今は西海の浪の底にしづまば沈め」
※俳諧・猿蓑(1691)六「しづかさは栗の葉沈む清水哉〈柳陰〉」
② 太陽や月などが、水平線や地平線の下に隠れる。
海道記(1223頃)序「時に萍実西に没む」
③ 水面に物の影が映る。
※後撰(951‐953頃)雑二・一一三五「めづらしや昔ながらの山の井はしづめる影ぞくちはてにける〈よみ人しらず〉」
④ 身分が下がったり、生活に困ったりして、惨めな状態になる。失意の状態になる。世に埋もれて過ごす。おちぶれる。沈淪する。
※宇津保(970‐999頃)沖つ白浪「身のしづむことかなしきことは季英(すゑふさ)よりほかにしる人なし」
源氏(1001‐14頃)若菜上「都をすてて、かしこにしづみゐしを」
⑤ 罪、地獄、また、悪の道など、好ましくない状態に深くおちこむ。
※宇津保(970‐999頃)吹上下「来ん世には、地ごくの底にしづみて」
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一二「汚穢なる想念に陥り、卑陋なる行状に沈(シヅム)ことありとも」
⑥ 気持のはれない状態におちこむ。物思いにふけったり、気がふさいだりする。
※万葉(8C後)二・一二九「古りにし嫗(おみな)にしてやかくばかり恋に将沈(しづまむ)手童(たわらは)のごと」
※雁(1911‐13)〈森鴎外〉一五「末造の家の空気は次第に沈(シヅ)んだ、重くろしい方へ傾いて来た」
⑦ (「病に沈む」の形で) 重い病気にかかる。
正倉院文書‐天平宝字二年(758)一〇月一〇日・人名未詳不参解「此者、身沈動転
※源氏(1001‐14頃)澪標「やまひにしづみて返し申給ける位を」
⑧ (「涙に沈む」の形で) はげしく泣く。泣き伏す。
※源氏(1001‐14頃)賢木「中宮は涙にしづみ給へるを見たてまつらせ給も」
⑨ 姿勢を瞬間的に低くする。
浄瑠璃・きさきあらそひ(1687)二「おがみうちにてうど打、ひろ綱はっと云てしづみければ、九郎あまってかっぱとふし」
⑩ 風呂の湯に肩までつかる。
滑稽本浮世風呂(1809‐13)二「コウコウ、ここへしづみな
⑪ 音や色がうわつかないで落ち着いた感じである。
※別れた妻に送る手紙(1910)〈近松秋江〉「お召の沈んだ小豆色の派手な矢絣薄綿を」
ゲームなどで、最初の持ち点以下になる。
ボクシングで、ノックアウトされマットに倒れる。
※倒れる男(1958)〈菊村到〉「インファイトにはいったら、もうおめえはマットに沈むほか手がねえんだからな」
[2] 〘他マ下二〙 ⇒しずめる(沈)

しず・める しづめる【沈】

〘他マ下一〙 しづ・む 〘他マ下二〙 (「しずむ(沈)」の他動詞形)
① 水中に没するようにする。
※書紀(720)仁徳一一年(北野本訓)「飄風忽に起て、匏を引て水に没(シツム)
※平家(13C前)一一「分段のあらき浪、玉躰をしづめたてまつる」
② 身分、地位などを低いままにする。失意の状態にする。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「中納言なるべかりし身をしづめてし人なり」
③ 罪、地獄、また、悪の道など、好ましくない状態に落とす。また、遊廓に身を売る。
日葡辞書(1603‐04)「インヘルノニ xizzumuru(シヅムル)
※歌舞伎・盟三五大切(1825)序幕「お前、わたしを沈める時分、何と云った」
④ 質に入れる。
※黄表紙・金々先生造化夢(1794)「最早そろそろ秋の風を吹かせよう〈略〉初鰹の身代りにしづめておいた袷(あはせ)の事を思ひ出すであらふ」
⑤ 姿勢を低くする。また、ふとんや、いすなどにからだを深くうずめる。
※蛾はどこにでもゐる(1926)〈横光利一〉「彼はぢっと身を沈めるやうにして女の顔を見詰めてゐた」
⑥ 彫り込む。また、漆器に毛彫りをしてその刻み目に金銀の箔(はく)などをはめこむ。
※太平記(14C後)二〇「一振には銀を以て金膝纏(きんはばき)の上に鬼切と云文字を沈(シヅ)めたり」
⑦ ゴルフで、球をホールに入れる。

しず・く しづく【沈】

〘自カ四〙 (沈み着くの意)
① 水の底に沈んでいる。また、水底に沈んでいるものが見える。
※催馬楽(7C後‐8C)葛城「榎の葉井に 白璧(しらたま)之川久(シヅク)や 真白璧之川久(シヅク)や」
② 水に映って見える。
※古今(905‐914)哀傷・八四五「水の面(おも)にしづく花の色さやかにも君がみかげのおもほゆるかな〈小野篁〉」
③ 定着する。
※玉塵抄(1563)二三「天のあつくいかるにあうていどころ定てしづいた所ないぞ」

しずみ しづみ【沈】

〘名〙 (動詞「しずむ(沈)」の連用形の名詞化)
① 水中に没すること。
② みじめな状態になること。
※おぼろ夜(1899)〈斎藤緑雨〉「浮きも沈(シヅ)みもお前一人にさするでなければ」
④ 位置や姿勢が瞬間的にさがること。「機体の沈み」
⑤ ふとん、マットなどに横になったとき、体がめりこむような感じ。

ちん【沈】

〘名〙
① しずむこと。しずみかくれること。
② 漢方で、脈搏がかすかであること。
※史記抄(1477)一四「脈に七表八裏九道とて二十四種脈あり。〈略〉八裏脈は、属陰、所謂微・沈・緩・渋・遅・伏・濡・弱也」

しずめ しづめ【沈】

〘名〙 (動詞「しずめる(沈)」の連用形の名詞化)
① しずめること。
② しずめるためのおもし。しずみ。
※神道集(1358頃)七「沈の石を頸に付、淵の底へ入られける」

じん ヂン【沈】

〘名〙 「じんこう(沈香)」の略。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「白銀のひとりに、白銀の籠、作りおほひて、ぢんをつきふるひて、灰に入れて下の思ひにすべて黒方をまろがして」

しも・る【沈】

〘自ラ四〙 水が浸入してきて沈む。
※浄瑠璃・自然居士(1697頃)二「水中をかいくぐってふなぞこをこぢはなせば、舟はしもって荷も人も皆川下へぞながれける」

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動植物名よみかた辞典 普及版 「沈」の解説

沈 (ジン)

植物。ジンチョウゲ科の常緑高木,薬用植物。ジンコウの別称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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