非常に高温な空気が広い地域を覆うこと。通常、次のような要因が考えられている。
(1)温暖な発達した高気圧の圏内で、下降気流によって上空の空気が地表まで運ばれるときにおきる空気の断熱昇温
(2)山岳の風下における下降気流による断熱昇温(フェーン現象)
(3)乾燥した晴天下での日射による昇温
(4)乾燥した地表面では水分の蒸発による冷却作用が欠ける
これらの影響が重なって異常な高温が現れる。熱波は高気圧の盛衰にしたがって強弱を繰り返しながら、数日からときには数週間持続する。また、温帯地方や寒帯地方では北方の低気圧に向かって温暖な南寄りの風が吹き続くと、その地域は異常に温暖な天候となるが、このように異常に温暖な空気に覆われることを暖波という。通常、寒帯地方あるいは温帯地方の寒候期に現れる顕著な高温を暖波、温帯地方の暖候期や熱帯地方に現れる猛暑を熱波とよぶ。また、熱波と暖波は非常に温暖な空気に広い地域が覆われるという意味で、同義語として用いられることもある。1980年のアメリカ合衆国南部を中心とする熱波は、6月下旬から7月中旬まで続き、暑さによる死者は1000人を超えた。1990年代以降、世界的な気温の上昇とともに、熱波の発生頻度が増加する傾向にある。2003年夏、ヨーロッパの広範な地域が熱波にみまわれ、熱中症による死者、干魃(かんばつ)、電力不足、森林火災等の被害が多発した。フランスでは死者が1万人を超えた。
[能登正之]
『船瀬俊介著『温暖化の衝撃』(1997・三一書房)』▽『平野敏右・黒田勲・小林恭一・駒宮功額ほか編『環境・災害・事故の事典』(2001・丸善)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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