デジタル大辞泉
「界」の意味・読み・例文・類語
かい【界】
1 区切り。境。仕切り。「界を接する」
2 限られた社会や範囲。多く接尾語的に用いる。「社交界」「文学界」
3 《〈梵〉dhātuの訳。部類・要素・基礎などの意》仏語。
㋐人間存在の構成要素として類別の範疇となるもの。六根と六境と六識のそれぞれを界として、十八界をたてる。
㋑宇宙の構成要素。地・水・火・風・空・識の六大のこと。六界。
㋒領域または世界。欲界・色界・無色界の三界。
4 生物分類学上の基本階級の一つ。門の上に位置し、従来は最上位の分類群とされていたが、現在は界の上にドメインという階級が設けられている。
5 地質年代による地層区分の最大の単位。年代区分の「代」に対応し、「系」をいくつか集合したもの。古生代・中生代・新生代の地層を、古生界・中生界・新生界とよぶ。
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かい【界】
- 〘 名詞 〙
- ① さかい。また、さかいのうち。区域。区画。世界。
- [初出の実例]「Cai(カイ)。サカイ。すなわち、セカイ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- [その他の文献]〔孟子‐公孫丑・下〕
- ② 特に、ある限られた仲間、社会。
- [初出の実例]「さしうつむいたる粧(けは)ひ、此(この)界(カイ)の大黒とは見へず、吉祥天女に五割もよく」(出典:浮世草子・風流曲三味線(1706)二)
- ③ 物事の境目。境界。
- [初出の実例]「満足にも二様の区別ありて其界を誤る可らず」(出典:学問のすゝめ(1872‐76)〈福沢諭吉〉九)
- ④ ( [梵語] Dhātu の訳。層、要素の意で、種族の義があるともいう ) 仏語。
- (イ) 分類を行なう場合の範疇(はんちゅう)となるもの。六根、六境、六識を総括して十八界といい、地、水、火、風、空、識の六つを六界というごとき場合。
- (ロ) 境界(きょうがい)または世界。欲界、色界、無色界のごとき場合。
- [初出の実例]「この界にして彌陀の名号を一ぺんとなふれば、さいはうじゃう刹に一の蓮生ず」(出典:九冊本宝物集(1179頃)九)
- ⑤ 文章の行間、あるいは用紙の上下の部分に引かれた線。罫(けい)。
- [初出の実例]「凡写二年料仁王経十九部一〈略〉鹿毛筆二管 堺料」(出典:延喜式(927)一三)
- ⑥ 工芸品などのしたがきに引かれた線。
- [初出の実例]「香壺筥一双〈略〉堺書料百疋 各五十疋」(出典:類聚雑要抄(室町)四)
- ⑦ 生物の分類学上の用語。分類群の最上位に設けられる階級。生物は動物界、植物界、菌界などに分けられる。
- ⑧ 地質時代の時代区分「代」に相当する地質系統。代の期間に堆積した地層および形成されたすべての岩石のことで、たとえば古生代にできた地層や岩石を古生界と呼ぶ。
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普及版 字通
「界」の読み・字形・画数・意味
界
常用漢字 9画
(異体字)畍
9画
[字音] カイ
[字訓] さかい
[説文解字]
[字形] 形声
声符は介(かい)。〔説文〕十三下に字を畍に作り、「なり」という。〔伝〕は界に作り、漢碑の類もみなその字形である。介は介冑の形で前後に分界があり、田土の境界を界という。堺はその繁文。
[訓義]
1. さかい、しきり。
2. さかいする、へだてる。
3. その領域の全体、その固有の体性。仏教語の訳語として用いる。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕界 サカヒ・サカフ
[語系]
界keat、疆kiang、(境)kyangは声義の近い字。は田を分界する形で、界と字の立意が近い。は楽章の終わり。地に施して境界の終わるところをいう。
[熟語]
界域▶・界画▶・界隔▶・界限▶・界紙▶・界尺▶・界石▶・界説▶・界綫▶・界盗▶・界内▶・界碑▶・界標▶・界分▶・界別▶・界辺▶
[下接語]
越界・遠界・外界・各界・画界・隔界・学界・眼界・境界・疆界・業界・近界・苦界・下界・結界・限界・国界・三界・視界・色界・出界・上界・浄界・人界・塵界・世界・政界・接界・仙界・泉界・俗界・他界・天界・畔界・仏界・分界・辟界・別界・辺界・法界・封界・魔界・冥界・幽界・欲界・隣界・霊界
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界(地質)
かい
erathem
地質時代における地層や岩石のもっとも大きい区分単位。先カンブリア時代、古生代、中生代、新生代に形成された地層や岩石を、それぞれ先カンブリア界、古生界、中生界、新生界とよぶ。界は系をいくつか寄せ合わせたもので、たとえば中生界は三畳系、ジュラ系、白亜系からなる。
[村田明広]
界(生物)
かい
kingdom
生物分類学上の最上位の階級(カテゴリー)。普通は全動物群を含む動物界Animal kingdom, Animaliaと全植物群を含む植物界Plant kingdom, Vegetabilia, Plantaeの二つで代表されるもので、古くから行われている方式である。近年この方式に対し、生物をいくつかの界に分ける方式が提唱され、語尾を-biontaに統一するなどが提案されているが、一般にはまだ採用されていない。ただ、菌類を植物界から独立させることがしだいに認められる傾向にある。
[中根猛彦]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
界【かい】
地質系統の最も大きな区分単位。地質年代の代に対応する。たとえば古生界は古生代に形成された地層・岩体をさす。
→関連項目代
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界[地質層序]
かい[ちしつそうじょ]
group
地質年代層序区分の最も大きい単位で,年代区分の代に対応し,一つの代の間に形成された地層や岩石を総称する。古生界,中生界,新生界など。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の界の言及
【地質時代】より
…したがって,そのなかのある部分については修正がつづけられたり,問題が残されていたりする。人類の歴史の区分や時間の区分にしても大単元から小単元へと固有の名称があるように,地質系統の区分には累界(累代),界(代),系(紀),統(世),階(期)の用語が使われ,それぞれが,地球の歴史のある単元の中で地球表面に堆積した一連の地層と地層が堆積する間に流れた時間を示すという国際的な約束ができている。累界,界,系,統,階は年代層序区分,累代,代,紀,世,期は年代区分である。…
【中世社会】より
…しかし南北朝期以降,[商人],手工業者,芸能民,さらにそのそれぞれの職能の分化が進み,一方では商人を別として,多くの職人は本拠地の津,泊,渡などに〈屋〉を構えて集住,あるいは河原・中州などに立つ市・宿に定着し,遍歴の範囲を狭めていった。こうして,元来アジール的な性格をもつそのような場に,みずからを[公界](くがい)と称する自治体,[会合衆](えごうしゆう)などに指導される自治的な[町]([都市])が成長していくのである。
【下人】
平民,職人と異なり,特定の主の私的な保護・隷属の下におかれ,売買・譲与された不自由民(下人あるいは[所従](しよじゆう))が社会のなかでどの程度の比重を占めていたかは明らかでない。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」