(読み)ツナ

デジタル大辞泉 「綱」の意味・読み・例文・類語

つな【綱】

植物の繊維や針金などをより合わせて長くつくったもの。ロープ
心身が不安・危険な状態にあるとき、すがって頼みとするもの。「命の」「頼みの
相撲で、横綱のこと。
[用法]つな・なわひも――太さでは、一般的に綱、縄、ひもの順に細くなる。材料・形状については、綱は繊維や針金をより合わせたもの。縄は主に稲のわらをより合わせたものだが、他の材料を用いる場合に、「麻縄」「しゅろ縄」などのように言うこともある。◇「紐」は繊維をより合わせたもののほか、紙・布・ゴムなどのより合わせていないものにも言う。◇用途面では、「綱」は主に、何かを支えたり引っ張ったりする。「命綱をつけて海に飛び込む」「引き綱」。「縄」は「罪人を縄で縛る」「薪を縄で縛って担ぐ」など縛るのに用いる。「紐」は結び付けることに用途の中心がある。「靴紐を結ぶ」◇外来語「ロープ」(英語)は「綱」「縄」の範囲で「紐」は含まない。「ザイル」(ドイツ語)は、もっぱら登山用の綱。
[類語]荒縄細引きテープしめ縄命綱帆綱ロープザイル

こう【綱】[漢字項目]

常用漢字] [音]コウ(カウ)(呉)(漢) [訓]つな
〈コウ〉
太いつな。「綱維
物事を統括する大筋。「綱紀綱領政綱大綱要綱
生物学で、大きな区分け。「哺乳綱」
〈つな(づな)〉「命綱手綱たづな横綱

こう〔カウ〕【綱】

生物分類学上の基本階級の一。の下、の上に位置する。
[補説]門と綱の間に亜門上綱などの階級が置かれることがある。例えば、脊索動物門の脊椎動物亜門に属する顎口上綱は哺乳綱・鳥綱・爬虫綱・両生綱・条鰭綱(硬骨魚類大部分)・軟骨魚綱などに分けられる。

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精選版 日本国語大辞典 「綱」の意味・読み・例文・類語

つな【綱】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. (なわ)や紐などの太く強いものの総称。植物の繊維や針金などを太く長くより合わせて丈夫にしたもの。ロープ。
      1. [初出の実例]「綱(つな)落ちし処は、即ち藤丘と号け」(出典:播磨風土記(715頃)餝磨)
      2. 「御輿の帷子の色つやなどのきよらささへぞいみじき。御つな張りて出でさせ給ふ」(出典:枕草子(10C終)二七八)
    2. ( 比喩的に ) すがってたよりとするもの。助けとなるもの。また、その人。
      1. [初出の実例]「鼠い此の梯を縁(ツナ)として上りて」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一)
      2. 「その方ならで、おもほし放つまじきつなも、侍るをなむ、とらへ所に、頼み聞えさするな」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
    3. 相撲の、横綱のこと。
    4. みつな(御綱)の次官(すけ)
  2. [ 2 ] 能「羅生門(らしょうもん)」の別名。

こうカウ【綱】

  1. 〘 名詞 〙
  2. つな。おおづな。
    1. [初出の実例]「米国の水運は、大河湖を仰ぎて其綱とし」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一)
  3. おおもと。根本のきまり。綱領。〔史記‐夏本紀〕
  4. こうてい(綱丁)」の略。
    1. [初出の実例]「以五分論、三分徴綱、二分徴運夫」(出典:続日本紀‐天平勝宝八年(756)一〇月丁亥)
  5. 生物の分類学上、門と目(もく)の間に設ける自然群。普通、体制、生殖器官、生活史など可塑性のほとんどない生物学的特徴を基準にし、万国命名規約に従って定める。大進化の過程では、ほぼ綱に相当する自然群の消長が歴史的に起こったとされる。たとえば脊椎動物門では哺乳類鳥類爬虫類両生類、甲骨魚類、軟骨魚類、無顎類(円口類)の綱に分けられる。綱と目との間に亜綱をおくこともある。〔植物小学(1881)〕

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普及版 字通 「綱」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 14画

[字音] コウ(カウ)
[字訓] つな

[説文解字]

[字形] 形声
声符は岡(こう)。岡は鋳造のときの鋳型。高熱によって堅強となるものであるから、その声義をとる。〔説文〕十三上に「网(あみ)の紘(おほづな)なり」(段注本)という。〔書、盤庚上〕に「の、綱に在りて、條りて紊(みだ)れざるが(ごと)し」、〔詩、大雅、巻阿〕「四方、綱と爲す」のように、秩序の基本の意に用いる。

[訓義]
1. つな、大づな、あみ、あみづな、もと。
2. すべる、つなぐ、まとめる。
3. 分類の綱目。

[古辞書の訓]
名義抄〕綱 ツナ 〔字鏡集〕綱 オホツナ

[語系]
綱kang、經(経)kyeng、紀kiは声義近く、おそらく同系の語であろう。綱は(網)に対し、經は(緯)に対し、その基本の意味がある。紀は糸まき、小綱。また紀綱の意がある。

[熟語]
綱維綱貫・綱紀綱憲・綱佐綱条綱常・綱絶・綱柄・綱網・綱目・綱要・綱理・綱領
[下接語]
握綱・維綱・王綱・紀綱・挙綱・元綱・厳綱・紘綱・国綱・三綱・条綱・人綱・政綱・摂綱・僧綱・総綱・操綱・大綱・地綱・朝綱・帝綱・提綱・天綱・道綱・民綱・要綱

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改訂新版 世界大百科事典 「綱」の意味・わかりやすい解説

綱 (つな)

繊維をそろえて撚り(より)をかけ,物を結んだりする材料には,糸,紐,縄,綱などがあるが(〈〉〈〉および〈ロープ〉の項目参照),これらには厳密な区別はない。日常的には糸が最も細く,紐,縄と太くなり,綱が最も太いものを指すことばとして用いられることが多い。

 古くは葛を〈都那(つな)〉と称した。綱は実用的な用途のほか,綱引き,蛇綱,綱掛けなど神事や呪術にも多く用いられる。綱はしめ縄や横綱の綱も含めて標(しめ)として内と外の境や神域を表示し不浄や穢を隔離するところから,正月には〈綱掛け祭〉といって大綱を村の出入口や境にかけ悪疫や災厄が村に侵入するのを防ぎ,村の一年の平安を祈願する行事がある。奈良ではこの綱を〈勧請綱(かんじようづな)〉といい,蛇形や男女の性器に模したり,雌雄2本に作ったりして邪悪なものを排除する。また蛇形の綱を村のまわりを引いてまわり,これに邪悪なものを託して川や海,村境に捨てたり,綱引きで神意や作柄を占う行事にも綱が登場する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「綱」の意味・わかりやすい解説


こう

生物を分類するとき類別に用いる一段階の名称。門(もん)と目(もく)の間に置かれる段階であって、通常かなり広い範囲にわたる生物群を包含するが、それらは外見が多様であっても、共通した明らかな特徴を備えている。たとえば、脊椎(せきつい)動物門には綱として無顎(むがく)類(円口類)、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫(はちゅう)類、鳥類、哺乳(ほにゅう)類が含まれ、外見からも明らかに区別できるが、脊椎をもつことで共通している。ただし、分類するとき各類をどの段階に置くかは学者間でかならずしも一致しないし、また研究の進展によっても変わってくる。

[中根猛彦]

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百科事典マイペディア 「綱」の意味・わかりやすい解説

綱【つな】

ロープとも。繊維・針金などを太く長く撚り合わせたもの。一般により太いものを指すことが多い。古くから綱引き,綱掛けなどの神事にも用いられてきた。物揚げ・伝動等工業用のほか漁業・林業等に広く使用される。各種の麻ロープ,ワイヤロープ等があり,最近は軽くて柔軟で強力な合成繊維を使用したナイロンロープ,テトロンロープ等が用いられている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「綱」の意味・わかりやすい解説


つな
rope

繊維または鋼線を長くより合せたもので,物を結びつなぐのに用いるほか,産業用などに多くの用途をもつ。古くから植物繊維あるいは獣・魚皮 (極寒地) を材料とするものが,あらゆる民族により用いられた。現在では用途に応じて用材も多様化し,天然繊維によるもののほか,合成繊維によるもの,鋼線をより合せたものなど種類も多数ある。用途は漁具,船具などの水上用から,運輸,鉱業,林業,建築業などで用いる陸上用まで幅広く,またスポーツ用 (登山用ザイルなど) ,家庭用としても重要な用途がある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「綱」の解説

つな

1756-1769 江戸時代中期の女性。
宝暦6年生まれ。若狭(わかさ)(福井県)遠敷(おにゅう)郡の奉公先で明和6年6月11日,主家の幼児の子守中に狼(おおかみ)におそわれ,自らはかまれながらも幼児をまもり死んだという。14歳。のち領主酒井氏によって「忠烈綱女之墓」と刻した碑がたてられた。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【分類学】より

…命名については国際動物(植物)命名規約によって方法が規定されている。 分類群の階級としては,種speciesを基本的な単位として,それより上級に属genus,科family,目order,綱class,門division(動物ではphylum)などが設けられ,それらの間にもいくつかの階級を設けてもよいことになっている。種以下の分類群としては,動物の命名規約では,亜種subspeciesだけが認められているが,植物の場合には,亜種のほかに変種variety,亜変種,品種などの階級も認められている。…

【ロープ】より

…細い繊維を集めて左撚り(より)をかけて単糸(ヤーン)にし,これを数本ないし数十本集めて右撚りをかけて子縄(ストランド)にし,ストランドを三つ,四つ,または八つ撚り合わせるかまたは組むことによって作った長い繊維索。綱,縄,ひも(紐)はだいたいの大きさで繊維索を分別したもので,狭義にロープは綱をさす。一般に綱は単糸が複数本の子縄からできているもの,縄は1本の単糸の子縄から成るものをいう。…

※「綱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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