通す(読み)トオス

デジタル大辞泉 「通す」の意味・読み・例文・類語

とお・す〔とほす〕【通す/徹す/透す】

[動サ五(四)]

一方から他方へ突き抜けさせる。「針に糸を―・す」
㋑まんべんなくゆきわたらせる。「中まで十分に火を―・す」
㋒二点間を結ぶ道筋をつくる。「バイパスを―・す」
㋓正しい筋目をつける。「話の筋を―・す」

㋐ある点を過ぎて行かせる。「車を止めて人を―・す」
㋑(人を)屋内や室内に導き入れる。「客間に―・す」
㋒人を仲立ちとして、また、物を隔ててそのことをする。「先生を―・して頼む」「レンズを―・して見る」
㋓料理店などで、客の注文を帳場に取り次ぐ。

㋐審査して成り立たせる。「法案を―・す」
㋑無理やりに受け入れさせる。「我を―・す」

㋐最後までその状態を続ける。「独身で―・す」
㋑全期間、また、全体にわたってする。「夜を―・して話す」「書類に目を―・す」
(動詞の連用形について)最後まで…続ける。「遂にやり―・した」
[可能]とおせる
[下接句]一念岩をも通す牛は願いから鼻を通す思う念力岩をも通す女の一念岩をも通す我を通す気を通すきりふくろを通すそでを通す手を通す・念力岩をとおす・火を通す目を通す
[類語](1)(2通うとお通ずる流れる伝わる疎通する通じる貫く突き刺す突き通す突き抜く刺し通す刺し貫くぶち抜く縦貫貫通/(4頑張る突っ張る押し切る押し通す徹する貫く一貫終始貫徹徹底終始一貫首尾一貫

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「通す」の意味・読み・例文・類語

とお・すとほす【通・徹・透】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] 一方から他方にとどかせる。
    1. 物の表から裏までしみこむようにする。また、突いて裏へ抜けるようにする。つらぬく。
      1. [初出の実例]「隠処(こもりど)の沢泉なる岩根ゆも通(とほし)て思ふ吾が恋ふらくは」(出典万葉集(8C後)一一・二四四三)
      2. 「是より放たん矢は、〈略〉己等が鎧をとをさん事」(出典:源平盛衰記(14C前)三四)
    2. 細い管、針のめど、穴などの一方の口からさし入れて他方の口へ出るようにする。
      1. [初出の実例]「七曲にわだかまりたる玉の〈略〉これに緒とほして賜はらん」(出典:枕草子(10C終)二四四)
    3. すみずみにまで達するようにする。
      1. [初出の実例]「光明一切の世界に照し徹(トホシ)たまふこと」(出典:守護国界主陀羅尼経平安中期点(1000頃)一)
      2. 「ゲラに眼を通す頃になると」(出典:現実拒否の文学(1956)〈大井広介〉)
    4. 物事に深く通じてさとる。
      1. [初出の実例]「文殊は是れ過去の仏なり。能く仏事を達(トホシ)たまへり」(出典:法華義疏長保四年点(1002)二)
    5. 薄い物、透明な物、すきまのあるものなどを間においてこちらからあちらへある作用、動作を行なう。透かしたり、漉(こ)したりする。
      1. [初出の実例]「玉垂の小簾(をす)の間通(とほし)ひとり居て見るしるしなき暮月夜(ゆふづくよ)かも」(出典:万葉集(8C後)七・一〇七三)
      2. 「曇りし窻の硝子をとほして見ゆ」(出典:うたかたの記(1890)〈森鴎外〉下)
    6. こちらからあちらへとどくようにする。
      1. [初出の実例]「南の町もとをして、はるばるとあれば、あなたにもかやうの若き人どもは見けり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蛍)
      2. 「相場を通(トホ)す小僧の声が、高く響いた」(出典:金(1926)〈宮嶋資夫〉一三)
    7. 鉄道、道路などを敷設する。「鉄道を通す」
      1. [初出の実例]「街道からそこへ新しく通した道は」(出典:津軽の野づら〈深田久彌〉あすならう)
    8. 正しい筋道がつくようにする。「筋を通す」
    9. ある人や物事を仲立ちにする。介する。
      1. [初出の実例]「私もその識者を通してお前の才能を信用する」(出典:都会の憂鬱(1923)〈佐藤春夫〉)
    10. 料理屋などで、客の注文を帳場に知らせる。
      1. [初出の実例]「お誂(あつらへ)は何を通しませうね」(出典:今戸心中(1896)〈広津柳浪〉七)
  3. [ 二 ] ある所を過ぎて先へ進むようにする。
    1. ある所を過ぎて行かせる。通行させる。
      1. [初出の実例]「後涼殿のきたの馬道よりとをさせ給て、あさがれひのつぼにひきおろさせ給て」(出典:大鏡(12C前)三)
      2. 「道をふさぎ、人をとをさぬよし申たりければ」(出典:平家物語(13C前)六)
    2. 人を家の中や部屋へ入れる。座敷にあげる。
      1. [初出の実例]「玄関へ通しませい」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)四)
    3. 資格を認めて先の段階に進むことを許す。試験で合格させる。
  4. [ 三 ] 人々や相手に認めさせる。
    1. 認めて通用させる。また、議案など認めて成立させる。
      1. [初出の実例]「きずいきままも里のならいと、とふしてやるぞよ」(出典:洒落本・傾城買二筋道(1798)冬の床)
      2. 「この帝国議会は、法律のしたごしらへや、国の費用のしたぎめなどについて、会議をいたします。そして、『そのままでよい。』と思ふものはとほし」(出典:尋常小学読本(明治三七年)(1904)八)
    2. 抵抗を排して、自分の希望、意見などを押し進める。「無理を通す」
      1. [初出の実例]「ノゾミヲ touosu(トヲス)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  5. [ 四 ] ある動作や、状態を一定期間、またはいくつかの事柄にわたって続ける。
    1. ある動作・状態をある期間にわたってずっと続ける。つらぬく。
      1. [初出の実例]「其長歌詞曰〈略〉茜(あかね)刺す 終日(ひねも)すからに 烏玉(ぬばたま)の 狭夜通(とほす)まで」(出典:続日本後紀‐嘉祥二年(849)三月二六日)
      2. 「純然たる独身者で到頭六十余歳まで通(トホ)して来た」(出典:二老人(1908)〈国木田独歩〉下)
    2. いくつかの事柄にわたって、続けてする。
      1. [初出の実例]「御れん歌ののち御れんくあり、人すともかわる、侍従中納言はいつれにもとをしてしこう」(出典:御湯殿上日記‐文明一五年(1483)六月二五日)
    3. ( 補助動詞のように用いる ) 動詞の連用形に付いて、ずっとし続ける、終わりまでする意を添える。
      1. [初出の実例]「霍公鳥(ほととぎす)飼ひ通(とほせ)らば今年経て来向ふ夏はまづ鳴きなむを」(出典:万葉集(8C後)一九・四一八三)
      2. 「夜一夜暴(あれ)(トホ)した雨風は」(出典:青春(1905‐06)〈小栗風葉〉秋)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android