バラ(薔薇)(読み)バラ(英語表記)Rosa; rose

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

バラ(薔薇)
バラ
Rosa; rose

バラ科バラ属の植物の総称。主として北半球に分布し,約 200種が知られる。香りのある美花をつけるものが多いので古くから観賞用として栽培され,品種改良により多数の園芸品種がつくられている。日本に自生するバラは約 10種で,ノイバラ (野薔薇) テリハノイバラ (照葉野薔薇) ,モリイバラ,ハマナス (浜茄子) ,タカネイバラなどがよく知られている。園芸品種としてのバラは世界各地で改良されたもので,ヨーロッパ原産のものと中国原産のもの,それに両者間の交配種などで品種の数はきわめて多い。園芸上は叢生バラとつるバラとに大別されている。また,香油の原料としても栽培され,南フランス,ブルガリア,ルーマニアなどが有名な産地で,セイヨウバラ,ダマスクバラ,フランスバラなどがおもなものである。

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百科事典マイペディアの解説

バラ(薔薇)【バラ】

バラ科バラ属の植物の総称で,野生種は約200種,北半球各地に分布し,日本にもノイバラテリハノイバラタカネバラサンショウバラハマナスなど十数種が野生している。現在一般に栽培されているバラはきわめて高度の雑種であり,最も代表的な観賞花木である。バラの栽培は古代オリエントでおそらく香料,または薬用植物として始まり,ギリシア,ローマを経てヨーロッパに伝わった。中国でもモッコウバラやコウシンバラなどが古くから観賞用に栽培され,それが日本へも渡来している。西洋での観賞の風習は中世以後のことと思われるが,1800年前後,四季咲性をもつコウシンバラなど東洋産の何種かがヨーロッパへ紹介され,それらとヨーロッパ在来種との交雑により,数々の新系統が生まれた。その中のハイブリッド・パーペチュアル(H.P.)とティー・ローズ(T.)が,19世紀後半での最重要系統となった。年々各国で発表される現代のバラの品種は,系統的に次のように分類される。(1)株バラ 低木性となるもの。1.四季咲大輪バラ。ハイブリッド・ティー(H.T.)とも。四季咲性のT.系と強健な性質のH.P.系の交雑からうまれた。花色,花型の変化に富み,品種数の最も多い代表的な系統。2.四季咲中輪バラ。フロリバンダ(Fl.)とも。H.T.とポリアンサの交雑から。多花性で,花壇や鉢植に向く。色彩は鮮明であり,マスカレードのように花色が黄から暗赤色に変化する品種もある。3.四季咲小輪バラ。ポリアンサ(Pol.)とも。ノイバラやテリハノイバラと中国種との交雑による。数十花が房咲になり,耐寒性が強い。4.極小輪バラ。ミニアチュア・ローズ(Min.)とも。高さ15〜20cmの,鉢植に好適な矮性(わいせい)種で,花径3cm以下の八重咲。5.グランディフロラ(Gr.)。H.T.とFl.の中間的なもので,たけ高く,大輪房咲。6.以上のほかに一季咲性,二季咲性の系統もある。(2)つるバラ クライミング・ローズ(Cl.)とも。これにも大輪・中輪・小輪がある。1.枝変りつるバラ。株バラの枝変りで,茎が長くのびるようになったもの。大輪種はH.T.から出たが,四季咲性は弱まっている。2.原種交雑つるバラ。諸種の系統の交雑によりつる性になったもの。なお,H.T.出現以後の栽培バラを現代バラ(モダンローズ)というのに対し,それ以前のものを古代バラ(オールドローズ)と呼ぶ。 バラの繁殖は多くはノイバラの台木につぎ木して行う。育種や台木の養成が目的の場合は実生(みしょう)による。苗木の植付期は初冬〜早春,ただし暖地以外では厳冬期を避ける。新苗の植付は4〜5月がよい。栽培には粘質土が適し,肥料は植付の際の元肥のほかに年間を通じての追肥が必要である。せん定は2月と9月。なお南フランス,バルカンでは現在も香料バラの栽培が盛んで,その花から採る香油が香水や化粧品の原料とされている。

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世界大百科事典 第2版の解説

バラ【バラ(薔薇) rose】

美しい花をつけ,また香料の原料ともなるバラは,バラ科バラ属Rosa落葉または常緑の低木やつる性植物から育成されたもので,多数の観賞用園芸品種を含む(イラスト,イラスト,イラスト)。この属は約200種の野生種が知られる。茎葉にはとげが多く,互生する葉は通常,奇数羽状複葉,まれに単葉になり,托葉がある。花は茎頂に単生か散房状につき,花弁は5枚,園芸品種では重弁化するものが多い。おしべ,めしべともに多数。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

バラ(薔薇)
ばら / 薔薇
rose
[学]Rosa

バラ科バラ属に含まれる植物の総称。バラ属は北半球の寒帯、亜寒帯、温帯、亜熱帯に天然分布し、100種以上が知られているが、一般にバラと称しているのは、これらの野生種の雑種および改良種で、美しい花を開き、香りの高い、古くから香料用、薬用に栽培されてきて、さらに中世以後観賞用に改良された園芸種をさしている。[鈴木省三]

園芸種

日本での栽培は、江戸時代以前は、ごくわずかの日本および中国原産のバラなどが栽培されていたにすぎないが、江戸末期、明治以後は欧米からいわゆる「西洋バラ」が輸入され、今日のように多彩なバラの品種が観賞、栽培されるようになった。さらに、かねて湿度の高い日本に適したバラが期待されており、1950年(昭和25)ころから毎年日本で作出した品種も発表されている。[鈴木省三]

系統

木の習性から、つるバラと木(き)バラに分けられる。[鈴木省三]
つるバラ
大輪咲き、中輪咲き、小輪咲きがあり、それぞれ一季咲きのものと四季咲き性を帯びるものとがあり、一般にクライミング・ローズ(Cl.)とよばれる。日本産のテリハノイバラを改良したものはじょうぶで伸長力が強く、20世紀初頭にフランスやアメリカで改良されたものは、枝の垂れやすい小・中輪咲きのものが多い。これらをランブラー・ローズという。ノイバラを改良したものも多花性で伸長力もあるが、葉が美しく照らないものが多く、ランブラー系の美葉には劣る。現在、大輪咲きをはじめとしたつるバラのほかに、木バラから突然変異でつるバラになったものが多くある。たとえば木バラのピースから出たつるバラはつるピース、木バラのフロリバンダ・ローズであるサラバンドのつるバラはつるサラバンドとよばれる。こうした木バラから出た同品種のつるバラは現在数百種に及んでいる。[鈴木省三]
木バラ
18世紀の終わりに、中国から西洋(イギリス、フランス)へ移入された四季咲き性バラのティー・ローズ(T.)に西洋バラ(ガリカ系、ブルボン系)が交雑されてハイブリッド・ティー・ローズ(H.T.)がつくられた。20世紀の初め、フランスで、ローザ・ルテアから出たペルシァンイエローを導入して、鮮黄色、銅黄色、朱黄色、朱銅色などの花色をもつペルネシアナ系のH.T.がつくられた。しかし、これらのH.T.系のバラは耐寒性が乏しく、北ヨーロッパなどの寒冷地ではよく育たなかったので、デンマークでは、耐寒性のもっとも強い日本のノイバラ系を交雑して小輪四季咲き性房咲きのポリアンサ・ローズ(Pol.)を、さらに房咲き中輪半八重のハイブリッド・ポリアンサローズをつくった。これがフロリバンダ・ローズ(Flb.)の前身である。欧米では大半この系統を栽培している。
 第二次世界大戦後はさらにこれに大輪系のH.T.を交雑改良し大輪房咲き四季咲き木バラのグランディフローラ・ローズ(Gr.)がつくられた。これはクイーン・エリザベスをはじめとする強健で開花連続性の高い一群である。木バラのもっとも小さいものに、ミニアチュア・ローズ(Min.)とよばれる、樹高約15センチメートルでりっぱにみえ、花径約2センチメートルの花が房のように咲くごく矮性(わいせい)のものがある。
 ほかに、木バラとつるバラの中間にあたるシュラブ・ローズ(Sh.)があり、原種も観賞できるものがこのなかに多く含まれている。また最近は、造園修景用の這性(はいせい)、懸性、大横張り性の品種がつくられ、カラースケープ・ローズ系、メイディランド系、ケイセイ・カラースケープ系、コルデス・パーク・ローズ系などがある。[鈴木省三]

花の形と大きさ

花にはいくつかの基本形はあるが、開花するにしたがい、形が変化していくことが多い。花弁が中心に向かって抱えるように咲く抱え咲き、花弁の先がとがったように反曲する剣弁(けんべん)咲き、中心の花弁が高く立つようにみえる高芯(こうしん)咲き、中心が盛り上がって高くみえる盛り上り咲き、開くと平らにみえる平(ひら)咲き、5~6枚の花弁だけで咲く一重咲きなどがある。以上のほか、剣弁高芯咲き、剣弁盛り上り咲き、半剣弁盛り上り咲きなどのように組み合わせて形づけられるものもある。
 花の大きさは、土質その他の条件によって、同品種でも花の咲き方に大小があるが、一般に巨大輪咲きは満開状態で径15センチメートル以上のもの、大輪咲きは12センチメートル以上、中輪咲きは7センチメートル以上、小輪咲きは約4センチメートルまで、極小輪咲きは2.5センチメートルまでをいう。[鈴木省三]

品種によって、それぞれ光沢、形、質などが異なる。同一品種でも場所、肥料、土質、水質によってかなり違うことがある。葉の表面がつるつるして光の反射が照るようにみえるものを照り葉、やや照り葉に近いものを半照り葉、葉の表面に反射の少ないものを艶(つや)けし葉、葉の先が丸みを帯びているものを丸葉、葉が細くとがっているようにみえるものを細葉、葉に非常に厚みのあるものを厚葉という。[鈴木省三]

栽培

苗を植える場所は1日3時間以上日の当たる場所がよく、もし、午前半日日照と午後半日日照のどちらかを選ぶなら、午前半日日照のほうが栽培がやや楽である。大樹の下、「クレオソート」防腐剤を施した材の前、風当りの強い場所などは避けたほうがよい。通風の全然ない所はよく育つが病虫害にかかりやすいので、やや通気のある所がよい。土壌は粘質土がよいが、赤土、黒土も悪いことはない。ひどい乾燥地はよくないが、毎朝水を与えるようにすればかえってよい結果が得られる。いつも水のはけない水たまりの場所は、根腐れをおこすのでいちばんよくないが、植え場所を高い所にすれば可能である。[鈴木省三]
苗の種類
新苗、大苗、鉢仕立て苗などがある。新苗には、7~9月にかけて畑で芽接ぎして、翌年の4月から売り出されるものと、12~1月に切接ぎをして、その年の4月下旬から売り出されるものとがある。大苗には、新苗を畑で育てて売り出す一年生大苗と、足掛け2年目の秋に売り出される二年生大苗とがある。鉢仕立て苗には、新苗を鉢に植えてまる1年育てたもの、二年生大苗を鉢に入れ、春に咲かせて販売するもの、3年生以上の大苗を大鉢に入れて栽培し、開花させて販売するものなどがある。[鈴木省三]
植え付け
(東京標準)新苗は4~5月、二年生大苗は10月下旬から翌年3月まで、鉢仕立て苗はいつでも花壇に下ろしてよい。植え方は、まず、深さ40センチメートル以上、直径30センチメートルの穴を掘り、約3キログラムの堆肥(たいひ)と約300グラムずつの油かす、過リン酸石灰、骨粉(こっぷん)と土をよく混ぜたものを埋め込み、その上に肥料気の少ない土を約10センチメートルかけ、軽く溶成リン肥30グラムを混ぜる。この上にかぶせるように根を置いてすこし土をかけ、水を十分に与える。水は、初めに掘った穴の底までしみ通るようにすこしずつすこしずつ多量に与え、水が引いてから上土をかける。以上は新苗も大苗も同じ植え方である。鉢仕立ての苗を植えるとき、休眠期(12月から2月)の場合は根を柔らかくほぐして植え付けるが、休眠期以外の場合は鉢から抜いて、根を崩さずに植えるようにしなければならない。[鈴木省三]
(かんすい)と追肥">灌水(かんすい)と追肥
植え付け直後は3日くらい水を控えるが、あとは3日おきに水を施す。少なくとも一週に一度は水を与えたほうがよい。ことに真夏と真冬の乾燥期には、1株に大バケツ1杯の量の水を与えることが肝要である。芽出し時期や開花直前も同様である。
 四季咲き性のあるバラは開花のたびごとに木が疲れるので、花が済んだあとはかならず追肥が必要である。普通、追肥は、二年生大苗では、根から30センチメートル以上離して、約100グラムの遅効性肥料を輪状に与え、軽く中耕する。高度(濃度)化成肥料はごく少なめに、一度に50グラムずつ与える。ことに火山灰土の多い地方はリン酸分の土壌吸収が多いので、窒素、リン酸、カリを1、3、1の割合にする。粘質土では1、1.5、0.5の割合くらいが適当であるが、土の保水力、保肥力、日光受射率などもあわせて考える必要がある。[鈴木省三]
剪定
春季剪定は発芽直前(東京標準で2月上・中旬から3月上旬まで)に行う。H.T.の場合、結果的には前年の秋、成長した枝の高さの2分の1くらいのところで切ることになるが、具体的には株の中央から見て、枝の外側にある芽(外芽)の充実したものを選び、その芽の上で、芽の向きに沿ってやや斜めに切る。株の中央にあるこみいった枝はなるべく切り取り、枯れ枝、病枝、細枝、弱枝などは全部切り捨てる。一見して杯状の形に切るのがよい。Gr.の場合、単独花として咲かせることをねらわずに、樹形がある程度まとまって咲くように考えながら刈り込む。Flb.の場合、強健で大柄な株立ちのものはH.T.と同様の剪定を行うが、丈の低い小柄の種類では軽く整枝をするような気持ちで刈り込む。寒冷地や冷涼地では、四季咲きの場合は夏も続けて咲かせるが、関東以西の暖暑地では8月下旬から9月初旬に、軽く形を整える程度に刈り込む(整姿)。なお、栄養が行き届いている二年生以上の大株は春の剪定に準じて、やや軽く剪定をする。またPol.の場合もツツジなどを刈り込む要領で軽く整枝をする。Min.の場合は鉢植えとして栽培されることが多いので、ていねいに枝を透かして切り込む。Min.のなかには、ミニブッシュとよばれる造園用の系統があるが、これらはただ好みの高さに切ればよい。つるバラの場合、ランブラー系の一季咲きのものは、花が済んだ6月下旬に花の咲いた枝のみ地上1メートルのところで、思いきって切り捨てる。基部からの新梢(しんしょう)が来年の花枝になる。四季咲き系つるバラおよび枝変わりつるバラは、花の咲いた小花枝だけ、わずかに2葉だけを残して切ればよい。いずれの場合も実をもたせることは禁物である。2年間咲かせた大枝は、新梢をたいせつにして、2年目ごとに古枝を捨てて更新していくほうがよい。
 剪定後は、切り口から病原菌が入らないように、すぐに切り口に薬剤の濃度散布を行う。発芽の際は、害虫がつかないように対虫薬剤を散布する。[鈴木省三]

病虫害


病気
成熟した葉の上に黒い斑点(はんてん)ができ、それが広がって斑点が黄色くなり、落葉してしまう状態を黒点病(こくてんびょう)(黒斑病)という。これには、病原菌が付着して根を下ろす前に予防薬をかけるのがもっともよい。雨などで地上からの跳ね上がりによって伝播(でんぱ)されることが多いので、降雨の前に葉の裏を主にして薬剤散布を行うことがこつである。うどんこ病は、湿気の多い春から梅雨期、秋の長雨のころに多く発生する。幼葉、新葉がうどん粉をかけたように白くみえだし、葉がよじれてくる。さび病は、粘質の湿地、排水の悪い所、有機質の多い場所に発生しやすく、葉にきれいな朱銅色の斑点ができて木を傷める。べと病は低温・多湿の場合に発生する。新葉の表面に紫色を帯びた斑点ができ、やがて落葉して苗は枯死する。それぞれ薬剤を散布して防除する。腐らん病(キャンカー)は、2~4月ころ、成熟した枝幹に発生し、初め茶褐色の斑点ができ、しだいに黒ずんだ褐色となる。冬季中の乾燥または寒害による凍傷に起因して、菌が付着して発展するものと考えられる。患部は切り捨て、切り口に防除剤を塗っておく。木の成熟が不足の場合にも考えられるので、リン酸カリやマグネシウムなどが欠乏しないように努める。癌腫病(がんしゅびょう)は、地際(じぎわ)の根や接ぎ口に近い根にこぶができるもので、株は栄養をとられて枯死することがある。地中の太い根や細い根にもこぶがつくこともある。地中に病気が発生した場合には、株を抜くばかりでなく、少なくとも50センチメートル立方の植え土を取り替えなければならない。モザイク病(ウイルス)は、日本ではあまり発生しないが、葉に鮮やかな白黄色の模様が現れてくるもので、生育および開花に影響があり、切り花用花壇に現れることがある。[鈴木省三]
害虫
アブラムシ(バラヒゲナガアブラムシ)は新芽に多くつき、繁殖が速く、良花の開花を妨げ、新芽を傷める。殺虫剤で駆除する。バラクキバチは、4月下旬ころ、茎を裂いて産卵するもので、新梢を枯死させる。殺虫用の粉剤をその時期10日間毎朝まいて、飛来を防ぐ。チュウレンジバチは5月下旬から6月、茎に傷をつけて卵を産む。孵化(ふか)した幼虫が葉を食害するので、幼虫はただちに殺虫剤で駆除する。ダニ(ハダニ)は細かい赤褐色をした害虫で、葉の裏にクモの巣のような膜を張り、その中に寄生して、葉からの養分を吸収し、落葉枯死させる。葉裏を水洗してから殺ダニ剤を散布するほうが効果的である。そのほかコガネムシ(ハナムグリ)は捕殺し、またゾウムシは粉剤を散布し、駆除する。[鈴木省三]

観賞と利用

バラ花壇は、1本1本に十分な太陽光線を必要とするので、株間隔は0.7~1メートルにすべきである。また乾燥を嫌うので真冬や真夏はマルチング(敷き藁(わら))を行う。平地より10センチメートルくらい低くして、雨のあと湿りがちにしておく。土は膨軟を保つために、乾燥牛糞(ぎゅうふん)などを鋤(す)き込む。バラを2列に植える場合は、交互にすると、個体差の激しい樹形を補うことができる。広い芝生などでは、強健な大株を単独に植え、日本庭園ならば、石を利用して一重咲きや淡色のごく矮性品種を植えるのもよい。スタンダード仕立ては、ノイバラ台木を1本仕立てとして、高さ1~2メートルの間に芽接ぎをするものをいい、バラ花壇よりやや上部のほうで、ぱっと花束が咲くようになる。なお、つるバラを芽接ぎして、懸崖(けんがい)のように垂らして咲かせるものをウィーピング・スタンダードという。
 つるバラはいろいろな仕立て方がある。アーチは幅1.2メートル、高さ2.3メートル程度がよく、刺(とげ)の少ない品種がよく用いられる。ネットフェンスは垣根のかわりに用いるので、四季咲きの品種がよく用いられる。スクリーンは、鉄製の格子形の構造物で、それにつるバラを絡ませ、花の屏風(びょうぶ)を立てたようにするのを目的とするもので、よく伸びる品種が適している。パーゴラは棚にバラを絡ませて屋根がわりにするものである。ポールは元来、丸太につるバラを絡ませ、花の柱とするのが目的であったが、最近は鉄製の3本支柱をまとめたものになりつつある。鉄製ポールの輪の直径を1.5メートルほどに広げれば、何種類ものつるバラを植え、立体感を大きくすることができる。これには四季咲き性のものがよく用いられる。トンネルは、やや広い庭園に使われるもので、高さ2.5メートル、幅2.3メートル、長さ3~5メートルのトンネルをつくり、それにバラを絡ませるものである。品種はなんでもよいが、刺の少ない品種を加えたほうがよい。
 バラの切り花には、花は大輪咲き、中小輪房咲き(スプレー)などがあるが、多花性であることが条件である。品種にはソニア、マリナ、パサデナ、アールスメール・ゴールド、カルト・ブランシュ、スプレー咲きにはミミなどがある。
 バラの香りは、ダマスクローズの濃厚さ、ティーローズのさわやかさ、センティフォーリアの華やかさの3系統に大別される。精油としてゲラニオール、シトロネロール、フェニール、メロールなどが多く含まれ、合成香油でも天然のバラ精油を加えなければ高級な香料とはならない。南フランスではグラースを中心とした地方にローズ・ド・メを、ブルガリアやトルコではダマスクローズを、それぞれ香料用として栽培輸出している。[鈴木省三]

繁殖

接木(つぎき)による。実生(みしょう)や挿木も可能であるが、ノイバラの台木に接木をしないとよく育たない。接木には切接ぎと芽接ぎがある。切接ぎは枝茎の休眠期、12月下旬から2月初旬にかけて行う。ノイバラの台木に目的品種の接穂を接ぐもので、接床温度を10℃から徐々に15℃に上げて、乾燥しないように湿度を70~80%に保つが、発芽後は多湿にしすぎないように注意する。芽接ぎは7月から9月までの間に、ノイバラの台木の茎に目的品種の芽を挿入して育成するものをいう。[鈴木省三]

文化史


西洋
バラは農耕文明の始まりとともにあった。紀元前2000年以前の、シュメール人の『ギルガメシュ叙事詩』に、「この草の刺(とげ)はバラのようにお前の手を刺すだろう。お前の手がこの草を得るならば、お前は生命を得るのだ」という意味のくだりがある。ここにあるバラは野生または栽培バラ、あるいは、一般に刺のある植物をさしているものと思われるが、この叙事詩に出ている女神イシュタルについては、マリ出土の「花をかぐイシュタル」の塑像(前1800以前?)の花はバラの花であると推定されている。
 古代エジプトでは、石器時代の発掘物にはバラらしいものは見当たらないが、古い書物には記載があり、バラは東方からも移入されたと考えられる。これらには、ローザ・フェニキア、ローザ・サンクタ、ローザ・モスカータなど四季咲き性を含む芳香種もあった。
 前3000~前2000年のバビロニアでは、隣国ペルシア、トルコなどがガリカ系などのバラの原種自生地であるうえに、バラなどを原料としたと思われる香料も加工されていたので、バラの栽培は盛んであったと考えられる。すなわちバビロン宮殿にはブドウやイチジクの果樹園とともにバラが栽培され、香料や薬用とされていたと推定される。
 エーゲ海文明期、エーゲ海諸島がバラ栽培にもっとも適した気候であったこともあり、バラが栽培され香料や医薬用として利用された。クノッソス宮殿のフレスコの家とよばれる洞窟(どうくつ)内の壁画にバラらしい絵が発見されている。古代ペルシアでもガリカ系やフェティダ系も豊富に自生し、ペルセポリスの彫刻にはバラを頭に飾ってあるものや、大建築の円柱にアカンサス模様のようにバラの模様が残されている。
 ヘブライ王国では、ソロモンの栄華にバラが出現しているが、ソロモン詩篇(しへん)や『旧約聖書』にあるバラは、現在のバラの祖先であるか否かは明らかではない。
 古代ギリシアでは、多くの詩人によってバラが詠まれており、ホメロスは若い人の美しさを「バラの頬(ほお)」と表現しており、バラ水(バラ油)も記述している。またサッフォーは「花の女王バラ」と歌っている。さらにアナクレオンは「恋の花なるバラの花、いとしき花のバラの花」と詠んでいる。ビーナス(アフロディテ)のバラの花は愛と喜びと美と純潔を象徴していると信じられた。バラの英語名ローズroseは、古アルメニア語のバールドvardに発し、古いギリシア語ブロードンbrodonがロドンrodonになり、ローズになったとされる。バラを意味するロードス島に当時のものと思われるバラ模様の硬貨が伝えられ、オリンピア競技の人々の頭の装飾にバラと思われるものが使われていた。
 歴史家ヘロドトスは「ウラニア」のなかに八重のバラを記載している。マケドニア地方のミダス王の花園にバラが栽培され、「60枚の花弁を有し」とあるのはローザ・センティフォーリアで、「他をしのぐ芳香」とあるのはローザ・ダマスセナである。これが歴史書に現れた正確なバラとして最古のものである。
 ギリシアのテオフラストスは、「バラには花弁の数と粗密さ、色彩の美、香りの甘美さなどの点でいろいろな相違があるが、普通のものは5枚の花弁をもっている。しかしなかには12~15枚あるいはそれ以上、なかには100枚の花弁をもつものさえある」と述べている。また、「そのころギリシアにあったバラは大きさはスイレンの半分くらいで、ローザ・ダマスセナ、ローザ・アルバ、ローザ・センティフォーリア」とその種類を記載している。
 エジプトでは、プトレマイオス王朝の織物や壁画にバラの花が描かれている。クレオパトラがアントニウスを迎えるため、室内をバラで飾ったのは有名で、アントニウスは死にあたって、墓場をバラで飾るように遺言したという。
 ローマのプリニウスは『博物誌』のなかで、当時栽培されていたガリカ、ダマスセナ、アルバ、センティフォーリアなど12品種をあげている。当時ローマでは「バラの中に暮らす」ということがいわれたが、これはぜいたくに暮らすという意味である。
 シルク・ロードを通して盛んに東西交易が行われたが、正倉院宝物にある尺などに現れる宝相華(ほうそうげ)の類はシルク・ロードを経てもたらされた文様で、それらにはローザ・シネンシス、ローザ・ギカンティア、ローザ・モスカータの仲間が描かれており、バラ栽培が広く普及していたことを知ることができる。
 ルネサンス期、とくにボッティチェッリの『春の寓意(ぐうい)』『ビーナスの誕生』『バラのマリア』に描かれたバラは、ガリカ系のダマスク、アルバ、センティフォーリアなどの品種の特徴がはっきり描かれている。また「ばら戦争」としてよく知られているヨーク家とランカスター家の王位継承戦争は、それぞれ白バラ、赤バラを紋章に用いたのでその名がある。このほか、宗教画やミニアチュールにもよく描かれている。[鈴木省三]
中国
ローザ・シネンシスすなわち中国のバラ(月季花、庚申(こうしん)バラ、長春花などといわれる種類)は、遣隋使(けんずいし)や遣唐使によって日本にもたらされたが、当時すでに多数の園芸品種があったらしく、絵画には長春花とみなされるものが多数描かれている。栽培の起源は明らかではないが、ボタンやキクと同様、かなり古くから栽培されていたと思われる。しかも、西欧のバラ栽培が香料や医薬、装飾用であったのに対し、中国では観賞用としての栽培が最初であった。[鈴木省三]
日本
日本でバラが最初に記されているのは『万葉集』で、「うまら」「うばら」とある。『枕草子(まくらのそうし)』『源氏物語』『古今和歌集』『新古今和歌集』では「さうび(薔薇)」と記されているが、これらはローザ・シネンシスの類であろうと思われる。また『明月記』や『栄花物語(えいがものがたり)』にもバラの記述がみられ、源義経(みなもとのよしつね)の兜(かぶと)にもバラが描かれていたと伝えられている。『春日権現霊験記(かすがごんげんれいげんき)』には明らかに長春花と思われるものが描かれている。また、室町時代には各種の装飾にバラが描かれている。江戸時代、岩崎灌園(いわさきかんえん)の『本草図譜』には長春花、月季花が描かれており、当時すでにバラ栽培がかなり普及していたことを知ることができる。[鈴木省三]

文学

本来は「う(い)ばら」から転じた語で、刺(とげ)のある木の総称であったが、のちに中国から渡来した「薔薇」をさすようになった。漢詩には、『田氏家集(でんしかしゅう)』(9世紀後半)下「禁中瞿麦(なでしこ)花詩」に、「薔薇刺有るを嫌ふ」などとつくられている。早くは音読のままに「さうび」とよばれ、『古今集』「物名(もののな)」に「さうび」の題がみえ、「我は今朝初(けさうひ)(「さうび」を隠す)にぞ見つる花の色をあだなるものといふべかりけり」(紀貫之(きのつらゆき))の歌は、題として詠んでいるばかりではなく、バラそのものを詠んだものといわれる。『古今六帖(こきんろくじょう)』六の「草」の項目のなかにも「さうび」の題が立項され、『古今集』の歌が掲げられている。『源氏物語』「賢木(さかき)」に、「階(はし)のもとの薔薇(さうび)、気色(けしき)ばかり咲きて」とあり、また、同じく「少女(おとめ)」に、六条院の夏の町の御殿の景物として植えられている、とある。また、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)に仮託される『秘蔵抄(ひぞうしょう)(古今打聞(うちぎき))』には、バラの異名として「ゆききさほ花」があげられている。夏の季題。[小町谷照彦]
『 ▽福岡誠一・鈴木省三著『バラ作り』(1980・主婦の友社) ▽鈴木省三・籾山泰一解説・2 善雄画『ばら花譜』(1983・平凡社)』

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