然も(読み)シカモ

デジタル大辞泉 「然も」の意味・読み・例文・類語

しか‐も【然も/×而も】

副詞しか」+係助詞」から》
[接]
前述事柄を受けて、さらに別の事柄を加えるときに用いる。その上。「あの方は私の恩師で、―命の恩人だ」
前述の事柄を受けて、それに反する帰結を付け加えるときに用いる。それなのに。それでも。「あれだけ練習して、―勝てなかった」
[副]そんなにまでも。
三輪山を―隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや」〈一八
[類語](1さてはその上この上またかつかつまたなおかつおまけに加うるにのみならずしかのみならずそればかりかそれどころかてて加えて同時に更にあとなおまだもっとよりなおさらますます一層一段と余計いやが上にいよいよも少しもう少しずっとあまつさえそれに今一つもう一ついまいち今少しもそっとぐっとぐんと/(2それでもなおかつ

さ‐も【然も】

[副]《副詞「さ」+係助詞「も」から》
そうも。そのようにも。「然もあろう」
確かにそれに違いないと思われるさま。いかにも。「然もうれしそうな顔をする」
まったく。実に。
「あはれ、―寒き年かな」〈末摘花
[類語]さもさもそのようそんなそういうそうそうした然様さようそれほどしか余り満更必ずしもあながち一概にさしてさしたるさほどさまで大してなかなか取り立てて別段さのみさしもこれほどどれほどいかほど何ほどそれくらいこれくらいこのくらいこればかり

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「然も」の意味・読み・例文・類語

さ‐も【然も】

  1. 〘 副詞 〙 ( 副詞「さ」に助詞「も」が付いてできたもの )
  2. 副詞「さ(然)」を強めたいい方。そのようにも。その通りにも。
    1. [初出の実例]「かの北の方の御おとうと九君を、やがてえたまはむとなんおぼしけるを、なにかは、さもと親はらからもおぼしたりけるに」(出典:大和物語(947‐957頃)九四)
    2. 「女思ひも不寄ねば、然(さ)も心も不得で有るに」(出典今昔物語集(1120頃か)二九)
  3. 副詞「さ(然)」を強めたいい方。いかにも。まったく。実に。
    1. [初出の実例]「この大夫の、さもふつつかにみゆるかな」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
    2. 「入道殿によのうつりしほどは、さもむねつぶれて、きよきよと覚はべりしわざかな」(出典:大鏡(12C前)五)
  4. 程度のはなはだしいことを示す。とても。非常に。
    1. [初出の実例]「さもめづらしからん奏でを見ばや」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一)
    2. 「Samo(サモ) ヲモシロイ」(出典:日葡辞書(1603‐04))

しか‐も【然も・而も】

  1. [ 1 ] 〘 副詞 〙 そのように、そんなにもまあ、などの意を表わす。感動的な気持が強い。
    1. [初出の実例]「三輪山を然毛(しかモ)隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや」(出典:万葉集(8C後)一・一八)
  2. [ 2 ] 〘 接続詞 〙 先行の事柄を受けて、後続の事柄を付け加える意を表わす。それに加えて。それにもかかわらずなおその上に。それでもなお。
    1. [初出の実例]「実に拠りて而(しかモ)言といふは具に内院を造る」(出典:彌勒上生経賛平安初期点(850頃))
    2. 「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」(出典:方丈記(1212))

然もの補助注記

接続詞用法は、漢文訓読において、「然」「而」「爾」を「しかも」と訓読したところから生じた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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