デジタル大辞泉 「尾」の意味・読み・例文・類語
び【尾】[漢字項目]
〈ビ〉
1 動物のしっぽ。「
2 物の末端。後ろ。終わり。「尾行・尾灯・尾翼/語尾・首尾・船尾・大尾・
3 動物がつるむ。「交尾」
4
〈お〉「
[名のり]すえ
[難読]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
動物体の後部で細長く伸びた部域をいい,しっぽともいう。動物以外のものでも似たような形をしたものを比喩的に尾ということがある。
移動性の発達に対応した前後軸の確立と,前進方向への運動力の強化にともなう頭部形成によって,動物の体の相対的後部に肛門や排泄器・生殖器などが配置されることになる。無脊椎動物の尾部は,一般にこうした器官の一部をもち,扁平化したり付属突出物を形成したりして運動器官として用いられることもあるが,内部構造は比較的簡単な部域である。外形的には区別できないことも多く,また肛門より後方の部分だけや体後端の突出物だけを指すこともある。甲殻類・昆虫類などで識別される類似の部域は腹部と呼ばれる。
脊椎動物のからだは外面上,頭部,胴部,尾部,前肢,後肢に大きく分けることができる(頸部(けいぶ)を設けることもある)。このうち〈尾部〉はおもに長さを計測または比較するときに便宜上用いられる概念で,一般に肛門の中心から体幹の後端(毛や羽毛は除く)までを指す。魚類では肛門から尾びれの付け根までを尾部とし,膜状の尾びれそのものは含まない。したがって,肛門が比較的前方にある硬骨魚などでは尾部が胴体の大きな部分をしめることになる。
それに対して,〈尾〉は尾部とは異なる常識的なことばである。魚類では尾びれの前にあるくびれのあたりより後ろの全体,四足動物では肛門の後背方にあって後方へ突出した部分(毛や羽毛を含む)が漠然と尾と呼ばれる。
脊椎動物の尾はすべて相同器官で,もとは原始魚類の水中での推進器官であった。古生代のカブトウオ(甲皮類)の尾は上下非対称形で上葉または下葉が他の葉より大きく,脊柱は尾の付け根で上または下へ折れ曲がり大きいほうの葉の支柱になっていた。このように上葉が大きい尾を異尾(不正尾),下葉の大きい尾を逆異尾(逆不正尾)と呼ぶ。サメ類は異尾をもつが,現在,逆異尾をもつ魚類は生存していない。ほとんどの現存硬骨魚の尾は中軸骨格がひれの基部で終わる上下対称形の尾で,これを正尾というが,それにはいくつもの型が区別される。両生類と爬虫類のうち水中生活をよくするものの尾は大型で多少とも側扁し,魚類に似て横に振り動かして水中で体を推進するのに適している。ただしカエル類は変態によって尾が吸収され,代りに後足が水中での推進器官になる。鳥類では尾の本体は小さく退化しているが,飛行性の鳥ではそれにはえた大きな尾羽(おばね)が空中でのかじ取り装置になっている。地上性・水中性の鳥では尾羽の発達はわるい。哺乳類では生活様式に応じて尾の形態と機能は多様に分化している。バランスとり(イヌ,リス),ハエ追い(ウマ,ウシ),巻きつけ(クモザル),武器(ヤマアラシ),二次的に水中推進器官に戻ったもの(ビーバー,クジラ)などである。尾が退化したものも少なくなく,ヒトや類人猿のように外部に現れた尾をもたないものもある。これらの種類では胚期には尾が発生し,やがて退縮するのだが,骨格の尾骨だけは成熟後も残存する。
なお以上とは別に,精子がもつ細胞器官の一つで運動装置である鞭毛も,形と機能が動物の尾と類似していることから尾部または尾と呼ばれる。
執筆者:原田 英司+田隅 本生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
動物の体の後端にある突出物。体の前端部は普通、脳や感覚器が発達した複雑な構造の頭となっているが、後端部は単純な構造の尾となっている。たとえば脊椎(せきつい)動物の尾は一般に、脊椎骨の末部である尾椎を中軸として肉と皮膚で覆われ、内部に体腔(たいこう)や内臓を含まず細長くなっている。ヒトや類人猿などのような尾のない動物でも尾骨(尾骶(びてい)骨)という、いくつかの尾椎の癒合により生じた骨がある。無尾両生類や鳥類の脊柱の末端にあり、やはり尾椎の癒合により生じた骨は尾端骨(尾骶骨としばしば混同して使用される)とよばれ、鳥類ではこれに尾羽がつく。樹上生活をするサルの尾には、木の枝に巻き付けて体を支えるなど、手のように役だつものがあることはよく知られており、またライオンやチーターなどの尾は、疾走するとき、方向舵(だ)の働きをするといわれている。ほかにも、体表に飛んでくる虫を追う、跳躍や木登りの補助に使う、さらに保温や感情表現に用いるなど、哺乳類の尾の用途は広い。
普通、尾といえば肛門(こうもん)より後ろの部分を想像するが、無脊椎動物の多くでは肛門は体の後端部にあり、胴と尾との境は認められない。たとえば昆虫の場合、胸部と腹部とは明らかに区別されるが、腹部のどの部分を尾とするかはわからない。また、原生動物や精子などの鞭毛(べんもう)を、動物体の尾と似ていることから尾とよぶこともある。
[内堀雅行]
…始祖鳥は羽毛をもち,外観は明らかに鳥だが,鳥類と爬虫類の両方の特徴をもっている。爬虫類の特徴の一部をあげると,20~21個の尾椎(びつい)よりなる長い尾をもち,あごに歯が生えている。翼はまだ完全な鳥の翼ではなく,つめのついた3本の指を有する。…
※「尾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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