デジタル大辞泉
「当る」の意味・読み・例文・類語
あた・る【当(た)る/▽中る】
[動ラ五(四)]
1 物事や人が直面、接触する。
㋐動いて来たものがぶつかる。また、動きのあるものが触れる。「ボールが顔に―・る」「雨がフロントガラスに―・る」
㋑断続的に触れる。さわる。「堅いカラーが首筋に―・る」
㋒光・熱・風などを受ける。「日がよく―・る部屋」「ストーブに―・る」「冷たい風に―・る」
㋓人に接する。人を待遇する。現在では、ひどく扱う場合に用いる。「つらく―・る」「家族に―・る」
㋔対抗する。対応する。「強敵に―・る」「勢い―・るべからずだ」
2 物事がその状態である。相当する。
㋐そのような関係にある。「伯父に―・る人」
㋑その方角にある。「東の方角に―・る家」
㋒他と比べて、それに当てはまる。「人の手に―・る部分」
㋓結果としてそういうことになる。「今日は結婚記念日に―・る」「失礼に―・る」
3 物事がふさわしい状態になる。ねらいや希望などに当てはまる。
㋐ねらいや予想のとおりになる。的中する。「天気予報が―・る」「山が―・る」
㋑催しや企画などが成功する。「商売が―・る」
㋒くじなどで選ばれる。当籤する。「賞品としてテレビが―・る」
㋓適合する。合っている。「彼の批評は―・っている」
4 物事に探りを入れる。ようすを見る。確かめてみる。「原本に―・る」「他の店を―・ってみよう」
5 受けとめる。担当する。
㋐身に引き受ける。従事する。「あえて難局に―・る」
㋑割り当てられる。指名される。「当番に―・る」
6 身体などにぐあいの悪い触れ方をする。
㋐よくないことが身に及ぶ。「罰が―・る」
㋑からだに害を受ける。「暑さに―・る」「河豚に―・る」
㋒果物などが傷む。「この桃はところどころ―・っている」
7 (「…にあたらない」などの形で)…するに及ばない。「驚くに―・らない」「腹をたてるには―・りません」
8 (多く「…にあたり」「…にあたって」の形で)何かを行う時・場合になる。「新年を迎えるに―・り」「友達を選ぶに―・っては」
9 野球で、打者がよくヒットを打つ。「あのバッターはよく―・っている」
10 釣りで、釣り針のえさに魚が食いついた感触がある。「四投目のキャスティングで―・る」
11 サッカーなどで、ゴールキーパーが敵のシュートをよく防ぐ。「今日の相手チームのキーパーは―・っている」
12 《「する」が失う意に通じるところから、それを忌み嫌っていう》ひげなどを、する。そる。「顔を―・る」
[可能]あたれる
[下接句]犬も歩けば棒に当たる・肯綮に中る・事に当たる・図に当たる・時に当たる・下手な鉄砲も数打てば当たる・耳に当たる・胸に当たる
[類語](1)ぶつかる・突き当たる・衝突・行き当たる・激突/(4)調べる・触れる・検分・研究・探る・洗う・探査・踏査・精査・詮索する・探索・分析・調べ・鑑査・監査・審査・審理・検討・吟味・閲する・リサーチ・アンケート
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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あた・る【当・中】
- [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
- [ 一 ] 人、物が、他の人、物に接触する。ぶつかる。
- ① 勢いよくぶつかる。
- [初出の実例]「かぢにあたる浪のしづくを春なればいかがさきちる花とみざらむ〈兼覧王〉」(出典:古今和歌集(905‐914)物名・四五七)
- 「雨のあし、あたる所通りぬべくはらめき落つ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)須磨)
- ② 軽く触れる。さわる。くっつく。
- [初出の実例]「すべり入てさぐり給へば、息の通ふけしきもなく、かひななどもひややかにあたる」(出典:浜松中納言物語(11C中)四)
- ③ 物事や人の言葉などによって、はっと気づく。思い当たる。
- [初出の実例]「かほどのことわり、誰かは思ひよらざらんなれども、折からの、思ひかけぬ心地して、胸にあたりけるにや」(出典:徒然草(1331頃)四一)
- ④ 光がある範囲に照りそそぐ。
- [初出の実例]「荒れたる板屋の隙(ひま)より月の洩り来て、ちごの顔にあたりたるが」(出典:更級日記(1059頃))
- ⑤ 光、風、矢などを身にうける。身をさらす。
- [初出の実例]「春の日の光にあたる我なれどかしらの雪となるぞわびしき〈文屋康秀〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・八)
- 「風にあたり湿に臥して」(出典:徒然草(1331頃)一七)
- ⑥ 暖をとる。あたたまる。
- [初出の実例]「出ん日や袖さへかねん炭竈を焼火にあたる小野の山人」(出典:草根集(1473頃)一一)
- ⑦ ある状況や時期に直接に対する。ある物事に出くわす。
- [初出の実例]「田むらの御時に事あたりて津の国の須磨といふ所にこもり侍りけるに」(出典:古今和歌集(905‐914)雑下・九六二・詞書)
- 「かく思ひかけぬ罪にあたり侍るも」(出典:源氏物語(1001‐14頃)須磨)
- ⑧ 人に接する。待遇する。良く扱う場合にも用いたが、ひどく扱う場合に用いることが多くなる。「あたりちらす」
- [初出の実例]「其の人の為に太子、懃(ねむごろ)に当り給ふ事有れども、思知たる心无(な)し」(出典:今昔物語集(1120頃か)三)
- 「つらしとて我さへつらくあたるまに人の恨も残しつるかな」(出典:隆信集(1204頃)物名)
- ⑨ 物事に探りを入れる。交渉する。また、比べて確かめる。
- [初出の実例]「牧がそこをあたっていましめて荑を送たり」(出典:玉塵抄(1563)一八)
- 「東京中のかもじ屋へあたりて、〈略〉、結ってもらったんだから」(出典:西洋道中膝栗毛(1874‐76)〈総生寛〉一二)
- ⑩ 飲食物や暑気、寒気、毒などが体調に害を与える。
- [初出の実例]「故に失命の毒薬に中(アタラ)ず」(出典:大智度論天安二年点(858))
- 「此ごろ酒があたって」(出典:浄瑠璃・心中重井筒(1707)中)
- ⑪ 果物などがいたむ。腐る。
- ⑫ ( 「当たっている」という形で ) 野球で、ヒットがよく打てる状態である。
- ⑬ 釣りで、魚が釣り針のえさに食いついた手ごたえがある。
- [初出の実例]「其方(そっち)の浮標(うき)は、モウ当ッてゐますぜ」(出典:落語・佃島(1900)〈初代三遊亭金馬〉)
- [ 二 ] 関係、状態、時期、方角、能力、役目などがちょうどあてはまる。相当する。
- ① ちょうどそういう関係、順位、資格、価値である。そういう状態に相当する。
- [初出の実例]「中にあたるなん、姫君とて、守いとかなしうし給ふなるときこゆ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
- 「やにはに八人きりふせ、九人にあたるかたきが甲(かぶと)の鉢にあまりに強う打あてて」(出典:平家物語(13C前)四)
- ② ちょうどその時期である。その日時に相当する。「卒業するにあたり」
- [初出の実例]「五月五日にぞ五十日(いか)にはあたるらむと」(出典:源氏物語(1001‐14頃)澪標)
- ③ ちょうどその方角にある。その方向に面する。
- [初出の実例]「車の後(しり)のかたにあたりたる人の家の門より」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
- 「ことに建てられたる御堂の西の対南にあたりて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)
- ④ 同じくらいの力で張り合う。対抗する。匹敵する。
- [初出の実例]「皇師(みいくさ)の威(いきほひ)を望見(おせ)るに、不敢敵(えアタルまじきこと)を懼(お)ぢて」(出典:日本書紀(720)神武即位前(北野本訓))
- 「師とすべき人もなくてなむ好み習ひしかど、猶あがりての人にはあたるべくもあらじをや」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
- ⑤ 仕事、役目など引き受けて行なう。担当する。割り当てられる。従事する。
- [初出の実例]「乗るべき車は〈略〉めでたうして参らすべきよし、受領どものあたりて、我も我もと心を尽したる」(出典:承応版狭衣物語(1069‐77頃か)三)
- 「女房の装束、裳、唐衣、表著(うはぎ)、童の装束など人々あたり」(出典:栄花物語(1028‐92頃)歌合)
- ⑥ ( [ 二 ]①の意で、特に否定的な表現の中で用いる ) ある事をする必要がある。
- [初出の実例]「其様(そん)な処へ帰るに当(アタ)るものか」(出典:わかれ道(1896)〈樋口一葉〉中)
- [ 三 ] ねらいや望みにぴったり合う。
- ① 矢や弾丸などがねらった所にぶつかる。命中する。
- [初出の実例]「『道長がいへよりみかど、きさき立ち給ふべきものならば、この矢あたれ』と仰せらるるに、おなじものを中心にはあたるものかは」(出典:大鏡(12C前)五)
- ② 真理や規範などに合う。正しくあてはまる。
- [初出の実例]「くらき人の、人をはかりて、その智を知れりと思はん、さらにあたるべからず」(出典:徒然草(1331頃)一九三)
- ③ 言ったり考えたりしたことが、事実とぴったり合う。予想どおりになる。的中する。
- [初出の実例]「両方から指を出して数が当(アタ)ったら勝で能ささうな物だ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三)
- ④ 物事がうまくゆく。事業、商売、興行などが成功したり、果物、穀物などがよく実ったりする。
- [初出の実例]「とかりするさつをのゆつるうちたえてあたらぬ恋に病(やま)ふ頃哉」(出典:散木奇歌集(1128頃)恋上)
- 「近年は、するほどの事あたらぬ事なく、天地(あめつち)も動す勢なりしに」(出典:洒落本・傾城買指南所(1778))
- ⑤ くじや懸賞の催しなどで、選ばれる。
- [初出の実例]「クジガ ataru(アタル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- [ 2 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 (髪やひげを)剃(そ)る。東京の商家などで「剃(す)る」というのをきらっていう語。
- [初出の実例]「私が行く処に床屋があるんだ。〈略〉名人といって可いんだね。其代(そのかはり)余程折がよくないとあたっちゃくれないが」(出典:玄武朱雀(1898)〈泉鏡花〉七)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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