(読み)はた

精選版 日本国語大辞典 「杯」の意味・読み・例文・類語

はた【杯】

〘接尾〙 =はい(杯)(二)→一杯(ひとはた)

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デジタル大辞泉 「杯」の意味・読み・例文・類語

はい【杯】[漢字項目]

常用漢字] [音]ハイ(漢) [訓]さかずき
〈ハイ〉
酒を入れて飲む器。さかずき。「杯盤乾杯玉杯苦杯献杯酒杯祝杯返杯
記念にするカップ。「賜杯賞杯優勝杯
〈さかずき〉「水杯
[補説]「盃」は異体字人名用漢字

はい【杯/×盃】

[名]酒を入れて飲む器。さかずき。「―を重ねる」「―を挙げて健康を祝す」
[接尾]助数詞。撥音のあとでは「ばい」、促音のあとでは「ぱい」となる。
器に入れた液体、茶碗に盛った飯などを数えるのに用いる。「一ぱいの水」「御飯を三ばい食べる」
たこ・いか・あわびなどを数えるのに用いる。
船を数えるのに用いる。せき
[類語]さかずき酒杯玉杯金杯銀杯猪口ぐい飲み

さか‐ずき〔‐づき〕【杯/×盃/×坏】

《「さかつき」の意》
酒を飲むのに使う小さな器。多く、口が朝顔形に開いたものをいう。「―を酌み交わす」「―を干す」
杯事さかずきごと2」に同じ。「親分子分の―を取り交わす」「固めの―」
[類語]酒杯はい玉杯金杯銀杯猪口ぐい飲み

はた【杯】

[接尾]はい(杯)1」に同じ。
湯槽ゆぶねわらを細々と切りて、一―入れて」〈宇治拾遺・三〉

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改訂新版 世界大百科事典 「杯」の意味・わかりやすい解説

杯/盃 (さかずき)

酒を飲むのに用いる器。形状,大きさなどによって,盞(さん),巵(し),觚(こ),爵(しやく),觴(しよう),そのほか多くの字が使われる。これらのうちには〈角〉のつく字が多く,古く獣角の杯が用いられたことが知られる(角杯リュトン)。日本語の〈さかずき〉は〈酒(さけ)のつき(坏,杯)〉の意で,〈つき〉は鉢形の土器をいった。古くから一般的には素焼きのかわらけが用いられ,やがて陶磁器,金銀器,漆器などが使われるようになった。現在でも神事にかわらけが用いられるのは,そうした古式に基づくものである。奈良時代の文献には金,銀,金銅瑠璃(るり),瑪瑙(めのう),玉(ぎよく),犀角(さいかく)などのものの名が見られ,正倉院宝物中には将来品と思われるゴブレット形の瑠璃杯卵形瑪瑙杯なども伝存されている。木製朱漆塗の杯が見られるのは平安時代からであるが,中世以降それが一般化し,やがて杯といえば朱漆塗の木杯をさすまでになった。それもはじめはかわらけ形であったと考えられるが,時代とともに底部につくり出した高台(こうだい)が高くなっていく傾向が見られる。

 杯の形は,一座の人々が同じ杯で飲みまわしをする儀礼的な酒盛から,独酌など楽しみのための飲酒へと内容を変化させるに伴って,大杯から小杯になった。現在の杯はほとんどが陶磁製の猪口(ちよく)/(ちよこ)など個人用の小器で,徳利(とくり)と組み合わせて燗酒(かんざけ)を飲むことが多い。しかし,儀式では大小三重(みつがさね)の朱漆塗木杯,神事ではかわらけが用いられる。いずれも冷酒を用い,前者では銚子(ちようし),後者では瓶子(へいし)との組合せになる。江戸時代にはしばしば酒戦(しゆせん)と称して酒の飲みくらべが行われたことなどもあって,大杯に対する関心がかなり強く,三都の〈浮瀬(うかむせ)〉のように最大6升5合入りなどの大杯を備えて人気を集めた料亭もあった。また,一般に大杯を〈武蔵野(むさしの)〉と呼んだ。〈飲みつくせぬ〉を広い武蔵野を見つくさぬの意の〈野見つくさぬ〉にかけたもので,内側一面にススキの図柄を蒔絵で施したものもあった。変わったものには〈可杯(べくさかずき)〉や〈桝杯(ますはい)〉などがあり,夜光杯,髑髏杯(どくろはい)といったものも史上に散見される。可杯は底がとがっていたり,穴があって指でふさいで持ったりする。つまり,候文(そうろうぶん)などで〈××すべく〉と書く場合,可の字を上に置くところから,下に置けない杯というのでこの名ができた。桝杯は,賽(さい)を振って出た目にしたがって酒を飲む遊びに用いるもので,大小の桝形の杯に〈一合〉〈五合〉〈一升〉などと書いてある。夜光杯は夜光る玉でつくったもの,髑髏杯は人間のされこうべに漆を塗ったり金箔を張ったりして酒器とするもので,《史記》には晋の趙襄子(ちようじようし)が仇敵頭蓋骨を漆塗りにして使っていたことが記されている。また幕末からはガラスや錫製の杯も現れた。
グラス →酒器
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「杯」の意味・わかりやすい解説


さかずき

盃とも書く。酒を飲む容器。猪口(ちょく、ちょこ)ともいう。酒杯(さかつき)あるいは酒注(さかつぎ)から転訛(てんか)したとされ、杯、盃のほか坏、盞、、爵、觥、觚、觶、鍾など多くの字をあてる。古くは素焼の土器(かわらけ)が一般的であったが、やがて金銀製の杯や木製漆器の杯が登場し、中世には杯といえば朱漆塗りの木杯をさすまでに広がった。『和漢三才図会』によれば、すでに正徳(しょうとく)年間(1711~1716)には陶磁器製の杯が現れていたが、まだ一般には用いられず、喜田川守貞(きたがわもりさだ)の『守貞漫稿』には「杯モ近年ハ漆杯ヲ用フルコト稀(まれ)ニテ、磁器ヲ専用トス」とあり、陶磁器杯が普及するのは天保(てんぽう)期(1830~1844)以降と考えられる。古い時代には、漆器の大杯が重用されていたが、江戸時代に入ると「銘々杯」という小型の杯を用いる風習がおこり、遊里や居酒屋をはじめ家庭の晩酌に至るまで、小杯による飲酒が普及した。このころ酒の製法は濁酒から清酒へと発達して、これに伴い酒の飲用も冷酒から燗(かん)酒へと移り、酒注(つ)ぎの道具も土器杯には瓶子(へいじ)、漆器杯には提子(ひさげ)・銚子(ちょうし)、陶磁器杯には燗徳利というように、使用する杯の資材にあったものが用いられた。ことに「猪口(ちょこ)」といわれる陶磁器製の杯は、燗徳利の流行とともに普及し、現在では杯を代表するまでになっている。幕末にはガラス製の杯や錫(すず)製の杯も現れた。杯の変わり種としては可杯(べくさかずき)、天狗(てんぐ)杯、枡(ます)杯、袋杯などがある。しかし燗酒を猪口で飲むのは略式とされて、正式の儀礼には大小三重(みつがさね)の朱漆杯に冷酒を注ぐ方式がとられ、この姿はいまも結婚式の三三九度(さんさんくど)の杯として伝えられている。儀礼用の組杯をのせる台を杯台(さかずきだい)といい、江戸時代には金蒔絵(きんまきえ)を施した豪華なものが用いられたが、現在では結婚式か正月の祝い酒などに使用される程度である。

[宮垣克己]


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食器・調理器具がわかる辞典 「杯」の解説

さかずき【杯/盃】

酒をついで飲むための小さなうつわ。古くは土器(かわらけ)であったが、次第に金属、漆器、陶磁器、ガラスなどが用いられるようになった。特に、浅い円錐形に開いた形で高台(こうだい)のあるものをいうこともある。神事や儀式、晴れの席などには、こんにちもこの形の漆器や土器を用いることが多い。

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百科事典マイペディア 「杯」の意味・わかりやすい解説

杯【さかずき】

盃とも記す。酒を飲む器。古くは土器(かわらけ)が用いられたので坏の字が当てられ,中世以降木製の杯が普及,さらに塗杯や金・銀杯もできた。今日ではおもに陶製のものが使われる。神人共食の儀礼とされる酒盛において,一つの杯で飲み回し一巡するのを一献と称した。婚礼における三三九度の杯などはこうした酒礼の遺風である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「杯」の意味・わかりやすい解説


さかずき
winecup; goblet

酒を飲むために使用する容器。骨角,木,土,陶磁,石,金属,ガラス製などがある。動物の角で作った角杯の時代から土器などの生れる段階で,特に飲酒用の容器が作られるようになり,儀礼的な機能や酒の種類の多様化,飲み方の推移とともに,多くの形式の杯が作られた。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【猪口】より

…杯の一種で,ふつう陶磁製の小器をいう。〈ちょく〉からの変化で,〈ちょく〉は〈鍾〉の呉音,あるいは福建音,朝鮮音に関係があるとする新井白石の説などがあるが,はっきりしない。猪口は〈ちょく〉の当て字である。《守貞漫稿》が〈江戸近年式正ニノミ銚子ヲ用ヒ,畧ニハ燗徳利ヲ用フ。……盃モ近年ハ漆盃ヲ用フコト稀ニテ磁器ヲ専用トス。……三都トモ式正,塗杯,畧ニハ猪口。式正ニモ初塗杯,後猪口ヲ用フコト銚子ニ准ス〉としているように,江戸時代には燗徳利との組合せで猪口はひろく普及した。…

※「杯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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