デジタル大辞泉 「枝」の意味・読み・例文・類語
えだ【枝】
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1 茎や幹から分かれて出た部分。葉をつけたり、さらに小枝を出したりする。「
2
3 子孫。一族。うから。
「今に―広ごり給へり」〈大鏡・道長上〉
4 人間や獣の手足。
「其の―を引き
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「
[下接語]打ち枝・
[類語]小枝・
し【枝】[漢字項目]
[学習漢字]5年
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1 木のえだ。「枝葉/樹枝・分枝・
2 分かれ出たもの。「枝族/連枝」
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[名のり]え・しげ・しな
[難読]
翻訳|branch
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
シダ植物や顕花植物の茎は枝分れをするが,1本の茎が分枝して2本以上の茎になるとそれを枝という。日常的には,樹木において1本の太い主茎つまり幹から分枝した枝やそれからさらに分枝した小枝のことを指す。広義には,植物体が分枝によって生じる軸状構造を意味し,茎葉体制をもつコケ植物や,器官が未分化で細胞が連結しただけの糸状または軸状構造をもった藻類のようなものにまで広げて用いられる。一般的には枝が生じることによって,植物体は大きさを増し,さまざまな生理的活動を営むに必要な体表面積の増大を図る。また地下茎や匍匐(ほふく)茎において母茎がなくなり枝が独立して別個体になるなど栄養生殖にも関係がある。枝は主茎と位置や大きさで差があっても,構造や機能の面では変りがないが,植物群によっては特異な形をとるものがある。節間が短く葉を叢生する短枝(マツ),葉状になっている仮葉枝(ナギイカダ),針状または鉤(かぎ)状で葉もない茎針(カギカズラ),無性生殖を行う芽体(トウゲシバ),横走枝(オランダイチゴ)などがその例である。
茎から分枝によって枝がつくられる様式にはいくつかの型が認められる。種子植物では枝は主茎につく葉の葉腋(ようえき)に発生する腋芽がのびてできる。この場合腋芽の頂端分裂組織は主茎の頂端分裂組織から派生する。このような分枝を単軸分枝monopodial branchingという。基本は単軸分枝であってもクリの場合のように,主茎の伸長がとまって腋芽からのびた枝が主軸的になる場合を単軸状仮軸分枝monopodial sympodiumという。極端に側枝が発達するものでは外見は単軸分枝によく似ているが,形態形成や器官の配列などの比較によって単軸分枝とは区別がなされる。一つの節から二つ以上の枝が分枝する場合,軸状に配列するので輪状分枝verticillate branchingという。シダ植物のトクサ属でもこの分枝法であるが,枝は輪生葉の葉間に生じるので,その分枝は種子植物の葉腋性の分枝とは異なる。一方,マツバラン,ヒカゲノカズラ,イワヒバあるいはシケシダなどのシダ類のような各シダ植物では茎はしばしば二つの均等な枝に二叉(にさ)状に分かれる。この分枝を二叉分枝dichotomous branchingという。この場合,茎頂の頂端分裂組織が二等分されることによってそのような枝ができる。またシダ類の葉に見られる遊離葉脈も平面的二叉分枝をすることが多い。単子葉植物の茎で例外的に二叉分枝の報告がある。二叉分枝でも一方が強大になって,これがくり返されると仮軸分枝や単軸分枝に似てくる。これを二叉状仮軸分枝dichotomous sympodiumという。ヒカゲノカズラやクラマゴケをはじめシダ植物に広くみられ,シダ類の羽状遊離葉脈もこの分枝でできる。これらの分枝のほかに種子植物には側枝が葉腋以外からでる偏葉腋(腋外)性の分枝もあって,ハナイカダはよく知られた例である。このような分枝は,節間の生長がいろいろに偏在することによって,芽が葉腋から離れた茎上や葉面上に生じると推定されている。他の種子植物に比べて著しく異常な分枝をすることが,ナス科,ウリ科,ブドウ科などいくつかの植物群で知られている。その分枝について単軸分枝,単軸状仮軸分枝あるいは偏葉腋性分枝として解釈する諸説が提唱されているが,定説となっていない場合が多い。分枝を系統的にとらえてみると,一般的傾向として単純な二叉分枝から二叉状仮軸分枝へ,さらに単軸分枝へと複雑さを増す方向へ進んだと推定される。この傾向はデボン紀の原始的維管束植物の系統関係からも支持される。しかし葉腋性の単軸分枝の系統的起源については定説がない。側芽はふつう生長ホルモンを介して頂芽によって生長が制御されている。側枝の配列様式は葉序と密接な関係があるが,すべての側芽が枝としてのびるのではないので葉序と同等ではなく,枝序と呼ばれる。植物によって枝ぶりが決まっていて特定の腋芽がのびて規則的に配列する場合もあれば,不規則な場合もある。枝序の決定機構についてはわかっていないことが多い。根の分枝は茎の場合と異なる。茎の頂端分裂組織は茎の表面を含む細胞に由来する。このようにしてできた分枝は外生分枝exogenous branchingと呼ばれる。それに対して,ふつう根では側根の頂端分裂組織は根の内部の細胞からつくられ,したがって側根は根の外側の組織をつき破って出てくる。この場合は内生分枝endogenous branchingと呼ばれる。しかしヒカゲノカズラ属,イワヒバ属,ミズニラ属では根の頂端分裂組織が二分することによって根が二叉分枝する。主軸と枝の頂端分裂組織が発生上連続しているかどうかによって,連続する場合を真正分枝,不連続な場合を偽分枝に分けることがある。外生分枝は真正分枝であり,内生分枝は偽分枝である。偽分枝の例はラン藻や褐藻の藻類にもある。
執筆者:加藤 雅啓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
植物体を構成している軸状の部分が単一でなく何本かに分かれているとき、それらのうち主軸でないものを枝という。主軸から枝が生じることを分枝といい、これにはいくつかの形式がある。もっとも狭い意味の枝は、維管束植物の苗条(びょうじょう)が分枝したものに限られるが、広い意味では、主根から出た側根や太い葉脈から分かれた細い葉脈も含められ、さらにコケ植物や藻類の葉状体や菌類の菌糸にも適用される。
[福田泰二]
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報