検察官(ゴーゴリの喜劇)(読み)けんさつかん(英語表記)Ревизор/Revizor

  • ゴーゴリの喜劇
  • 検察官

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ロシアの作家ゴーゴリの五幕喜劇。1835年初稿。36年初演。42年最終稿発表。頭のからっぽな青年官吏フレスタコーフが、ある地方都市で役人たちから微行中の検察官と間違えられ、さんざん飲み食いしたあげく、すねに傷もつ市長や役人たちから金を巻き上げて遁走(とんそう)するという筋。作者の意図は政治的ではなく道徳的なもので、政府の信用を落とす「悪(あ)しき執行者」を正義の立場から風刺するにあったことは明らかであるが、結果的には官僚制度そのものに対する痛烈な告発と受け取られ、その後もロシアではこの解釈が一般的である。芸術的には、すこしも無理のない、しかも緊密な構成、単純明快な筋の運び、みごとに書き分けられた性格、無類に生きのいい台詞(せりふ)など、完璧(かんぺき)としかいいようのないできばえを示しており、かつてロシア語で書かれたあらゆる戯曲の最高峰に位する作品といっても過言ではない。

[木村彰一]

『米川正夫訳『改訳 検察官』(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ノーブレスオブリージュ

《「ノブレスオブリージュ」とも》身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという、欧米社会における基本的な道徳観。もとはフランスのことわざで「貴族たるもの、身分にふさわしい振る舞...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android