(読み)まき

百科事典マイペディア「牧」の解説

牧【まき】

馬を放牧し,その飼育・増殖を目的に設定された区域。古代令制の官牧は,主として諸国の軍団に支給する馬を飼育したが,軍団制の崩壊で9世紀初めに再編成され,《延喜式》の規定では兵部省(ひょうぶしょう)所管で令制の官牧に由来する諸国牧(官牧)と,左右馬寮(そうめりょう)所管で皇室牛馬供給のための御牧(みまき)(勅旨牧),貢上牛馬飼養のための近都牧(きんとのまき)の3種となる。牛馬は年貢として貢進し,皇族・官人に支給された。9―10世紀ころから権門や地方豪族の私牧が増加し,公牧も私牧化,これらはのちに開発により荘園化していく。兵馬が重要視された中世には,牧は武士団発生の基盤となることが多く,江戸時代にも幕府諸藩は公牧を設けて軍備のための良馬育成に努めた。→秩父牧望月牧垂水荘
→関連項目岡屋牧楠葉牧皇室領質侶牧種子島垂水東牧・垂水西牧鳥養牧放牧

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「牧」の解説


まき

牛馬などを放し飼いにする土地をいう。牧場の古名。日本の牧畜は上古にさかのぼるが,大化改新 (645) 以降,軍馬,駅馬,農耕用牛馬の管理も厳密に規定されるようになり,その飼育の場である牧場も国家による制度化が行われた。醍醐天皇は『延喜式』によって,皇室の料馬を供給させるための御牧,兵部省に管轄させる諸国牧,左右馬寮所管の近都牧を指定させ,御牧の年貢馬は信濃 80,甲斐 60,武蔵,上野各 50と定めた。その後,律令国家の解体とともに官牧は衰退したが,それに代り各地に私牧が設置されていった。江戸時代に入ると8代将軍徳川吉宗は下総小金,佐倉に公牧を開き,諸藩のなかでも南部藩牧馬松江藩牧牛などが行われた。


まき

新潟県南西部,上越市南東部の旧村域。東頸城丘陵の西側に位置し,南は長野県に接する。 1954年沖見村と合体。 2005年上越市に編入。明治中期に最盛期であった越後古油田の一つがある。主産業は農業で,棚田での米作,野菜栽培,および畜産が行なわれる。細縄特産地すべりでも知られる。宮口古墳群水科古墳群 (ともに国指定史跡) ,鷹羽温泉がある。

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精選版 日本国語大辞典「牧」の解説

ぼく【牧】

〘名〙
① 牛や馬などを放し飼いにする場所。まき。まきば。牧場。〔孟子‐公孫丑・下〕
② 牛や馬などを飼う人。うしかい。うまかい。〔春秋左伝‐昭公七年〕
③ 牛や馬などを飼うこと。また、その牛や馬。牧畜。
※大唐西域記長寛元年点(1163)一「毳帳穹廬にして鳥のごとくに居て牧(ホク)を逐ふ」 〔書経‐禹貢〕
④ 養うこと。養い導くこと。〔広雅‐釈詁一〕
⑤ 古代中国の九州の長官。転じて、地方長官。また、地方官。役人。〔書経‐立政〕

ぼく‐・する【牧】

〘他サ変〙 ぼく・す 〘他サ変〙
① やしないおさめる。また、管理、運営する。
※文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉六「今の人民は鎌倉以来封建の君に牧せられたるものなれば」
② 牛馬など家畜類を放し飼いにしてふやす。飼う。
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉七「少時羊を牧するを以て業と為しが」
③ 処理する。しまつする。
※孤山先生遺稿(1816)牧牛詞「洒水牧泥土、折楊払蚊虻

ま‐き【牧】

〘名〙 (馬城(まき)) 牛・馬などを放し飼いにする場所。まきば。ぼくじょう。ぼく。
※狭衣物語(1069‐77頃か)三「人人、あまたありける限り重なりて、衣の裾をおのおのふまへつつ、すきすきに倒れ伏したるは、まきの馬の心地ぞしたりける」

ぼく‐・す【牧】

〘他サ変〙 ⇒ぼくする(牧)

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旺文社日本史事典 三訂版「牧」の解説


まき

牛馬の飼育地
大宝令に厩牧令が規定され,延喜式には御牧(勅旨牧)・諸国牧・近都牧の3種があり,牛馬を飼育し,皇室や政府・軍団や駅馬・伝馬供給源となった。平安時代には貴族の私牧が,鎌倉時代以降は軍馬・運輸の必要から各地に牧ができた。江戸時代も盛んに行われ,幕府の公牧(佐倉など),南部藩の牧馬,松江藩の牧牛などが有名。

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デジタル大辞泉「牧」の解説

ぼく【牧】[漢字項目]

[音]ボク(漢) [訓]まき
学習漢字]4年
〈ボク〉
家畜を放し飼いにする。「牧歌牧場牧草牧畜牧童牧羊耕牧放牧遊牧
人々を治め導く。「牧師牧民
役人。地方長官。「州牧」
〈まき〉「牧場

まき【牧】

《「馬城まき」の意。「城」は物を収めておく所》牛・馬などを放し飼いにする場所。牧場。まきば。

うま‐き【牧/馬城】

まき(牧)」に同じ。むまき。
さはに—を置きて馬を放つ」〈天智紀〉

むま‐き【牧/城】

うまき

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世界大百科事典 第2版「牧」の解説

まき【牧】

馬や牛を放し飼うために区画された地域。《和名抄》に〈むまき〉とみえ,この訓は〈馬城〉あるいは〈馬置〉の意といい,馬飼の音のつまったものともいう。《日本書紀》天智7年(668)7月の〈多(さわ)に牧(むまき)を置きて馬を放つ〉の記事を初見とするが,以前から各地に牧が置かれていたことは確かである。
[古代の公牧]
 牧には公牧と私牧とがあるが,律令制の整備につれて公牧の制度は急速に整い,《続日本紀》慶雲4年(707)3月条に〈(てつ)の摂津,伊勢等23国に給いて牧の,犢(こうし)に印せしむ〉とみえる。

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世界大百科事典内のの言及

【ウマ(馬)】より

…それらのうち,アンキテリウムはアジアへ移住し,ユーラシアの森林地帯で次の鮮新世まで繁栄した。日本でもその化石が知られ,岐阜県可児(かに)町で発見されたヒラマキウマ(平牧馬)がそれにあたる。中新世の後期は,全世界的な乾燥化があり草原性の環境が拡大したが,それに伴ってウマ科の第2回の大放散が見られた。…

【駒牽】より

…平安時代,諸国の(まき)から貢進する馬を天皇が見る儀式。8月15日におこなわれたが,のち朱雀天皇の国忌のため,16日に変更となった。…

※「牧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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