結ぶ(読み)ムスブ

デジタル大辞泉 「結ぶ」の意味・読み・例文・類語

むす・ぶ【結ぶ】

[動バ五(四)]
ひもなど、細長いものを組んでつなぐ。また、結び目をつくる。「髪を―・ぶ」「包帯を―・ぶ」
手の指をからませるなどして形をつくる。
㋐(ふつう「掬ぶ」と書く)手のひらを組み合わせて水をすくう。
「花を採り水を―・んでは」〈露伴・二日物語〉
仏教で、手の指でさまざまの形をつくる。「いんを―・ぶ」
開いたものを閉じる。「口をへの字に―・ぶ」「手を―・んだり開いたりする」
互いに関係をつくる。
㋐交わりを緊密にする。「親交を―・ぶ」「縁を―・ぶ」
㋑同じ考えの者どうしが一緒になる。組む。「強い勢力と―・ぶ」「同盟を―・ぶ」
㋒互いに約束する。「条約を―・ぶ」「契りを―・ぶ」
二つの地点をつなぐ。連絡する。「本州四国とを―・ぶ橋」「東京と北京とを四時間で―・ぶ空路
まとめて形にする。また、まとまって形になる。
㋐植物が実をつくる。結実する。みのる。「ぶどうがたわわに―・ぶ」
空中水分などが固まる。結露する。「ハスの葉に露が―・ぶ」
㋒結果が出る。「努力が実を―・ぶ」
建物を構える。「いおりを―・ぶ」
文章などを終わりにする。締めくくる。「話を―・ぶ」
係り結びで、文末活用語を、上の係助詞に応じた活用形とする。「こそ」を受けて已然形とする類。
10 誓いや願いを込めて、草や木の枝の端などをつなぎ合わせる。
君が代も我が代も知るや磐代いはしろの岡の草根をいざ―・びてな」〈・一〇〉
[可能]むすべる
[下接句]縁を結ぶ同じ流れをむすきょくを結ぶ・草を結ぶ・口を結ぶじゅを結ぶ契りを結ぶ手を結ぶ実を結ぶ夢を結ぶ
[類語](1結わえる縛る結うくくりつける取り結ぶ縛り付ける縛り上げるつなぐ結い上げる結わえ付ける結わく継ぐつなぎ止めるもや結び付ける継ぎ合わせる結び合わせる接続連結/(5つなぐ連絡中継中継ぎリレー

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「結ぶ」の意味・読み・例文・類語

むす・ぶ【結・掬】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 バ五(四) 〙
    1. [ 一 ] 離れているものをからみ合わせてつなげる。
      1. 細長いものをからみ合わせてつながるようにする。
        1. (イ)(ひも)や糸などをつなぐ。かたくゆわえる。
          1. [初出の実例]「海原を遠く渡りて年経(ふ)とも児らが牟須敝(ムスベ)る紐解くなゆめ」(出典万葉集(8C後)二〇・四三三四)
        2. (ロ) 松の枝、草などの端をゆわえ合わす。古代呪術の一つで、魂を結び込めて生命の安全、多幸などを祈る気持の表現とされる。
          1. [初出の実例]「君が代も吾が代も知るや磐代の岡の草根をいざ結(むすび)てな」(出典:万葉集(8C後)一・一〇)
        3. (ハ) 結びめを作る。手紙などをたたんで結び文にする。
          1. [初出の実例]「かしこう縫ひつと思ふに、針をひきぬきつれば、はやくしりをむすばざりけり」(出典:枕草子(10C終)九五)
      2. 手の指をからませたりして形を作る。
        1. (イ) ( 掬 ) 両手のひらを一つに組み合わせる。特に、その手で水をすくうのをいう。
          1. [初出の実例]「命を幸くよけむと石走る垂水の水を結(むすび)て飲みつ」(出典:万葉集(8C後)七・一一四二)
        2. (ロ) 仏教で、手指でさまざまな形をつくる。「印を結ぶ」の形で用いられる。→印(いん)
          1. [初出の実例]「定印を結て、居ながら終にけり」(出典:古今著聞集(1254)二)
        3. (ハ) 両手で飯をおさえて、握り飯をつくる。
          1. [初出の実例]「むすばるる・下卑で申さばにぎりめし」(出典:雑俳・軽口頓作(1709))
        4. (ニ) 指を折っててのひらを閉じる。また、そのようにして手と手をつなぐ。「むすんでひらいて、手を打ってむすんで」
      3. 複数の人や物事などがつながりをもつ。
        1. (イ) 人と人との交わりを緊密にする。また、堅くちぎる。言い交わす。契りを交わす。人と物の場合にも用いる。
          1. [初出の実例]「死にも生きも同じ心と結(むすび)てし友やたがはむ我れもよりなむ」(出典:万葉集(8C後)一六・三七九七)
          2. 「エンヲ musubu(ムスブ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
        2. (ロ) 人や物事などをつなぐ。つながりをもつ。関連をもつ。
          1. [初出の実例]「種々な対象との間に結(ムス)ばれた困った関係が、根を断たれないで」(出典:善心悪心(1916)〈里見弴〉)
      4. 情報などを媒介としてつなぐ。関係を密にする。
        1. [初出の実例]「所謂る出張員なる者が本工場と連絡を結んで盛んに活動する」(出典:女工哀史(1925)〈細井和喜蔵〉三)
      5. 同じ志の人が結束する。集結する。
        1. [初出の実例]「日かげをもろともに作りてむすびゐさせ給ひたりし事など」(出典:讚岐典侍(1108頃)下)
      6. 開いている口を合わせる。戸口などをしっかりと閉じる。
        1. [初出の実例]「男は緘黙(むっつり)と口を緊結(ムス)んで凝と考込んで」(出典:くれの廿八日(1898)〈内田魯庵〉五)
    2. [ 二 ] まとめて形にする。また、完成させたり、結束をつけたりする。
      1. ある情況や感情を形づくる。夢として形づくる。
        1. [初出の実例]「旅衣うらかなしさにあかしかね草の枕は夢もむすばず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
      2. 花を結実させる。実らせる。
        1. [初出の実例]「うゑきは、根をおほしてつくろひおほしたてつればこそ、枝もしげりて、このみをもむすべや」(出典:大鏡(12C前)一)
      3. 巣や庵室などを作る。建物をかまえる。
        1. [初出の実例]「ここなる小僧の房をいまだ持たざるに、草庵ひとつむすびて取らせられなんや」(出典:今鏡(1170)四)
      4. しめくくりをつけて終わりとする。結末をつける。「文を結ぶ」
        1. [初出の実例]「皆面白しと見て、帯を解ける斗を似せて、むすび納むることを知らず」(出典:申楽談儀(1430)序)
      5. ( 文法の係り結びで ) 上にある係助詞に呼応させた語形で文を終わらせる。→係り結び
      6. もとに返す意を婉曲にいう。
        1. [初出の実例]「きがついた・此お盃それへ戻アノむすびませうかな」(出典:雑俳・軽口頓作(1709))
      7. 光を一点に集める。また、ぼんやりしていたものが、はっきりと形をなす。形として現われる。
        1. [初出の実例]「フィクションの世界がそこで紛(まご)うかたなき純粋な像を結んでいる作品に」(出典:フィクションについて(1948)〈佐々木基一〉)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 バ五(四) 〙 まとまって形を成す。
    1. (イ) 露、霧や氷などが凝固、凝結する。むすぼおる。
      1. [初出の実例]「この小川霧そ結(むすべ)る激(たき)ちゆく走り井の上に言挙げせねども」(出典:万葉集(8C後)七・一一一三)
    2. (ロ) 実などが実る。
      1. [初出の実例]「桜は、疾くに花吹雪を作って、若葉の間に実が結びかけてゐるけれど」(出典:太政官(1915)〈上司小剣〉三)

ゆす・ぶ【結】

  1. 〘 他動詞 バ四段活用 〙 「むすぶ(結)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「家(いは)の妹ろ我(わ)を偲ふらし真結(ゆす)ひに由須比(ユスヒ)し紐の解くらく思へば」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四二七)

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