頼り(読み)タヨリ

デジタル大辞泉 「頼り」の意味・読み・例文・類語

たより【頼り/便り】

(頼り)何かをするためのよりどころとして、たよっているもの。頼み。「地図を―に家を探す」「兄を―にする」
(便り)何かについての情報手紙。知らせ。「―が届く」「風の―に聞く」
縁故。てづる。「―を求めて上京する」
都合のよいこと。便利なこと。
「凄涼たる夜色…落ち行くには―よしと」〈竜渓経国美談
あることをするきっかけ、手がかり。
「彼の幽玄なる仏道をも窺い見るべき―となる」〈逍遥小説神髄
つくりぐあい。配置
簀子すのこ透垣すいかいの―をかしく」〈徒然・一〇〉
[類語](2音信音沙汰沙汰手紙書簡書信書状書面紙面信書私信私書しょ一書手書親書手簡書札しょさつ尺牘せきとく書牘しょとく雁書がんしょ雁信がんしん消息ふみ玉章たまずさレター封書はがき絵はがき郵便

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精選版 日本国語大辞典 「頼り」の意味・読み・例文・類語

た‐より【頼・便】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「た(手)よ(寄)り」の意 )
  2. [ 一 ] 助けや、よすがとなるもの。
    1. 漠然と、すがってたのみになるものや人をいう。力になってくれるもの。よるべ。たのみ。
      1. [初出の実例]「ただこの猿どもにやしなはれて、こよなくたよりをえたる心地するもあはれなり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
      2. 「我一人の子をだに設て便(たより)と為むと思て」(出典:今昔物語集(1120頃か)四)
    2. 具体的にたのみになるもの、効果を期待するものをさしていう。
      1. (イ) 手がかり、足がかりなど、よりどころ。また、ものごとの契機・きっかけ。
        1. [初出の実例]「箭(や)を磨り、鋒を鋭くし、便(たより)の処を撰びて居りて」(出典:出雲風土記(733)意宇)
        2. 「かさね着る藤のころもをたよりにて心の色を染めよとぞ思ふ」(出典:山家集(12C後)中)
      2. (ロ) よりどころとなる資金など。よすが。
        1. [初出の実例]「更に経を可奉書一塵の便(たヨリ)(な)し。〈略〉此を売て法花経書写・供養の便と為(せ)むと云ふ」(出典:今昔物語集(1120頃か)四)
    3. たのみとしてすがれるような間柄、関係などをいう。
      1. (イ) 縁故。つて。てづる。
        1. [初出の実例]「なまほぎしたるものから、さすがに、ふみはとり伝へつべき人をたよりにて、上達部めきたる人の女、よばひけるを」(出典:平中物語(965頃)一八)
      2. (ロ) 近い関係。縁。つながり。関連。
        1. [初出の実例]「それはいまはじめてさまあしかるべき程にもあらず、もとよりのたよりにもよれるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
        2. 「すのこ、透垣のたよりをかしく」(出典:徒然草(1331頃)一〇)
      3. (ハ) 親戚。縁者
        1. [初出の実例]「私も別に血縁(タヨリ)がないから」(出典:真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉一九)
    4. 処理、とりはからい、またその時機など、主として有利と判断されるものをいう。
      1. (イ) 便利。便宜。都合。
        1. [初出の実例]「父の天皇便宜(たより)を図計(はか)りて勅賜ふこと既に畢りぬ」(出典:日本書紀(720)継体六年一二月(寛文版訓))
        2. 「便よき小嶋に姫宮を預け置、船路をかへて追付よ」(出典:浄瑠璃・国性爺合戦(1715)唐船)
      2. (ロ) 都合のよい時。よい機会。ついで。幸便。
        1. [初出の実例]「たよりごとに、ものも絶えずえさせたり」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月一六日)
      3. (ハ) 手段。方法。方便
        1. [初出の実例]「人の心をのぶるたよりなりけるをおもひいで給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角)
        2. 「あふべきたよりもなければ」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)四)
  3. [ 二 ] ( 便 ) 連絡、通信などを伝えるもの。
    1. 消息などを伝える人。使者。風や雁などを使者に見たててもいう。
      1. [初出の実例]「花のかを風のたよりにたぐへてぞ鶯さそふしるべにはやる〈紀友則〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・一三)
    2. 消息を伝えるもの。音信。手紙。
      1. [初出の実例]「かたらひつきにける女房のたよりに、御ありさまなども聞きつたふるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
      2. 「伯父や人から久々便(タヨ)りもないが」(出典:波形本狂言・木六駄(室町末‐近世初))

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