可愛い(読み)カワイイ

デジタル大辞泉 「可愛い」の意味・読み・例文・類語

かわい・い〔かはいい〕【可愛い】

[形]《「かわゆい」の音変化。「可愛い」は当て字
小さいもの、弱いものなどに心引かれる気持ちをいだくさま。
㋐愛情をもって大事にしてやりたい気持ちを覚えるさま。愛すべきである。「―・い孫たち」「出来の悪い子ほど―・い」「誰だって自分の身が一番―・い」
㋑いかにも幼く、邪気のないようすで、人の心をひきつけるさま。あどけなく愛らしい。「えくぼが―・い」「―・い声」
ほかと比べて小さいさま。
㋐物が小さくできていて、愛らしく見えるさま。「腰を掛けたら壊れてしまいそうな―・い椅子いす
㋑物事の規模が小さいさま。程度が軽いさま。ややあざけりの意を込めていう。「校内で威張っているだけだから、まだ―・いものだ」
無邪気で、憎めない。すれてなく、子供っぽい。「生意気だが―・いところがある」
かわいそうだ。ふびんである。
「明日の日中にられるげな、―・いことをしますると」〈浄・丹波与作
[派生]かわいがる[動ラ五]かわいげ[形動]かわいさ[名]
[補説]近年は用法に広がりがみられる。人に対しては、従来対象とされた子供や年少者以外にも、「かわいいおじいちゃん」のように用いられ、物に対しては、従来の小さいもの以外にも、「かわいい建物」「かわいい車」などと用いられる。弱さや小ささに限らず、好ましさや親しみを感じさせる人や物について用いる例が増えている。
[類語](1㋐)いとしいいとおしい/(1㋑)愛愛しい可愛かわいらしい愛らしい愛くるしいあどけないいじらしいしおらしいめんこい可憐かれんキュートいたいけしとやかほほえましいほおえましいほのぼのほんわか愛嬌あいきょう愛想あいそなごむなごやか憎めないチャーミング癒やし系癒やすラブリーがんぜないいとけない

かわゆ・い〔かはゆい〕【可愛い】

[形][文]かはゆ・し[ク]《「かおは(顔映)ゆし」の音変化で、2が原義》
かわいい。
「厭な犬だといわれるほど、尚―・い」〈二葉亭平凡
恥ずかしい。おもはゆい。
「いたく思ふままのこと―・くもおぼえて」〈右京大夫集詞書
かわいそうだ。気の毒だ。
「殺さんは、なほ―・し」〈今昔・二六・五〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「可愛い」の意味・読み・例文・類語

かわゆ・いかはゆい【可愛】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]かはゆ・し 〘 形容詞ク活用 〙 ( 「かわはゆし(顔映)」の変化した語 )
  2. きまりがわるい。はずかしい。
    1. [初出の実例]「髪のたそたそとして可咲気(をかしげ)なるを見に、かはゆく難為(しがたく)思へ共」(出典今昔物語集(1120頃か)二六)
  3. ( 物をまともに見ていられない意から ) あわれで、人の同情をさそうようなさまである。かわいそうだ。ふびんだ。気の毒だ。いじらしい。
    1. [初出の実例]「哀にかなしき事限りなし。先づさてまぢかく見ん事もかはゆき様なれば」(出典:発心集(1216頃か)七)
    2. 「年老い袈裟かけたる法師の、小わらはの肩をおさへて、聞えぬ事ども言ひつつ、よろめきたる、いとかはゆし」(出典:徒然草(1331頃)一七五)
  4. (女、子どもなど)愛らしい。愛らしく感じられる。また、甘えの気持をこめて愛人などをいとしいと思うさまにいう。かわいい。
    1. [初出の実例]「呉唐が子をかわゆう思ふことは鹿と人とかわることないぞ」(出典:玉塵抄(1563)一九)
    2. 「にくしとおもふも、かはゆしとおもふも、みなみづからがおもひなしなり」(出典:鉄眼禅師仮名法語(1691)三)
  5. 小さくて、やさしく扱ってやりたい気持を起こさせるさまである。好ましく小さい。かわいい。かわいらしい。
    1. [初出の実例]「蝶とんでかはゆき竹の出たりけり」(出典:俳諧・文化句帖‐補遺(1806‐11))

可愛いの語誌

( 1 )早い例は「今昔」にみられるが、同文献に「かははゆし」という語形も存在し、どちらも「…するに気がひける、恥ずかしい」などの意で用いられており、そこから「顔映ゆし」という語源が想定されている(「はゆし」は「面映ゆし」「目映ゆし」のそれと同じ)。
( 2 )「見るに忍びない」の意から気の毒、ふびんというの意が生じ、中世用例大部分はこの意で用いられている。中世後半に至って、女、子どもなど弱者への憐みの気持から発した情愛の念を示すの意を派生させ、近世以降はこの意味が優勢となる。この間、語形は「かわゆい」の変化した「かわいい」が生じ、それに伴って漢語「可愛」との関連で「可愛い」という表記がみられるようになる。
( 3 )近世後半ではふびんの意は消失し、愛らしいの意のみとなり、さらに愛すべき小さい様というの意の属性形容詞の用法も出現する。

可愛いの派生語

かわゆ‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙

可愛いの派生語

かわゆ‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

可愛いの派生語

かわゆ‐さ
  1. 〘 名詞 〙

かわい・いかはいい【可愛】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙 ( 「かわゆい」の変化した語 )
  2. あわれで、人の同情をさそうようなさまである。かわいそうだ。ふびんだ。いたわしい。
    1. [初出の実例]「罪もない父母や妻子や同産の兄弟まてつみせらるるはかわいい事ぞ」(出典:史記抄(1477)八)
    2. 「あすの日中にきらるげな、かはいひ事をしまする」(出典:浄瑠璃・丹波与作待夜の小室節(1707頃)中)
  3. 心がひかれて、放っておけない、大切にしたいという気持である。深く愛し、大事にしたいさまである。いとしい。
    1. [初出の実例]「おやのみになっては、むさひ子をもってさへかはいひに」(出典:虎明本狂言・盗人の子(室町末‐近世初))
    2. 「にくい母(おっかあ)めだの。うなうなをしてやらう。可愛(カワイイ)坊に灸(あっつ)ウすえて」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)前)
  4. 愛すべきさまである。かわいらしい。かわゆい。
    1. (イ) (若い女性や子どもの、顔や姿が)愛らしく、魅力がある。
      1. [初出の実例]「手めへに似たらさぞかはいひのが出来るだらう」(出典:人情本・春告鳥(1836‐37)三)
    2. (ロ) (子どものように)邪心がなく、殊勝なさまである。いじらしい。
      1. [初出の実例]「妻が良人に見せんが為めに飾る可愛い心や」(出典:都会(1908)〈生田葵山〉不安)
  5. (物や形が)好ましく小さい。また、小さくて美しい。かわゆい。
    1. [初出の実例]「かはいい虫が来てはさす𦜝の下」(出典:雑俳・柳多留‐九八(1828))
    2. 「軒端の可愛い氷柱」(出典:雪国(1935‐47)〈川端康成〉)
  6. とるに足りない。あわれむべきさまである。やや侮蔑を含んでいう。
    1. [初出の実例]「言は、秦に諸矦を比すれば天子の下で郡県の主君ほどの事ぞ。かわいいものぞ」(出典:史記抄(1477)五)

可愛いの語誌

→「かわゆい(可愛)」「かわいそう(可愛━)」の語誌。

可愛いの派生語

かわい‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙

可愛いの派生語

かわい‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

可愛いの派生語

かわい‐さ
  1. 〘 名詞 〙

かあい・い【可愛】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙 ( 「かわゆい」の変化した「かわいい」のさらに変化したもの。「愛」や「哀」を連想したところからの変化か ) =かわいい(可愛)和英語林集成(初版)(1867)〕

可愛いの派生語

かあい‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙

可愛いの派生語

かあい‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

可愛いの派生語

かあい‐さ
  1. 〘 名詞 〙

かわよ・いかはよい【可愛】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]かはよ・し 〘 形容詞ク活用 〙 「かわゆい(可愛)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「天下満々た小人はかはよい事よと云意也」(出典:杜詩続翠抄(1439頃)八)

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