(読み)ケイ

デジタル大辞泉 「契」の意味・読み・例文・類語

けい【契】[漢字項目]

常用漢字] [音]ケイ(漢) [訓]ちぎる
約束する。ちぎる。「契約密契黙契
割符。「契印契合
うまく合う。「契機
記号や文字をきざみつける。書いた文字。「契文/書契
[名のり]ひさ
[難読]契丹きったん

せつ【契】

中国古代の伝説上の人物。帝嚳ていこくの子で、の治水を援助したのち、帝舜の司徒となり、いんの基礎を築いたという。

けい【契】

朝鮮で、李朝時代に村落などで広く行われていた相互扶助組織。

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精選版 日本国語大辞典 「契」の意味・読み・例文・類語

けい【契】

  1. 〘 名詞 〙 朝鮮の農村で広く行なわれた相互扶助的共同組織。起源は高麗朝時代の宝(ほう)にあるとされ、李朝末期に盛んになった。

せつ【契】

  1. 中国、殷の伝説上の始祖。帝嚳(ていこく)の子で、禹の治水を助けて、帝舜の司徒となり、殷の基礎を築いたといわれる。

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普及版 字通 「契」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

(旧字)
9画

[字音] ケイ・ケツ・セツ
[字訓] きざむ・わりふ

[説文解字]

[字形] 会意
旧字はに作り、(けい)+大。は刀で(かい)形のきざみを加える意。大は人の正面して立つ形。おそらくもと人の額(ひたい)などに契刻を加えて、家内奴隷としての身分を示したものであろう。契刻を加えられた人自身が、契約の対象者であった。同じく家内奴隷を意味する童・妾は、額に辛(針)で入墨することを示す字である。入墨には絵身・黥涅(げいでつ)・刻画などの方法があり、契は刻画の方法によるものをいう。一般の契約は木に鑿歯(さくし)を加えるような方法で行われた。〔列子、説符〕に、人の遺契をえて、その鑿歯を数え、これを喜ぶ男の話がある。

[訓義]
1. 約束のしるしとして、きざむ。きざんだしるし。
2. きる、かく。
3. わりふ、てがた、ちぎる。
4. 契契(けつけつ)は苦しむさま。
5. 契(せつ)は古代王朝の商(殷)の祖。字はまた(せつ)・(せつ)に作る。

[古辞書の訓]
名義抄 カナフ・チギリ・タツ・マドカナリ 〔字鏡集〕 タユ・キザム・カナフ・チギル・オホキニチギルナリ

[声系]
〔説文〕に声として楔・など八字を収める。楔・(せつ)のような声をもつものがある。

[語系]
・楔の古音はkhyatで同声。keat、kheat、(刻)khkは声近く、みな契刻を加える意。などはその契刻を加える対象によって限定符を取る字である。

[熟語]
契愛契意・契印契押・契家・契会・契闊契勘・契亀・契機・契誼・契拠・契兄・契契・契券契交・契厚・契合・契紙・契字契舟・契書契照・契状・契心・契税契銭・契・契帯・契断・契弟・契臂・契票契符・契文・契母・契慕・契本契密・契約・契友契領
[下接語]
一契・印契・殷契・雅契・諧契・勘契・期契・偽契・旧契・衿契・券契・賢契・交契・合契・左契・宿契・書契・心契・深契・清契・盛契・託契・鉄契・同契・道契・符契・文契・密契・妙契・盟契・黙契・約契・幽契・蘭契・霊契

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改訂新版 世界大百科事典 「契」の意味・わかりやすい解説

契 (けい)

朝鮮の伝統的な相互扶助組織。高麗時代の(ほう)の伝統をひき,李朝末期に軍布契(軍布は政府が徴兵の代償として徴集した布)などの農民による自発的な納税対策として盛んになった。中国の合会や日本の頼母子(たのもし)などに類似する。農村においては村の公共事業,生産活動,共同購入,資金融資,親睦や娯楽などあらゆる目的に契の方式が採用されてきた。目的に応じて成員数,成員の属性,事業規模,運営方法,集団の永続性の点で違いがあるが,加入者の平等互恵の契約精神はいずれの契にも徹底している。既存の社会集団を基盤としてその共同事業のために採られる永続的なものと,特定の目的のために個人の任意参加によって発足し,比較的短期間に終結する契とに大別される。前者では村の共同財産の管理運営や公共事業のための洞契や,父系親族集団による共同祭祀を主目的とする門中契が代表的なもので,現在も盛んに行われている。また都市の商人の間では同業者による契が李朝時代から存在した。後者では,家庭生活で一時に多額の経費や協力を必要とする婚礼・喪礼・家屋の普請や農地の購入などに備えて組織する婚姻契・喪布契・貯蓄契などが代表的なものである。これら任意参加の契では,加入者が等額の出資をして得た資金をもとにして,貸付けや購入した農地から得る小作料などによって契資金の利殖に努め,必要に応じて契の成員に所定給付を順々に与える方式が多い。また加入者は同世代内の親しい友人が中心となって希望者を人選し,近親者を避ける傾向がある。規約を設けて契の目的と運営方法を厳格に規定して,個人の特殊な事情や影響力を極力排除するなど,平等が徹底している。任意参加の契では,親族の枠を越えた個人的な信頼関係のネットワークを基盤としており,親族内の協力では得られない契約的かつ計画的な協力関係によって家庭生活を互いに保障し合う効果が大きい。個人的な融資や親族内の援助では依存・従属関係を生む傾向があるのに対して,契方式では特定個人間にこうした関係をもたらすことなく全員の要請に応える点に特色がある。貸付け利殖を行う契は契員以外の村人にとっても金融制度として重要な役割を果たしてきたが,韓国の都市における婦人たちの金融契はその普及度と資金額とにおいて,今日なお庶民の家庭生活と事業経営にとって最も身近でかつ有効な短期融資の手段となっている。しかし一方では,こうした金融契と私債市場の根強い伝統が制度金融発展を阻害する要因ともなっている。
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契 (せつ)
Xiè

中国古代殷王室の始祖とされる伝説上の人物。黄帝の曾孫帝嚳(ていこう)の第二夫人簡狄が玄鳥(燕)の卵を飲んで妊娠し,生んだと言われる。帝舜のとき,禹の治水を助けて功があり,司徒の官に任ぜられて民を教化し,商(河南省商丘県)に封ぜられたという。殷が本来は商と呼ばれていたのはこのことによる。卜辞では確認されないが,殷代末期に,当時行われていた伝説上の人物を王系化したものであろうと考えられる。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「契」の意味・わかりやすい解説


けい
kye

朝鮮において発達した一種の相互扶助,親睦などを目的とした団体。契は朝鮮古来の慣習で,高麗時代末期から軍布契という納税団体から始るという。朝鮮王朝 (李朝) 中期以後から納税団体や同業組合だけでなく,広範に普及した。契には,(1) 村落の公益を目的とする洞契 (村落での公益事業の経営) ,松契 (村落共有山林の管理,経営) ,学契 (学校の経営) ,(2) 同族共済を目的とする宗中契 (祖先の祭祀や相互扶助) ,婚葬契 (同族の冠婚葬祭の相互扶助) ,(3) 生産の扶助を目的とする農契 (土地の共同利用,収穫の分配) のほか,(4) 営利を目的とする契,(5) 社交,娯楽を目的とする契などいろいろな種類がある。契組織はそのほとんどが自由意思によって成立する。契員は数名から数百名に達することもあり,大きな契では契長の下に金銭の出納と財産管理のための会計,掌財,財務員として有可,色掌,執事などの役員がおかれた。現在ではおもに婦女子の間で行われ,私的金融機関の一つになっている。


せつ
Xie

中国,殷王朝の始祖神。玄王ともいう。帝こくの次妃簡狄がつばめの卵をのんで生れたという (卵生説話) 。また舜や禹に仕えたという説話もある。


けい

」のページをご覧ください。

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百科事典マイペディア 「契」の意味・わかりやすい解説

契【けい】

日本の頼母子(たのもし)無尽に類似した朝鮮の互助的金融組織。共通目的達成のために地域の友人関係を基盤とし,対等・平等が鉄則である。親睦契,喪布契,婚姻契のほか,村の共同購入や資金融資・利殖のための契もある。契には,親族集団によって縦割りにされた村人たちを横に結ぶ紐帯的な機能もある。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【朝鮮】より

…中部以北の万神は,巫病にかかった人が,そのときに憑(つ)いた神を守護神(身主モムチュmomchu)とし,有名な万神の下で修業して入巫する師弟継承の形をとり,賽神においては激しい歌舞を通じて憑依(ひようい)状態になって神おろしして神託をのべることで有名である。巫堂と信者との関係は,賽神の依頼を通じて結ばれる一回契約的なものでもありうるが,より永続的な関係としては,中部以北の場合,病弱な子どものすこやかな成長を願って子どもの姓名と生年月日を書いた命橋(ミョンタリmyŏngtari)という布を万神にそなえ,万神と神親子関係を設定する。命橋によって結ばれた神子たちが,個々の万神の信者の中核をなすことになる。…

【ツバメ(燕∥玄鳥)】より

…また中国の画や詩では,ツバメとシダレヤナギとの組合せが見え,動と静の対比を通して優美な感じを与える。ちなみに,古代神話によれば,殷の祖先契(せつ)は,簡狄(かんてき)がツバメの卵を飲んで生んだという。【植木 久行】
[西洋]
 ドイツではツバメは昔から春を告げる鳥で同時に幸運をもたらし,家を守護する鳥だった。…

※「契」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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