(読み)アラレ

デジタル大辞泉 「霰」の意味・読み・例文・類語

あられ【×霰】

雲の中で雪に微小な水滴が凍りつき、白色の小さい粒となって降ってくるもの。雪霰ゆきあられ氷霰こおりあられとがある。気象用語では直径5ミリ未満が霰、5ミリ以上がひょう 冬》「呼かへす鮒売ふなうり見えぬ―かな/凡兆
料理で、小さくさいの目に切ること。また、切ったもの。「に刻む」
干飯ほしいいったもの。
霰餅あられもち」に同じ。
霰小紋」に同じ。「地の織物
蕎麦そば」に同じ。
[類語]氷雨みぞれひょう白雪はくせつ白雪しらゆきダイヤモンドダスト淡雪綿雪牡丹雪粉雪細雪締まり雪ざらめ雪小雪風花大雪豪雪どか雪吹雪吹雪く地吹雪雪嵐暴風雪ブリザード雪煙初雪新雪積雪根雪万年雪深雪しんせつ深雪みゆき残雪春雪

さん【霰】[漢字項目]

[音]サン(慣) セン(呉)(漢) [訓]あられ
あられ。「霰弾さんだん急霰きゅうさん

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精選版 日本国語大辞典 「霰」の意味・読み・例文・類語

あられ【霰】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 空中の雪に過冷却の水滴が付着した、白色不透明な、小さな粒状のもの。冬期に限るが、古くは、夏に降る雹(ひょう)を含めてもいう。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「笹葉(ささば)に 打つや阿良礼(アラレ)の」(出典:古事記(712)下・歌謡)
    2. 「人とはで葎は宿をさせれども音するものは霰なりけり〈大江匡房〉」(出典:堀河院御時百首和歌(1105‐06頃)冬)
    3. 「硝煙空に漲(みなぎ)りて、弾丸は霰(アラレ)と飛違ふ」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一六)
  3. 兜・釜、鉄瓶等の胴の表面に鋳出した小さな粒状の突起。霰星。
    1. [初出の実例]「あられの様子が、ちっと可笑いから返しやした」(出典:人情本・恋の若竹(1833‐39)初)
  4. 米粒をよく乾燥させ、細かくした糒(ほしい)をいったものを湯に浮かして飲むもの。
  5. みじん粉に砂糖を混ぜて固め、四角に切った菓子。
  6. 盆、年忌、葬式などに際し、野菜をさいの目に刻んだ供物。蓮の葉にのせて供える。あらよね。水の実。
  7. あられじ(霰地)」の略。
    1. [初出の実例]「上袴〈略〉地は小石畳 号之霰也」(出典:三条家装束抄(1200頃か))
  8. あられこもん(霰小紋)」の略。
  9. あられざけ(霰酒)」の略。
    1. [初出の実例]「これが家の酒は公儀にもあがるなる、名高きあられなどいふうるはしき物成(なる)よし」(出典:随筆・独寝(1724頃)下)
  10. あられそば(霰蕎麦)」の略。
    1. [初出の実例]「風鈴蕎麦の声かすかに遠く風につれて、『はな巻てんぷらあられでござゐ』」(出典:人情本・春告鳥(1836‐37)五)
  11. あらればい(霰灰)」の略。
    1. [初出の実例]「これは霰とふくさを折半にいたしてみたのですが、煮出すとき晩茶が少し濃すぎたやうに思はれましたのですけれど」(出典:紋章(1934)〈横光利一〉)
  12. あられもち(霰餠)」の略。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「ふしみよりあられ一ふたまいる」(出典:御湯殿上日記‐元亀二年(1571)五月二九日)
    2. 「オセンベイ屋から日に一度はこぼれたアラレと、店の内外を掃いた芥が、裏口の芥溜に捨てられる」(出典:彼女とゴミ箱(1931)〈一瀬直行〉ゴミ箱)
  13. 食品を、さいの目に切る切り方。

霰の語誌

( 1 )和名抄」「色葉字類抄」また、節用集等の辞書でも、「霰」「丸雪」とともに「雹」もアラレと訓じていて、季節を問わずアラレといったらしい。
( 2 )上代、既に「霰打つ」「霰たばしり」とその音が注目され、「和漢朗詠集」「古今六帖」では霰が歌題とされていて、「堀河百首」で冬の歌材として定着する。

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普及版 字通 「霰」の読み・字形・画数・意味


20画

[字音] サン・セン
[字訓] あられ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は散(さん)。散に飛散・散乱するものの意がある。〔説文〕十一下に「稷(しよくせつ)なり」とあり、稷(たかきび)のような大粒の雪の意。〔詩、小雅、弁〕「彼(か)のを雨(ふ)らすが如し 先づ集(な)るは維(こ)れ霰なり」というように、急激な寒冷の気によって生ずる。卜文に雨下に大粒の数点をしるすものがあるが、雹(ひよう)とも解される形で、確訓をつけがたい。

[訓義]
1. あられ。
2. 細かく切った餠、あられ。

[古辞書の訓]
名義抄〕霰 ミゾレ 〔字鏡集〕霰 アラレ・ミゾレ・アラキユキ

[語系]
霰sian、散sanは声近く、霰は散の声義をとる字である。また雪siuatも同系の語。霰が暴雪であるのに対して、雪はしずかに降るものをいう。

[熟語]
霰散・霰雪・霰雹
[下接語]
雨霰・廻霰・寒霰・急霰・驚霰・暁霰・軽霰・瓊霰・厳霰・珠霰・秋霰・集霰・雪霰・霜霰・馳霰・冬霰・雹霰・薄霰・飛霰・風霰・暮霰・鳴霰・乱霰・流霰

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改訂新版 世界大百科事典 「霰」の意味・わかりやすい解説

霰 (あられ)

あられ餅の略。こまかくさいの目などに切って乾燥した餅を,炒(い)ったり揚げたりしてふくらませ,塩,しょうゆ,砂糖などで味をつけたもの。ノリを巻いたり,トウガラシを振ったものなどもある。雛祭に供える雛あられのように糒(ほしい)を炒ったものを,この名で呼ぶこともある。文献に名が見られるのは江戸時代のはじめごろからであるが,当時もいまと同じように,のし餅や海鼠(なまこ)餅を切って作ったらしく,井原西鶴の《武道伝来記》巻一(1687)には〈搔餅(かきもち),霰餅(あられ)をきざみゐしが〉という表現が見られる。なお,日本料理ではこまかいさいの目に切ったものをあられと呼び,また,かけそばに貝柱を加えたものをあられそばというが,室町期には〈霰酒(あられざけ)〉をあられということが多かった。霰酒は奈良の特産として知られたみりんの一種で,もろみが白く残るのでこの名があるという。
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霰 (あられ)

雲の中で雪の結晶や凍結した水滴に過冷却した微小な水滴(雲粒)が次々に衝突して凍りつくと,大きさが数mmの柔らかくてもろい白色不透明の球形あるいは円錐形の氷の粒となる。これがあられ(気象学では雪あられという)で,にわか雪のときなどに音を立てて降る。あられは初冬のころ本州の太平洋沿岸地方で降ることもあるが,日本海沿岸地方では冬の間を通じて降る。これは強い寒気団の南下に伴う対流性の雲が発達してあられをもたらすからである。気象学ではあられを雪あられと氷あられに区別している。氷あられは芯は雪あられと同じだが,外側は氷の層でできているので,つぶすのが難しいくらい硬い。成因はひょう(雹)と同じである。大きさが5mm以上のものをひょうとよんでいる。
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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「霰」の解説

あられ【霰】

①小さく切った餅(もち)を乾かし、焼いたり揚げたりして、塩・しょうゆ・砂糖などで味をつけた菓子。えび・のり・ごまなどを用い、さまざまな風味を加えて作るものもある。細かい粒状に作ったものは茶漬けに用いる。◇「あられ餅」の略だが、「あられ餅」は餅を小さくさいの目に切って乾かした状態のものをいうことが多い。「かきもち」「おかき」ともいうが、「あられ」は比較的小さなものをいうことが多い。茶漬け用のものは京都で「ぶぶあられ」ともいう。
②ほしいいをいって細かくしたもの。湯に浮かせて飲む。
③野菜などを小さなさいの目に切ったもの。「あられに切る」などのように用いる。⇒あられ切り

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デジタル大辞泉プラス 「霰」の解説

石材の名。山口県美祢市で産出される大理石、美祢大理石の銘柄のひとつ

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【大理石】より

…このほかの白大理石の著名な産地は,アメリカのバーモント州,ジョージア州,ユーゴスラビアのマケドニア,台湾花蓮県などである。日本の白大理石には〈霰(あられ)〉と呼ばれる山口県美弥市産のもの(秋吉大理石)や,〈寒水〉と呼ばれる茨城県常陸太田市産のもの(寒水石)があるが,いずれも今日では産額は言うに足りない。 広義の大理石のなかで古来もっとも珍重されたのは,イタリア語でブレッチア,日本では更紗(さらさ)と呼ばれる網目模様のレキ岩状の大理石である。…

【市松模様】より

…石畳,霰(あられ)などともいわれ,幾何学模様のもっとも簡単なものとして洋の東西を問わず古くから種々のものの意匠模様に用いられている。ことに染織品の模様としては,これの土台になる裂地(きれじ)の構造が,直交する経緯(たてよこ)の糸で組織されたものであるから縞とともにきわめて織物に自然な模様として,その発生はおそらく原始時代にさかのぼるものであろう。…

※「霰」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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