手裏剣
しゅりけん
江戸時代の武具で、相手に投げ付けて殺傷する短く細い刀剣。『太平記』にみえる投げ付け用の手突き矢のように、小刀などを投げ付けたのがその祖形であろう。初め、小刀に添えた小柄(こづか)の類を称し、また臨機に小刀を投げて武器とする動作をもさし、『大阪軍記』『常山紀談』にみえる。近世以降、掌中に握って投げやすい小柄状の形が案出され、特殊な、十字形のものまでもつくられ、武芸としての手裏剣術も行われた。
[齋藤愼一]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
しゅり‐けん【手裏剣】
〘名〙 手に持って遠距離の
敵に投げつける武器。臨機に使用する小刀類と、
武術として用いるために作った先とがりの十字手裏
剣の類がある。
※室町殿日記(1602頃)二「十字手裏剣沓はう身などいふ兵法の術をつくし切てまはり給へは
手先にむかふ兵なかりけり」
しり‐けん【手裏剣】
〘名〙 「しゅりけん(手裏剣)」の変化した語。
※かた言(1650)四「手裏劔をしりけん」
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手裏剣【しゅりけん】
手で敵に投げつける小剣。脇差,小柄(こづか)なども用いるが,18世紀後半に釘(くぎ)形や針形のものが生まれて柳生流,根岸流,白井流などの手裏剣術が流行した。回転させて投げつける十字手裏剣もあった。
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しゅりけん【手裏剣】
小柄(こづか)や小型の刃物を投げて敵を刺撃する武術の一種。後世,投げる武器そのものを手裏剣ともいった。戦技としてみた場合,小型の刃物などを敵に投げつけて,敵を傷つけたり,自分の危難を逃れようとする技法は古くからあった。これは別の技法として打根(うちね)(小さい矢を投げる技法)の発達をみた。手裏剣は文字どおり,手のうちに入るほどの武器として独特の技法のものとなった。したがって古くから行われていた太矢,脇指,小柄,針などを投げて攻撃する技法はすべて手裏剣技法に含まれるが,手裏剣として武器の形がほぼ決まり,〈手裏剣〉という用語が生まれるのは室町時代末期である。
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