デジタル大辞泉
「刀」の意味・読み・例文・類語
とう〔タウ〕【刀】
1 かたな。刀剣。「刀を構える」「日本刀」
2 解剖・手術などに使う小刀。メス。
「渠が―を下すべき貴船伯爵夫人の手術をば」〈鏡花・外科室〉
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かた‐な【刀】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 「な」は「刃」の古語。片刃の意 )
- ① 片刃にこしらえた武器。
- [初出の実例]「甲二領、金餝の刀(カタナ)二口、銅の鏤鍾三口、五色の幡(はた)二竿(さを)」(出典:日本書紀(720)欽明二三年八月(北野本訓))
- ② 太刀の短いもの。腰刀。
- [初出の実例]「則ち清彦忽に刀子(カタナ)は、献(たてまつ)らじと以為(い)ひて」(出典:日本書紀(720)垂仁八八年七月(熱田本訓))
- 「袖の下より刀を抜いて、偸(にはか)に腹に突立て」(出典:太平記(14C後)一〇)
- ③ 小さな刃物。きれもの。〔十巻本和名抄(934頃)〕
- [初出の実例]「まゐりものは、かたな・まないたをさへ、御まへにて、てづからといふばかりにて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
- ④ 近世、脇差(わきざし)に添えてさす大刀。これと脇差とをあわせて大小という。
- [初出の実例]「われ三代の刀うつ鍛冶〈李下〉 永録は金乏しく松の風〈仙化〉」(出典:俳諧・鶴のあゆみ(1735))
- [ 2 ] 謡曲。四番目物。廃曲。作者不詳。別名「石子積」「笈捜(おいさがし)」。刀の兵衛家次の子で羽黒山にいる卿の殿は、継母の陰謀で刀を盗んだと疑われて、石子積にされそうになるが、前非を悔いた継母の告白で助かる。
とうタウ【刀】
- 〘 名詞 〙
- ① かたな。刀剣。
- [初出の実例]「堅い木を一と刻みに削って〈略〉其の刀(タウ)の入れ方が如何にも無遠慮であった」(出典:夢十夜(1908)〈夏目漱石〉第六夜)
- [その他の文献]〔春秋左伝‐襄公三一年〕
- ② 解剖や外科手術に用いる小刀。メス。
- [初出の実例]「渠が刀(タウ)を下すべき、貴船伯爵夫人の手術をば」(出典:外科室(1895)〈泉鏡花〉上)
- ③ =とうせん(刀銭)
- [初出の実例]「緑雨から古銭の講釈を聞くことになった。〈略〉緑雨は系統的に刀(トウ)、布などの話から始めた」(出典:杏の落ちる音(1913)〈高浜虚子〉一五)
- [その他の文献]〔漢書‐食貨志・下〕
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普及版 字通
「刀」の読み・字形・画数・意味
刀
常用漢字 2画
[字音] トウ(タウ)
[字訓] かたな・はもの
[説文解字]
[甲骨文]
[字形] 象形
刀の形。〔説文〕四下に「兵なり。象形」とあり、兵とは武器をいう。左右両刃は剣。刀は一刃、上部に握環がある。のち通貨にその形を用いて刀銭・刀幣という。また簡札を削るのに用いたので、書記のことを刀筆の吏という。
[訓義]
1. かたな、はもの。
2. 刀銭、刀幣。
3. (とう)と通じ、小舟。
[古辞書の訓]
〔和名抄〕刀 劍に似て一なるを刀と曰ふ。大刀、太知(たち)、小刀、賀太奈(かたな)/刀子 楊氏語抄に云ふ、刀子、賀太奈(かたな) 〔名義抄〕刀 カタナ・フネ/太刀 タチ/小刀 カタナ/刀 ヨコハギ/短刀 ノダチ/細刀 ホソダチ/剪刀 モノタチガタナ・ワル/竹刀 アラビヱ/刀 チラシ/刀 カタナモテケヅレリ 〔字鏡集〕刀 カタナ・ミネ・サク
[部首]
〔説文〕刀部に六十二字、〔新附〕四字を属し、(刃)・も同系。〔玉〕刀部には百九十六字を属する。
[声系]
〔説文〕に刀声として・召二字を収め、また召声の字二十四字がある。は〔玉〕にみえる。召は刀と声義の関係なく、刀形の部分は人の形。神おろしをして神霊の降下する意。招くを召といい、降下することを各という。
[語系]
刀・tは同声。〔玉〕に「は小。形、刀に似たり」という。〔詩、衛風、河広〕「誰(たれ)か河を廣しと謂ふ 曾(すなは)ち刀を容れず」というのは、その舟である。
[熟語]
刀貨▶・刀環▶・刀鋸▶・刀魚▶・刀圭▶・刀戟▶・刀剣▶・刀鎌▶・刀光▶・刀痕▶・刀棍▶・刀▶・刀札▶・刀子▶・刀室▶・刀尺▶・刀匠▶・刀削▶・刀▶・刀仗▶・刀杖▶・刀刃▶・刀錐▶・刀泉▶・刀銭▶・刀俎▶・刀頭▶・刀把▶・刀背▶・刀瘢▶・刀筆▶・刀▶・刀布▶・刀兵▶・刀柄▶・刀幣▶・刀鋒▶・刀▶・刀墨▶・刀▶
[下接語]
一刀・鉛刀・貨刀・快刀・懐刀・揮刀・儀刀・牛刀・鎌刀・古刀・執刀・新刀・陣刀・淬刀・錐刀・尺刀・節刀・剪刀・銭刀・奏刀・操刀・霜刀・大刀・帯刀・単刀・短刀・竹刀・抽刀・長刀・剃刀・刀・鈍刀・把刀・佩刀・白刀・抜刀・飛刀・宝刀・木刀・磨刀・名刀・容刀・腰刀・利刀・両刀
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刀 (かたな)
広義には日本刀全体を指すこともあるが,狭義には刃を上向きにして腰にさす2尺(60.6cm)以上の刀身のもののみを刀という。これに対して,刃を下方にして腰に下げるものを太刀(たち)という。もともと刀とは《和名抄》調度部征戦具に〈似剣而一刃曰刀,都牢反,大刀太知,小刀加太奈〉とあるように,両刃に対して片刃のものを総称していたようである。しかし,記紀や《東大寺献物帳》などの用例をみると,必ずしも区別して用いられておらず,片刃のものでも剣の字をあてている場合もある。むしろ〈かたな〉は〈たち〉に対して寸法の短いものをいっており,加太奈,小刀,刀子などは同義で,みな〈かたな〉と読ませている。刀子(とうす)は《東大寺献物帳》に数例所載され,多種多様のものが正倉院に伝存しているが,これらはいずれも日常使用する小道具,装身具である。これが後に,《大鏡》の〈一尺ばかりのかたな〉,《今昔物語集》の〈八寸許(ばかり)の刀〉といった,武器として長い太刀に対する短刀と,そのまま小道具として拵(こしらえ)に組み込まれた小柄(こづか)や硯箱に入る小刀などに分化したと思われる。さらに,この短刀から,寸法が長く鐔をつけた,太刀の代りに腰にさした打刀(うちがたな)が生じた。そしてこの打刀と同形で寸法の短いもの,すなわち脇指を添えたものが大小(だいしよう)であり,江戸時代の武士の指料として武家社会に定着したのである。この大小のうちの大が前述の2尺以上の刀身をもつもので,江戸時代に作られた長いものは原則的にすべて刀ということができる。
→刀装 →日本刀
執筆者:原田 一敏
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刀
かたな
太刀 (たち) ,打刀 (うちがたな) ,脇差 (わきざし) ,短刀などの日本刀の総称。室町時代以後は打刀のみを刀と称している。金属製の長い刃物は弥生時代からあるが,通常日本刀と呼ぶ場合は,平安時代後期以後に作られた湾曲したそりをもつ鎬 (しのぎ) 造りの刀をさす。制作には硬軟2種類の鉄を組合せ,これを打延ばして成形する。原形の完成した刀身は,全体に特殊な土を塗り,刃部の土を薄く削り取って赤熱し急冷する。これによって種々の刃文が作られる。刀の切断面はほぼ縦長の菱形で,この鈍角部を鎬と呼ぶ。刀の柄 (つか) に入る部分を茎 (なかご) といい,ここに作者の銘を彫る。制作の時期により,奈良時代以前の作刀を上古刀,安土桃山時代以前の刀を古刀,江戸時代中期までのものを新刀,同末期のものを新新刀と呼んで区別する。通常 30cmまでの刀を短刀,それ以上 60cmまでを脇差,60cm以上のものを打刀または太刀と呼ぶ。打刀は刃を上に向けて腰に差し,太刀は刃を下に向けて腰に吊る。室町時代中期以降,太刀は実戦に用いられることが少い。
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刀
かたな
ものを切るのに適したように片刃にこしらえた武器。刺突用に両刃にこしらえた武器は剣という。刀身の長さが60センチメートル以上のものを太刀(たち)・刀、30~60センチメートル未満のものを脇差(わきざし)、30センチメートル未満のものを短刀とよび分ける。明治以後の海軍の長剣や短剣、巡査のサーベルの類は日本古来のものとは別種である。
[尾島兼一]
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世界大百科事典(旧版)内の刀の言及
【武器】より
…つづいて文化の先進地域であったオリエントがまず青銅器時代に入る。それは前3000年ころとされており,やがてこの新しい文化の波はヨーロッパにも押しよせて,短刀や斧,槍などの利器類を中心とする銅器,青銅器が製作される。この点は,東アジアの青銅器文化が祭祀用具を中心としていたのと,際だった違いを見せている。…
【刀剣】より
…刀は切るに便利な片刃の武器であり,剣は突くに便利な両刃の武器である。日本でも《和名抄》調度部征戦具に,刀は〈似剣而一刃曰刀〉,剣は〈似刀而両刃曰剣〉とあるように,片刃のものを刀,両刃のものを剣として,形体を区別するものであった。…
【日本刀】より
…日本固有の方法で製作された刀剣。日本刀という呼名は,日本画などと同様比較的新しく,ほぼ幕末以降のことである(中国での古い使用例としては宋代の欧陽修に《日本刀歌》の詩がある)。…
【刃物】より
…二つの面が鋭く交わる刃先cutting edgeによって,切り,削り,彫る道具の総称。剣のように身の両側に刃がつくものを諸刃(もろは)または両刃(りようば),刀のようにその片側に刃がつくものを片(偏)刃(かたは)と呼ぶ。こうした呼び分けは,日本では奈良時代以来行われ,〈かたな〉の語も片刃(〈な〉は刃の古称)に由来する。…
【武器】より
…つづいて文化の先進地域であったオリエントがまず青銅器時代に入る。それは前3000年ころとされており,やがてこの新しい文化の波はヨーロッパにも押しよせて,短刀や斧,槍などの利器類を中心とする銅器,青銅器が製作される。この点は,東アジアの青銅器文化が祭祀用具を中心としていたのと,際だった違いを見せている。…
【脇指】より
…脇差とも書く。太刀を帯びたとき,脇に指し添えたため,脇刀(わきがたな),腰刀(こしがたな)などともいう。室町時代末期以降,打刀(うちがたな)が盛行すると,打刀拵(こしらえ)と同形式の短い拵を添えるようになり,これが江戸時代に入って大小となって,大を刀,小を脇指というようになった。…
※「刀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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