(読み)ハク(英語表記)beat 英語

デジタル大辞泉 「拍」の意味・読み・例文・類語

はく【拍】[漢字項目]

常用漢字] [音]ハク(漢) ヒョウ(ヒャウ)(慣) [訓]うつ
〈ハク〉
手のひらでたたく。うつ。「拍車拍手
(「」の代用字)鼓動する。「拍動脈拍
音楽のリズム。「拍節一拍
ヒョウ〉音楽のリズム。「拍子
[名のり]ひら
[難読]拍手かしわで拍板びんざさら

はく【拍】

音楽のリズムを構成する単位。一定の時間的な間隔をもった脈拍で、その長短によりテンポが決まる。ふつう、強拍と弱拍の部分がある。ビート
モーラ
[類語]調子音調音律調性音階音程・音高・トーン拍子律動乗りリズムテンポ調べ

ひょう【拍】[漢字項目]

はく

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精選版 日本国語大辞典 「拍」の意味・読み・例文・類語

はく【拍】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形動タリ ) 手のひらを打ち合わせること。手でものをうつこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「拍(ハク)として掌(たなごころ)を鳴せば」(出典:信仰之道(1894)〈松村介石安心立命)
  3. 音楽の拍子を構成する部分。楽曲の進行に際し、一定の拍をひとかたまりにして区切ったもの。〔楽典初歩(1888)〕
  4. 音韻論上の単位。モーラのこと。→モーラ

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普及版 字通 「拍」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

(異体字)
9画

[字音] ハク
[字訓] うつ・たたく・はやし

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は白(はく)。白は手を拊(う)つときの擬声音。〔説文〕十二上に作り「拊(う)つなり」とし、百(ひやく)声とするが、〔釈名、釈姿容〕〔広雅、釈詁三〕にはみな拍に作る。拍手し、拍子をとることをいう。搏(はく)と通用するが、搏は(ふくろ)に入れたものを搏(う)つ意である。

[訓義]
1. うつ、たたく、手をたたく、手でたたく。
2. はやし、ひょうしをとる、はやしたてる。
3. ひょうし木。
4. 搏と通じ、うつ、手でうつ。

[古辞書の訓]
和名抄〕拍 今案ずるに、俗に云ふ、於布須(おふす)是れなり/拍子(箋注)按ずるに西大寺財帳に云ふ、百子一~とはち是のなり。今俗に毘牟佐佐良(ひむささら)と云ふは、蓋(けだ)し是れなり。 〔名義抄〕拍 ウツ/拍子 百シ/拍 オフス 〔立〕拍 ウツ・タタク・ナヅ 〔字鏡集〕拍 ウツ・タタク/ ウツ・ニシル

[語系]
拍peakは搏pak、拊phioと声義近く、みな、うつ、手でうつ意がある。うつときの音をとる擬声的な語であろう。

[熟語]
拍案拍肩・拍子・拍手拍掌・拍照・拍節・拍然拍塞拍弾・拍天拍拍拍板拍髀拍浮拍撫拍撲拍満拍浪
[下接語]
按拍・歌拍・曲拍・肩拍・節拍・弾拍・発拍・撫拍・舞拍・放拍・両拍

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「拍」の意味・わかりやすい解説


はく
beat 英語
Takt ドイツ語
Schlag ドイツ語
battement de mesure フランス語

人為的時間の一種である音楽的時間を構築するときの一つの方法として、「時を刻む」あるいは脈拍のように「打つ」意識をもつときの最小単位を拍という。一定の間隔で拍を連鎖させることにより時間を推し進めるかのような駆動感を与えたり、また意識的に間隔を伸縮させることによりあたかも停滞するような時間感覚をつくることもできる。さらに複数の拍をグルーピングするときに、強弱の対比(強拍・弱拍)、対構造(表間(おもてま)・裏間)、長短の対比(韻律法)などの精密な操作を組み込むことにより、拍子や拍節(はくせつ)といったリズム枠が設けられ、それは音楽、朗唱、舞踊のパフォーマンスの基礎をつくる。

[山口 修]

日本語音韻の拍

音韻論的に捕捉(ほそく)したリズムの単位、すなわち理想的条件下では互いに等時間をなすと考えられる単位をいう。拍を引き出すもっとも簡便な方法は、手拍子を打ちながら一音一音ていねいにゆっくりと発音することである。このようにすれば、「勝った」や「日本」はそれぞれカ・ッ・タ(3拍)、ニ・ッ・ポ・ン(4拍)と数えることができる。したがって、拍は音韻的音節(syllabeme)とは次元を異にする。たとえば「尾」と「王」はともに音韻的に1音節だが、拍の観点からは「尾」を1拍、「王」を2拍と分析しなければならない。

 以上の関係を具体例で示そう。


●音韻的音節と拍の関係
〔四(シ)〕
 音韻的音節 1
 拍     1
〔獅子(シシ)〕
 音韻的音節 2
 拍     2
〔四獅子(シシシ)〕
 音韻的音節 3
 拍     3
〔尾(オ)〕
 音韻的音節 1
 拍     1
〔王(オー)〕
 音韻的音節 1
 拍     2
〔勝った(カッタ)〕
 音韻的音節 2
 拍     3
〔日本(ニッポン)〕
 音韻的音節 2
 拍     4

 これから明らかなように、拍と音韻的音節は多くの場合一致するが、いわゆる「ツメル音」(ッ)、「ハネル音」(ン)、「ヒク音」(ー)、および二重母音の副音部(貝、杭(くい)、鯉(こい)などの後半部)に限り食い違いを生ずることになる。また、実用的には、いわゆる拗(よう)音節を除き、拍は仮名1文字にほぼ一致するとみることもできる。

 一方、歌曲における歌詞の配分や俳句などの韻数律、アクセントの変わり目などの点からも、拍は容易に引き出せる。滝廉太郎の『荒城の月』で〽ハ・ナ・ノ・エ・ンと「ン」にも他の拍と同等の比重が置かれ、「古池や」が5単位として認定され、さらに東京などでは一般にト┐ー(塔)、イ┐ッポン(一本)、オジ┐ーサン(お爺(じい)さん)などのように、アクセントの境が拍と拍の間に置かれる点などは、いずれも前に指摘した例となる。

 なお、拍は、日本語学の泰斗亀井孝(かめいたかし)によって提唱され、金田一(きんだいち)春彦らによって支持された術語であるが、これときわめて近い概念として服部(はっとり)四郎提唱のモーラがある。拍とモーラは、今日では多くの場合同義語として扱われているが、厳密には異なる。ただし学者間でそのとらえ方はかならずしも一様ではない。一例をあげれば、金田一春彦は、拍を世界のすべての言語に認めうる韻律上の普遍的単位とし、一方、モーラは、日本語をはじめとするごく少数の言語にしか認められないような単位であろうとしている。

[城生佰太郎]

『金田一春彦著『日本語音韻の研究』(1967・東京堂出版)』『服部四郎著『言語学の方法』(1960・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「拍」の意味・わかりやすい解説


はく
beat

音楽用語。音楽の時間的継続を分割する基本的単位。もともとは手の上下運動により規則正しい時間間隔を生じさせ,この間隔の長さにより楽曲のテンポが定められた。近代では拍子を形成する基本的単位であるとともに,その拍子のもつ固有の性格に従い,強拍弱拍など,アクセントと結びつけられている。


はく

「モーラ」のページをご覧ください。

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音楽用語ダス 「拍」の解説

拍 [beat]

拍子の単位。各小節の拍数は拍子記号で示される。2/4は2拍、3/4は3拍、4/4は4拍である

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【音節】より

…例えば,hidden aims〈隠されたねらい〉とhid names〈名前を隠した〉はいずれも音声としては[hidneimz]であるが,hidden[hidn]の[n]の方がnames[neimz]の[n]よりもプロミネンスが高いので音節を構成する成節音とされる。 ほかにステットソンR.H.Stetsonの胸拍説がある。これは呼気のとき胸の肋間筋がアコーディオンのように波打ちながら肺から息を流し出す運動を胸拍と称し,胸拍のリズムに音節を対応させている。…

【タクト】より

…元来は,音楽の拍,拍子,小節などを指す言葉。ラテン語による15~16世紀の音楽理論書では,時間的秩序の基本単位としてタクトゥスtactusという概念が用いられ,タクトの語源となった。…

【日本語】より


〔現代日本語〕
以下,世界の他の諸言語との比較という観点も含みつつ,現代日本語の主だった特色につきまず略述したのち,さらに音声・音韻,文法等個々の面に即して,やや詳しくまたある部分は体系的な記述・説明を行う。
【概説――日本語の特色】

[音声・音韻面]
 日本語では音節(拍)の構造が〈子音+母音〉を基調としているので,母音で終わる〈開音節〉の語が多い。このため,例えば英語のstrike[stráik]は1音節であるが,日本語は[str]のような子音連続や[k]のような子音で終わることを許さないので,strikeという英語を日本語の語彙の中に取り入れるためには,これらの子音の間や終りに母音ウ[ɯ]やオ[o]を添加してス・ト・ラ・イ・ク[sɯtoraikɯ]と5拍に読み替えてしまう。…

【板】より

…地域,時代,ジャンルによって形態や名称が異なるが,(1)数枚の板を同時に打ち合わせるもの,(2)1枚の板を槌(つち)などで打つもの,に大別される。また,中国では拍子を意味する楽語としても用いられる。 (1)はおもに中国,朝鮮にみられる打楽器で,拍板,拍ともいう。…

※「拍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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