(読み)そく

精選版 日本国語大辞典 「足」の意味・読み・例文・類語

そく【足】

[1] 〘名〙
① 費用。
※園太暦‐貞和三年(1347)八月八日「且任度々勅裁、以彼足沙汰之旨、重可院宣之由」
② たりること。十分にあること。不足に対して用いる。
真政大意(1870)〈加藤弘之〉下「求需する物品の足不足にある訳のものでござる」
履物の一そろい。一足
浄瑠璃・長町女腹切(1712頃)中「雪駄片足(かたし)になら草履、足(ソク)には足らぬ半七が」
利息。息。
読本・占夢南柯後記(1812)六「正月の三つある年、足(ソク)なしに借給へ」
⑤ あゆみ。ひとあし
※葉隠(1716頃)二「誰にてもそくもやるまじきと、懸らねば、鉾手は不伸」
[2] 〘接尾〙
① 足を数えるのに用いる。
※虎明本狂言・蟹山伏(室町末‐近世初)「大そく二足にして小足八そく、うぎゃうさぎゃうして心をなぐさむもののせいなり」
両足につける一対のものを数えるのに用いる。
※広隆寺文書‐貞観一五年(873)広隆寺資財帳「合袍壱領〈略〉布襪壱足、鴈鼻沓壱足・已上呉女壱人料」
③ 椅子などを数えるのに用いる。
法隆寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747)二月一一日「合漆埿机伍足。仏分壱足、法分参足、聖僧分壱足」
④ 鞠(まり)を蹴る回数や、鞠の数を数えるのに用いる。
御湯殿上日記‐文明一二年(1480)八月二五日「中院より御まり一そくまいる」

た・る【足】

〘自ラ五(四)〙
① 十分である。満ち整っている。不足がない。欠けたところがない。たりる。
古事記(712)中・歌謡「千葉の 葛野を見れば 百千(ももち)陀流(ダル) 家庭も見ゆ 国の秀も見ゆ」
落窪(10C後)四「かくたりて、あかぬ事なくよく仕うまつれば」
② 分に相応する。分にふさわしい。資格がある。また、価値がある。たりる。
源氏(1001‐14頃)松風「たをやぎたるけはひ、御子たちといはむにもたりぬべし」
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉二四「其の行状の端正なるは人の亀鑑と為すに足る」
③ 満足する。安心する。
万葉(8C後)二・二二〇「天地 日月と共に 満(たり)行かむ 神の御面と」
④ 一定の数量に達する。また、長ずる。
※万葉(8C後)一六・三八四一「仏造る真朱(まそほ)(たら)ずは水渟る池田朝臣(あそ)が鼻の上を穿れ」
※源氏(1001‐14頃)薄雲「やうやう御よはひたりおはしまして、何事もわきまへさせ給ふべき時に至りて」
⑤ 頭の働きがすぐれている。たりる。下に打消の語を伴って用いる。→たらぬ
慶長見聞集(1614)六「此者万にたらざりけるゆへ、皆人ばか山田と名をよべば」

た・りる【足】

〘自ラ上一〙 (四段活用動詞「たる(足)」から転じて、近世頃から江戸で使われるようになった語)
① 数量や分量などが必要なだけある。十分である。
※大淵代抄(1630頃)二「まだ吹毛の金性が残り磨きがたりぬ」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「まだ足(タリ)ねへからモット酒買ってこいだ」
② 価値がある。ねうちがある。
※ヰタ・セクスアリス(1909)〈森鴎外〉「そこいら中にある小説は此要求を充たすに足りない」
③ 頭の働きがすぐれている。才能がある。下に打消の語を伴って用いる。→たりない
※雑俳・柳多留拾遺(1801)巻一三上「ちとおたりなされぬ方と熊野はいひ」
④ 間にあう。役にたつ。
※いさなとり(1891)〈幸田露伴〉六二「口で言ふてから用の足りるやうな迂濶(うすのろ)いことでは役にたたぬ」

た・す【足】

〘他サ五(四)〙
① ある数量にさらに数量を加える。二つ以上の数量の和をつくる。また、足りない分をおぎなう。
※書紀(720)天武一三年閏四月(北野本訓)「則ち馬兵并て当身の装束(よそひ)の物、務めて具に儲(そな)へ足(タス)
※日葡辞書(1603‐04)「カズヲ tasu(タス)、または、taita(タイタ)
② こまかい仕事や用件を行なう。用事をする。用をすます。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「宿元の用事も足(タ)さずに」

あ【足】

〘名〙 「あし」のこと。上代には単独形も見られるが、多くは「足卜(あうら)」「足掻(あがき)」「鐙(あぶみ)」「足結(あゆい)」などのように、熟した形で使われた。
※万葉(8C後)一四・三三八七「安(ア)の音せず行かむ駒もが葛飾(かづしか)の真間(まま)の継橋やまず通はむ」

たり【足】

〘名〙
① (動詞「たる(足)」の連用形の名詞化) たりるように補うもの。たしまえ。たし。
※玉塵抄(1563)四一「貂の皮がたらぬほどにたりに狗の尾をつぎにしたぞ」
② 静岡県蒲原の海でとれる鮫(さめ)の異名。〔随筆・一話一言(1779‐1820頃)〕

たし【足】

〘名〙 (動詞「たす(足)」の連用形の名詞化) たすこと。増し加えること。また、不足を補うのに役立てるもの。不足の補い。多足(たそく)
※虎寛本狂言・磁石(室町末‐近世初)「路銭のたしに致さうと存してほそものを用意致いた」

たらわ・す たらはす【足】

〘他サ四〙 (動詞「たらう(足)」の他動詞形) 足りるようにする。十分にする。いっぱいにする。満足させる。
※万葉(8C後)一三・三二七六「もののふの 八十の心を 天地に 思ひ足橋(たらはし)

あいや【足】

〘名〙 あし、また、歩くことの意の幼児語。あいよ。あんや。あんよ。ああいや。
※俳諧・懐子(1660)八「あなおさなや、敷島の直なる道にはあいやをもせず、筑波の正しき事にはがてんがてんをもせで」

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デジタル大辞泉 「足」の意味・読み・例文・類語

そく【足】[漢字項目]

[音]ソク(呉) [訓]あし たりる たる たす
学習漢字]1年
〈ソク〉
あし。くるぶし、または、ももから下の部分。「足下足跡下足手足蛇足纏足てんそく土足
あしで進むこと。歩み。「遠足快足禁足駿足しゅんそく長足鈍足発足
人材。「高足俊足
十分にある。たりる。また、そのようにする。たす。「具足充足不足補足満足まんぞく
〈あし〉「足跡足軽素足手足出足船足
[名のり]たり・なり・みつ・ゆき
[難読]足掻あが足利あしかが跑足だくあし足袋たび裸足はだし百足むかで

あし【足/脚/肢】


㋐動物の、胴体から分かれ、からだを支えたり歩行に使ったりする部分。「―が長い」
㋑くるぶしから先の部分。「―が大きい」
物の下・末にあたる部分。
㋐物の本体を支える、突き出た部分。また、地面に接する部分。「机の―」
㋑(脚)漢字を構成する部分で、上下の組み合わせからなる漢字の下側の部分。「照」の「灬(れっか)」、「志」の「心(したごころ)」など。
㋒数学で、ある一点から直線または平面に垂線をおろしたときの、その直線・平面と垂線との交点。
㋓船の、水につかる部分。

㋐歩くこと。走ること。また、その能力。「―を速める」「―の速い選手」
㋑雨・雲・風などの動くようすを足に見立てていう語。「細い雨の―」
行くこと。また、来ること。「客の―がとだえる」
移動の手段としての交通機関。乗りもの。「―の便がいい」
《「晋書」魯褒伝の「足無くして走る」から》金銭。ぜに。多く「おあし」の形で用いる。「お―が足りない」
「多くの―を賜ひて」〈徒然・五一〉
もちなどの粘り。「―の強い餅」
損失。欠損。また、借金。
「おっしゃる通り―だらけで江戸に居られず」〈伎・音聞浅間幻灯画〉
足金物あしかなもの
10 (足)過去の相場の動きぐあい。
[補説]哺乳動物には2本の前肢と2本の後肢があるが、ヒトでは前肢を上肢(手)、後肢を下肢(足)という。骨盤の下から足首までを「脚」(leg)、くるぶしから先を「足」(foot)と書いて区別することがある。
[類語](1あんよ/(3歩み歩行徒歩あんよ

あ【足】

《上代語》あし。
「―の音せず行かむ駒もが」〈・三三八七〉
[補説]多くは「あがき(足掻き)」「あゆい(足結)」など、他の語と複合して用いる。

そく【足】

[接尾]助数詞。両足に履くひとそろいの物を数えるのに用いる。「靴二

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「足」の意味・わかりやすい解説


あし
foot

動物の体に付属した歩行のための器官。肢,脚とも書く。無脊椎動物の,ことに体節ごとに足をもつものでは変化して,腕,触角,顎などになることがある。脊椎動物の肢は外肢といい,魚類の偶鰭から進化したと考えられ,魚類の胸鰭と他の脊椎動物の前肢,腹鰭と後肢 (鳥類の肢) は相同である。肢のうち地面につく部分だけを足 foot,その他の部分を脚 legと区別する。無脊椎動物では,環形動物のなかに体壁が左右に突出して疣 (いぼ) 足となるものがある。節足動物の肢はこの疣足が発達したもので内肢,外肢に分化し,いずれも歩行,遊泳に用いられる運動器官。コケ植物,シダ植物,種子植物の胚の柔組織の一部が配偶体に接した部分も足と呼ぶ。

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栄養・生化学辞典 「足」の解説

 かまぼこなど,練り製品のテクスチャー,特に弾力性を表す指標.硬さや弾力,歯ざわりなどを総合した指標であるが,数量的に表示することが難しい.

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世界大百科事典内のの言及

【無足人】より

…(1)無足,無足の仁,無足の輩,無足の族(やから),無足衆ともいう。日本中世で主従関係を結びながら知行する所領,所帯を与えられていない下級の家臣。…

※「足」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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