(読み)フタ

デジタル大辞泉 「蓋」の意味・読み・例文・類語

ふた【蓋】

物の口にあてがってふさぐもの。「なべをとる」
サザエタニシなどの貝の口を覆うもの。
スッポンのこと。
「江戸ぢゃあね、すっぽんをしゃれて―といひやすよ」〈滑・浮世風呂・二〉
[下接語](ぶた)上げ蓋入れ子蓋印籠いんろう内蓋えら押し蓋落とし蓋替え蓋かさかぶせ蓋後家蓋差し蓋すずり外蓋じ蓋共蓋中蓋なべ二重蓋火蓋広蓋薬籠やくろう両蓋割り蓋

がい【蓋】[漢字項目]

常用漢字] [音]ガイ(慣) [訓]ふた おおう かさ けだし
上から覆いかぶせる。「蓋世
覆い。ふた。かさ。「円蓋口蓋頭蓋ずがい・とうがい天蓋無蓋有蓋
文頭にかぶせて、推測することを表す語。おもうに。けだし。「蓋然性
[補説]「盖」は俗字

がい【蓋】

《「かい」とも》
[名]仏語
人間善智善心を覆い隠すもの。すなわち、煩悩
法会のとき、高僧歩行に際し、その上にかざす笠状のもの。
仏像導師高座を覆い飾る天蓋。
[接尾]助数詞。笠または笠状のものを数えるのに用いる。「犬笠一

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精選版 日本国語大辞典 「蓋」の意味・読み・例文・類語

かい【蓋】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( おおうものの意 )
    1. 仏像などの上部のおおい。また、仏像、高僧、貴人などに後方からさしかけたり、天井からつるしておおう大きなかさ状のもの。きぬがさ。天蓋。懸蓋
      1. [初出の実例]「何日何時朝魏闕、忘言傾蓋褰煙塵」(出典:性霊集‐三(835頃)与新羅道者化来詩)
      2. [その他の文献]〔釈氏要覧‐中〕
    2. 仏語。煩悩(ぼんのう)人知をおおい、くらくすること。→五蓋
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 ( 「がい」とも ) 笠または笠状のものを数える時に用いる助数詞。
    1. [初出の実例]「女使用、白縑四疋〈略〉竹大笠一蓋」(出典:延喜式(927)一五)

ふた【蓋】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物の口をおおいふさぐもの。
    1. [初出の実例]「虱い若出でば、蓋(フタ)を作りて塞ぐ応し」(出典:小川本願経四分律平安初期点(810頃))
  3. サザエ、タニシなど巻き貝類の口をおおうもの。〔本草和名(918頃)〕
  4. すっぽん(鼈)」の異名。〔俚言集覧(1797頃)〕
  5. かさぶた。
    1. [初出の実例]「是は天狗殿の灸のふたじゃ」(出典:咄本・軽口露がはなし(1691)一)
  6. すずりぶた(硯蓋)
    1. [初出の実例]「『ヲイヲイ今のふたと三つつみをだしなよ』〈ふたとはすすりぶたをしゃれてかくいふ〉」(出典:洒落本・仕懸文庫(1791)二)

がい【蓋】

  1. 〘 名詞 〙かい(蓋)

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普及版 字通 「蓋」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 13画

(旧字)
14画

[字音] ガイ・コウ(カフ)
[字訓] おおう・ふた・けだし

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は盍(こう)。盍は器物に蓋をする形。その声義を承ける。〔説文〕一下に「(とま)なり」とあり、ちがやの類。屋根を蓋うのに用いる。

[訓義]
1. おおう、おおい。
2. ふた、ふたする。
3. とま。の別名。
4. 何不の合音。なんぞ~せざる。
5. 発語。けだし、なお。

[古辞書の訓]
和名抄〕蓋 岐沼加散(きぬがさ) 〔名義抄〕蓋 オホフ・フタ・フク・カフル・キヌガサ・ケダシ・オホムネ

[語系]
蓋katは會(会)huatと声近く、加・架・駕・枷keaiと声義の通ずるところがあり、みな加上の意がある。

[熟語]
蓋以・蓋謂・蓋印・蓋屋・蓋裹・蓋瓦・蓋棺・蓋巾・蓋闕・蓋愆・蓋障・蓋壌・蓋世・蓋積・蓋然・蓋蔵・蓋戴・蓋頭・蓋・蓋・蓋冒・蓋抹・蓋笠・蓋廬・蓋老
[下接語]
円蓋・掩蓋・華蓋・冠蓋・穹蓋・傾蓋・車蓋・遮蓋・蓋・大蓋・天蓋・覆蓋・籠蓋

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【傘】より

…直接あたまにかぶる笠と区別するため〈さしがさ〉ともいう。しかし,傘と笠は関係深く,さらに,仏像の上に懸垂される天蓋や,宮廷の儀式に用いた〈きぬかさ〉とも共通する面がある。 中国の神話によれば,黄帝が戦いの際,五色の雲が花の形になって頭上にとどまったとき戦況が一変し勝利を得たので,これにちなんで華蓋をつくり,以後つねにかざしたという。…

【傘】より

…直接あたまにかぶる笠と区別するため〈さしがさ〉ともいう。しかし,傘と笠は関係深く,さらに,仏像の上に懸垂される天蓋や,宮廷の儀式に用いた〈きぬかさ〉とも共通する面がある。 中国の神話によれば,黄帝が戦いの際,五色の雲が花の形になって頭上にとどまったとき戦況が一変し勝利を得たので,これにちなんで華蓋をつくり,以後つねにかざしたという。…

【天蓋】より

…仏像の頭上にかざす蓋(きぬがさ)をいう。天空にあり,しかもつねに仏の頭上にあるところから華蓋,宝蓋,懸蓋などとも呼ばれる。…

【箱】より

… それらの形状は長方形,正方形のものが多く,多角形,円形など,内容品の形状によってさまざまにつくられた。箱の形式は蓋の構造によって名づけられる。桟(さん)蓋,挿(さし)蓋,被(かぶせ)蓋,印籠(いんろう)蓋(合口造ともいう)とあり,底の形式に平底,上げ底,さらに台や脚をつけたものなどがある。…

※「蓋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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