跳ねる(読み)ハネル

デジタル大辞泉 「跳ねる」の意味・読み・例文・類語

は・ねる【跳ねる】

[動ナ下一][文]は・ぬ[ナ下二]
勢いよくとび上がる。躍り上がる。「川面に魚が―・ねる」「驚いた馬が―・ねる」
液体などがはじけてとび散る。「揚げ物の油が―・ねる」「炭がぱちぱちと―・ねる」
活気があって動き回る。また、おてんばである。
「お駒とて少し―・ねたる三五の少女は」〈蘆花不如帰
芝居などで、その日の興行が終わる。芝居小屋外囲いむしろを上の方へはね上げたところからいう。「芝居が一〇時に―・ねる」
芝居などで、観客の入りがよくなる。当たりをとる。
「今日の催しはきっと―・ねるだらう」〈滑・八笑人・二〉
[類語](1跳ぶジャンプ跳ね返る跳ね返す跳ね上がる跳ね上げる躍る躍り上がる/(2飛び散るはじけるはぜるほとばしる弾む/(4終わる済む片付く上がる引ける終了する完了する完結する結了する終結する終決する終止する終息する閉幕する幕になる幕を閉じるちょんになるけりが付くかたが付く

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精選版 日本国語大辞典 「跳ねる」の意味・読み・例文・類語

は・ねる【跳・撥・刎】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ナ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]は・ぬ 〘 自動詞 ナ行下二段活用 〙
    1. 地面などをけって飛び上がる。おどり上がる。
      1. [初出の実例]「熊谷は馬のふと腹ゐさせて、はぬれば足をこいており立たり」(出典:平家物語(13C前)九)
      2. 「うさぎ うさぎ 何見てはねる」(出典:わらべうた・うさぎうさぎ(1751‐72頃))
    2. 水や泥などが飛び散る。
      1. [初出の実例]「雪ちんにて声有。その声、はねるたびたび、尻をひねるやうすにて」(出典:咄本・鹿の子餠(1772)雪隠)
    3. 弾力のある物が他の堅い物にぶつかって元の方へもどる。はずむ。「鞠がはねる」
    4. 文字の線やとがったものの先などが、飛び上がるように上に向く。
      1. [初出の実例]「鬚が頬骨の外へ出てる程長く跳ねて」(出典:子をつれて(1918)〈葛西善蔵〉)
    5. はじける。
      1. [初出の実例]「忽ちはちはちはちとはねる拍子に」(出典:松翁道話(1814‐46)一)
    6. 遊里などで、大いにもてる。厚遇を受ける。歓迎を受ける。〔洒落本・魂胆惣勘定(1754)〕
    7. 変化に富む。一風変わる。
      1. [初出の実例]「女良もふるめかし。なんぞはねたものがよびたいが」(出典:咄本・軽口へそ順礼(1746)一)
    8. 活発に動きまわる。
      1. [初出の実例]「なんぼきゃんでもはねてゐても、そこは女だけで」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三)
    9. 芝居などの興行が、当たりをとる。大いに受ける。
      1. [初出の実例]「きつうはねる芝居じゃのと心一ぱいの返答にて」(出典:洒落本・遊客年々考(1757))
    10. 芝居、相撲などの、その日の興行が終わる。打ち出しとなる。芝居小屋の出口の筵(むしろ)を上の方にはね上げたところからいう。また転じて、会合などが終わることにもいう。
      1. [初出の実例]「よっぴていでんぼう〈芝居でぶうぶうをいふ通言也〉をいいの今はね〈はねとはうち出しの事〉やした」(出典:洒落本・玉之帳(1789‐1801頃)一)
      2. 「会がはねたあと、みんなはそれぞれタクシーをつかまえて」(出典:札の辻(1963)〈遠藤周作〉)
    11. ( 綽 ) 囲碁で、自分の石から斜めに相手の石に接触して打ち、相手の進路を止める。
      1. [初出の実例]「イヤ休夕と申は、碁打でござりましたが、網打に出て、大きな石へ打かけ、はねても切てもとればこそ」(出典:談義本・教訓雑長持(1752)一)
    12. 相場が急に上がる。はね上がる。〔取引所用語字彙(1917)〕
    13. 歌舞伎社会の隠語で、馬鹿・間抜けのこと。
      1. [初出の実例]「能(いい)きぜんだぜ。どう見てもはね居(て)るぜへ」(出典:滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)下)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ナ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]は・ぬ 〘 他動詞 ナ行下二段活用 〙
    1. 勢いよく上げる。払い上げる。はね上げる。
      1. [初出の実例]「沖さけて 漕ぎ来る船 辺つきて 漕ぎ来る船 沖つかい いたくな波禰(ハネ)そ 辺つかい いたくな波禰(ハネ)そ」(出典:万葉集(8C後)二・一五三)
      2. 「蚊帳の裾をはねた」(出典:夏の流れ(1966)〈丸山健二〉一)
    2. ( 刎 ) 刀で切り落とす。
      1. [初出の実例]「自ら刎(クヒハネ)皇尸(みかはね)の側に死ぬ」(出典:日本書紀(720)安康元年二月(図書寮本訓))
      2. 「その弟左衛門尉師平、郎等三人、同く首をはねられけり」(出典:平家物語(13C前)二)
    3. とび散らす。はじきとばす。はねとばす。はねのける。
      1. [初出の実例]「むまの上にて無手(むんず)とくみ、両馬があひにどうとおつ。〈略〉ゑいやとはぬれはころりところび」(出典:虎明本狂言・文蔵(室町末‐近世初))
      2. 「その晩、バイクにはねられて」(出典:階級(1967)〈井上光晴〉一〇)
    4. 取り除く。取り払う。除外する。また、計算などで端数を捨てる。
      1. [初出の実例]「一文はねて六文にして」(出典:浄瑠璃・丹波与作待夜の小室節(1707頃)中)
    5. 人の取り分の一部分をかすめ取る。
      1. [初出の実例]「それ者(しゃ)肝煎(きもいり)十分一をはねる」(出典:浮世草子・好色貝合(1687)下)
    6. 断わる。拒否する。拒絶する。はねつける。
      1. [初出の実例]「そんな阿呆ぬかす客は、はねてはね散らかせ」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)五)
    7. 検査や試験で不合格にする。
      1. [初出の実例]「まづく行ったら身体検査ではねられて」(出典:煤煙の臭ひ(1918)〈宮地嘉六〉一)
    8. ( 撥 ) 仮名で「ん」「ン」と表記される音で発音する。撥音(はつおん)で言う。
      1. [初出の実例]「はねたる文字、入声の文字のかきにくきなどをば、みなすててかく也」(出典:無名抄(1211頃))
    9. 文字の線の先を書く時に、筆を止めずに、筆の先を上げるようにして書く。
      1. [初出の実例]「ジヲ hanete(ハネテ) カク」(出典:和英語林集成(再版)(1872))

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