精選版 日本国語大辞典「鶴」の解説
つる【鶴】
〘名〙
① ツル科の鳥の総称。南アメリカを除く世界に分布し、一四~二八種ある。体長八〇~一五〇センチメートルと大形で、いずれもくちばしが長く、くびとあしが長い美しい体型をしている。飛翔(ひしょう)時には、くびとあしを前後に伸ばし、ゆっくり下へ羽ばたき、早く強く翼を上に戻す。雌雄いっしょに行動し、鳴き声は鋭い。湿原や草地にすみ、サギ類のように樹上に止まることはない。松上の鶴といわれているのはコウノトリを誤認したものである。雑食性で、穀類、草の葉・実、ドジョウなどの小魚、昆虫、カエル、トカゲなどを食べる。日本では、北海道の釧路・根室で繁殖するタンチョウ、山口県周南市・鹿児島県出水平野に渡来するナベヅル、同じく出水平野に渡来するマナヅルが見られ、いずれも特別天然記念物とされている。この他に、クロヅル・カナダヅル・ソデグロヅル・アネハヅルなどがまれに飛来し、動物園ではアフリカ産のカンムリヅルなども飼育されている。古来、その端正な姿態から神秘的な鳥とされ、カメとともに長寿の象徴となり、吉祥の鳥ともされる。たず。《季・冬》
▼つる渡(わた)る《季・秋》
▼つる帰(かえ)る《季・春》 〔新撰字鏡〕
② 紋所の名。①をかたどったもので、鶴の丸、向い鶴、折鶴、三つ鱗鶴などがある。

③ 「つるはし(鶴嘴)」の略。
※雑俳・柳多留‐六〇(1812)「蓬莱の地をかためるも鶴と亀」
④ 「おりづる(折鶴)」の略。
※雑俳・柳多留‐一七(1782)「あいそうに嫁はつるだのお舩だの」
⑤ 白髪のたとえ。
※海道記(1223頃)序「頭上には頻に駭かす老を告る鶴」
⑥ 鹿児島県の桜島で、正月一四日に、藁と根引の真萱で①の形を一対作った飾りのこと。
[語誌]「万葉集」には鳥の「つる」の用例は見られないが、助動詞「つ」の連体形「つる」に「鶴」の字をあてている例がある。したがって、歌語としてはもっぱら「たづ」が用いられ、「つる」は俗称であったと思われる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報