デジタル大辞泉
「七十二候」の意味・読み・例文・類語
しちじゅうに‐こう〔シチジフニ‐〕【七十二候】
1 二十四節気の各節気をそれぞれ三つに分けたもの。
2 72句からなる連歌・連句の一形式。懐紙の初表8句、初裏14句、二の表・裏と名残の表に各14句、名残の裏8句を書き連ねたもの。
[補説]1は、日本では具注暦などに中国渡来のものがそのまま記されていたが、貞享暦作成の際に日本の気候に合うよう改められた。例えば、春分は玄鳥至(ツバメが南から来る)・電乃発声(雷鳴がとどろき始める)・始電(稲光が初めて光る)の三つに分けられていたものが、日本では雀始巣(スズメが巣をかける)・桜始開(サクラの花が咲き始める)・雷乃発声(雷鳴がとどろき始める)とされる。
七十二候(明治の略本暦による)
二十四節気 | 日取り(頃) | 七十二候 |
立春初候 | 2月4日~2月8日 | 東風解凍 |
立春次候 | 2月9日~2月13日 | 黄鶯睍睆 |
立春末候 | 2月14日~2月18日 | 魚上氷 |
雨水初候 | 2月19日~2月23日 | 土脉潤起 |
雨水次候 | 2月24日~2月28日 | 霞始靆 |
雨水末候 | 3月1日~3月5日 | 草木萌動 |
啓蟄初候 | 3月6日~3月10日 | 蟄虫啓戸 |
啓蟄次候 | 3月11日~3月15日 | 桃始笑 |
啓蟄末候 | 3月16日~3月20日 | 菜虫化蝶 |
春分初候 | 3月21日~3月25日 | 雀始巣 |
春分次候 | 3月26日~3月30日 | 桜始開 |
春分末候 | 3月31日~4月4日 | 雷乃発声 |
清明初候 | 4月5日~4月9日 | 玄鳥至 |
清明次候 | 4月10日~4月14日 | 鴻雁北 |
清明末候 | 4月15日~4月19日 | 虹始見 |
穀雨初候 | 4月20日~4月24日 | 葭始生 |
穀雨次候 | 4月25日~4月29日 | 霜止出苗 |
穀雨末候 | 4月30日~5月4日 | 牡丹華 |
立夏初候 | 5月5日~5月9日 | 鼃始鳴 |
立夏次候 | 5月10日~5月14日 | 蚯蚓出 |
立夏末候 | 5月15日~5月20日 | 竹笋生 |
小満初候 | 5月21日~5月25日 | 蚕起食桑 |
小満次候 | 5月26日~5月30日 | 紅花栄 |
小満末候 | 5月31日~6月5日 | 麦秋至 |
芒種初候 | 6月6日~6月10日 | 蟷螂生 |
芒種次候 | 6月11日~6月15日 | 腐草為蛍 |
芒種末候 | 6月16日~6月20日 | 梅子黄 |
夏至初候 | 6月21日~6月26日 | 乃東枯 |
夏至次候 | 6月27日~7月1日 | 菖蒲華 |
夏至末候 | 7月2日~7月6日 | 半夏生 |
小暑初候 | 7月7日~7月11日 | 温風至 |
小暑次候 | 7月12日~7月16日 | 蓮始開 |
小暑末候 | 7月17日~7月22日 | 鷹乃学習 |
大暑初候 | 7月23日~7月28日 | 桐始結花 |
大暑次候 | 7月29日~8月2日 | 土潤溽暑 |
大暑末候 | 8月3日~8月7日 | 大雨時行 |
立秋初候 | 8月8日~8月12日 | 涼風至 |
立秋次候 | 8月13日~8月17日 | 寒蝉鳴 |
立秋末候 | 8月18日~8月22日 | 蒙霧升降 |
処暑初候 | 8月23日~8月27日 | 綿柎開 |
処暑次候 | 8月28日~9月1日 | 天地始粛 |
処暑末候 | 9月2日~9月7日 | 禾乃登 |
白露初候 | 9月8日~9月12日 | 草露白 |
白露次候 | 9月13日~9月17日 | 鶺鴒鳴 |
白露末候 | 9月18日~9月22日 | 玄鳥去 |
秋分初候 | 9月23日~9月27日 | 雷乃収声 |
秋分次候 | 9月28日~10月2日 | 蟄虫坏戸 |
秋分末候 | 10月3日~10月7日 | 水始涸 |
寒露初候 | 10月8日~10月12日 | 鴻雁来 |
寒露次候 | 10月13日~10月17日 | 菊花開 |
寒露末候 | 10月18日~10月22日 | 蟋蟀在戸 |
霜降初候 | 10月23日~10月27日 | 霜始降 |
霜降次候 | 10月28日~11月1日 | 霎時施 |
霜降末候 | 11月2日~11月6日 | 楓蔦黄 |
立冬初候 | 11月7日~11月11日 | 山茶始開 |
立冬次候 | 11月12日~11月16日 | 地始凍 |
立冬末候 | 11月17日~11月21日 | 金盞香 |
小雪初候 | 11月22日~11月26日 | 虹蔵不見 |
小雪次候 | 11月27日~12月1日 | 朔風払葉 |
小雪末候 | 12月2日~12月6日 | 橘始黄 |
大雪初候 | 12月7日~12月11日 | 閉塞成冬 |
大雪次候 | 12月12日~12月16日 | 熊蟄穴 |
大雪末候 | 12月17日~12月21日 | 鱖魚群 |
冬至初候 | 12月22日~12月26日 | 乃東生 |
冬至次候 | 12月27日~12月31日 | 麋角解 |
冬至末候 | 1月1日~1月4日 | 雪下出麦 |
小寒初候 | 1月5日~1月9日 | 芹乃栄 |
小寒次候 | 1月10日~1月14日 | 水泉動 |
小寒末候 | 1月15日~1月19日 | 雉始雊 |
大寒初候 | 1月20日~1月24日 | 欵冬華 |
大寒次候 | 1月25日~1月29日 | 水沢腹堅 |
大寒末候 | 1月30日~2月3日 | 雞始乳 |
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しちじゅうに‐こうシチジフ‥【七十二候】
- 〘 名詞 〙
- ① 陰暦で、五日を一候とし、三候を一気とし、六候を一か月とし、二十四気すなわち一年間を七二分して季候の変化を示したもの。正月の第一気「立春」に「東風解レ凍、蟄虫始振、魚上レ冰」、「立秋」に「涼風至、白露降、寒蝉鳴」、「立冬」に「水始冰、地始凍、雉入二大水一為レ蜃」とする類。〔拾芥抄(13‐14C)〕
- [初出の実例]「雲をみて楽むものよく四季七十二候の変をしるといふ」(出典:十善法語(1775)五)
- ② 俳諧で、七二句からなる連句形式。懐紙三枚に、表八句裏一四句、二の表・二の裏・名残の表各一四句、名残の裏八句、計七二句をつらねたものをいう。〔俳諧・俳諧古今抄(1730)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
七十二候
しちじゅうにこう
中国の暦で二十四節気(にじゅうしせっき)の各1気をさらに3等分して、1候をほぼ5日の3候とし、1年を72候とし、そのおのおのに太陽があるときの季節に相応する名称を付して、これを七十二候という。たとえば春分2月中の第一候を玄鳥至、第二候を電乃発声、第三候を始電という。日本でも具注(ぐちゅう)暦には記載されたが、仮名暦の頒暦には一般に記載されなかった。初めは中国渡来のままの名称で暦に記載されたが、これでは日本の時候に適合しないので、渋川春海(しぶかわはるみ)は1685年(貞享2)「貞享暦(じょうきょうれき)」施行のとき、日本に適するような名称に改めて「新制七十二候」を制定した。さらに1755年(宝暦5)宝暦(ほうれき)改暦で土御門(つちみかど)(安倍(あべ))泰邦(やすくに)によっていくらか改められたが、以後改訂もなく用いられてきた。1873年(明治6)太陽暦施行後も1883年まで略本暦には記載された。
[渡辺敏夫]
『渡辺敏夫著『日本の暦』(1976・雄山閣出版)』▽『川口謙二他著『こよみ事典』(1977・東京美術)』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
七十二候
しちじゅうにこう
中国,日本に古くから普及している季節の区分。二十四節気は太陽の黄経によって1年を 24等分したものであるが,昔中国では各気をさらに三候に細分して七十二候とし,中国の故事にちなむ名前 (獺祭魚,鹿角解など) や自然現象にちなむ名前 (東風解凍,桃始華,虹始見など) をつけて呼んでいた。前3世紀頃,中国では七十二候が完備し,それがそのまま日本の暦に採用されたが,中国と日本とでは気候が必ずしも一致せず,また動物や植物にも多少の違いがあるので,江戸時代に日本独自の本朝七十二候がつくられた。たとえば中国の獺祭魚は日本で土脈潤起,萍始生は葭始生,王瓜生は竹笋生,反舌無声は梅子黄などである。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
七十二候 (しちじゅうにこう)
Qī shí èr hòu
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世界大百科事典(旧版)内の七十二候の言及
【二十四節気】より
…現在でも通用している二十四節気はこの黄道を24等分して決められた特定の黄経の度に太陽が移動してきた時点によって日付が決定されている。 元来は置閏法によって季節を調節しても,年によっては最大1ヵ月に近い差異が生じたため,暦に二十四節気を書き込んで正確な季節を知る目印にしたわけであるが,すでに《漢書》律暦志の本文に説明されているように,前3世紀末ころに節気の間をさらに3等分して1候を決め,約5日ごとに初候,次候,末候として1年を七十二候とする方法も完備した。北魏の正光暦(520)以降の暦については正史の律暦志などに七十二候の名称が記録されてきた。…
※「七十二候」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」