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1830年代のフランスで生まれて欧米に広がった,男女同権主義に基づく女性の権利拡張の思想と運動を意味する言葉。またフェミニストは,女性および女性の権利を尊重する人の呼び名とされてきた。しかし1960年代末以来の女性解放運動のなかで,それは,性差別の克服という広い意味をもつものとされ,〈女性による人間解放主義〉という定義があたえられ,それを主張する人をフェミニストと呼ぶようになった。さらに,女性解放のそれぞれの立場を主張して,男性支配からの解放を第一義的とするラディカル・フェミニズム,マルクス主義にラディカル・フェミニズムを取り込んだマルクス主義フェミニズム,環境を重視したエコロジカル・フェミニズム,性差に注目したポストモダン・フェミニズム,黒人女性の立場から解放を求めるブラック・フェミニズムなどの呼名が登場した。
→女性解放
執筆者:水田 珠枝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
女が女であることを根拠に強いられてきた差別や従属,拘束を問題にし,そこから離脱するために構築された思想とその思想にもとづく社会運動の総称。男女間の権利や機会の不均等,地位の格差や女を劣ったものとみなす思想は古くから存在したが,それらが改善されるべきものだと認識され始めるのは「法の前での万人の平等」を説く人権思想が生まれ,にもかかわらず近代の「市民」には成人男性しか含まれていなかったという矛盾が明瞭になってからのことである。大きなうねりとしては,まずはO.ド・グージュ(『女の権利宣言』1791年)やM.ウルストンクラフト(『女性の権利の擁護』92年)らの女の市民権確立要求があり,その延長上で19世紀中葉から20世紀初頭に盛んになった女性参政権運動(第1波フェミニズム)がある。第二次世界大戦後は多くの国で選挙権や被選挙権が認められるようになるが,制度的な平等が得られても性別役割分担や「女のあるべき姿」による拘束はなくならず,結婚や家族・子育てという日常性の内部に組み込まれてきた不平等が問題にされ,性と生殖の自己決定の必要性が求められた(第2波フェミニズム)。フェミニズムという言葉が日本で定着したのは1980年代以降のことである。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…政治的に正確な表現を要求する,アメリカ合衆国における運動で,PCと略して使われることが多い。その主張は広い範囲に及んでおり,性差別に関してはフェミニズムの立場に立ち,民族問題に関しては黒人や先住民など少数派の権利を擁護して文化的多元主義を主張しているほか,環境保護を優先させ,第三世界への軍事介入に反対している。かつてラディカリズムと呼ばれていた政治的立場に近い。…
※「フェミニズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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