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フェミニズム feminism

翻訳|feminism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

フェミニズム
feminism

女性解放思想,またその思想に基づく社会運動。19世紀末から 20世紀初頭にかけての第1期フェミニズムと,1960年代以降の第2期フェミニズムの二つに大別できる。第1期フェミニズムは,近代の平等の理念に基づいた人権概念を男性だけではなく女性にも拡張することを要求し,主として婦人参政権獲得を目標として推進された。第2期フェミニズムは,性差別の根源を制度ではなく性(男性と女性の性関係を核としたあらゆる関係性)に求めたラディカル・フェミニズムの出現によって特徴づけられ,思想や学問など社会構造のすみずみにまで浸透している男性中心主義を徹底的に告発し,女性の社会的・経済的・性的な自己決定権の獲得を目標として展開された。フェミニズムは「20世紀最大の思想的事件」といわれるほどまでに成長し,大きな影響力をもつにいたっている。

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デジタル大辞泉の解説

フェミニズム(feminism)

女性の社会的、政治的、経済的権利を男性と同等にし、女性の能力や役割の発展を目ざす主張および運動。女権拡張論。女性解放論。
女性尊重主義。

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百科事典マイペディアの解説

フェミニズム

ラテン語のフェミナfemina(女性)から派生した言葉で,20世紀に入ってから広く使われ,女性運動や女性論全般を意味するようになった。そこから過去の時代にも遡って用いられるようになり,フェミニズムを女性の手になる女性解放の思想・運動と定義した場合,それは20世紀だけにとどまらない,長い歴史をもつものであることが明らかになっている(女性史)。
→関連項目アステルアンソニーイデオロギーイリガライウォーホルウルストンクラフトウルフ家庭内暴力クリステバクルーガーケイ国際婦人年ゴドウィンゴールドマン自分だけの部屋性役割セックス第二の性高群逸枝男女別学富岡多恵子日本母親大会女人芸術平塚らいてう福田英子フラーブロンテ本質主義・構成主義ミレット両性具有レズビアン連続体

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世界大百科事典 第2版の解説

フェミニズム【feminism】

1830年代のフランスで生まれて欧米に広がった,男女同権主義に基づく女性の権利拡張の思想と運動を意味する言葉。またフェミニストは,女性および女性の権利を尊重する人の呼び名とされてきた。しかし1960年代末以来の女性解放運動のなかで,それは,性差別の克服という広い意味をもつものとされ,〈女性による人間解放主義〉という定義があたえられ,それを主張する人をフェミニストと呼ぶようになった。さらに,女性解放のそれぞれの立場を主張して,男性支配からの解放を第一義的とするラディカル・フェミニズム,マルクス主義にラディカル・フェミニズムを取り込んだマルクス主義フェミニズム,環境を重視したエコロジカル・フェミニズム,性差に注目したポストモダン・フェミニズム,黒人女性の立場から解放を求めるブラック・フェミニズムなどの呼名が登場した。

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大辞林 第三版の解説

フェミニズム【feminism】

男女同権と性差別のない社会をめざし、女性の社会的・政治的・経済的地位の向上と性差別の払拭ふつしよくを主張する論。一九世紀から二〇世紀初頭の欧米諸国を中心とする女性参政権運動の盛り上がりを第一波、1960年代以後のウーマン-リブに代表される動きを第二波と区別することが多い。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フェミニズム
ふぇみにずむ
feminism

ラテン語のfemina(女性)から発生したことばであり、一般に女権拡張主義、女性尊重主義と訳される。フェミニズムは、フランス革命の理念となった人権思想の影響を色濃く受け、フランス、イギリス、アメリカなどの諸国において発達した。フェミニズムを主張する最初のまとまった著作としては、イギリスの思想家M・ウルストンクラフトの『女性の権利の擁護』(1792)があげられる。J・J・ルソーの女性観に疑問を投げかけつつ、中産階級の女性の精神的自立と経済的自立を主張したその展開には、教育・職業の機会均等、参政権獲得要求など、以後のフェミニズムが掲げた主張の萌芽(ほうが)が集約されている。
 フェミニズムには単一の理論体系があるわけでなく、基本的には、それぞれの国の歴史的特徴、情勢の影響を受け、系譜も多様に分かれる。たとえば、女性尊重主義という訳語よりも、母性尊重、母性擁護という訳語が妥当な系譜がある。それは、スウェーデンの思想家E・ケイに代表される女性解放思想である。ケイは、進化論の立場から母性の擁護を訴え、母性を破壊する資本主義社会を鋭く批判、教育、経済、政治における機会均等の実現を強く主張し、スカンジナビア諸国やドイツのフェミニズムに強い影響を及ぼした。日本でも平塚らいてうに代表される第二次世界大戦前のフェミニズムの展開にその影響がみられる。一方、19世紀中葉から20世紀初頭のアメリカやイギリスを中心とするフェミニズムは、参政権獲得に代表される法的平等を中心に展開された。一般に第一次フェミニズム(または旧フェミニズム)とよばれる。
 これに対し、第二次世界大戦後、とくに1960年代後半以降の第二次フェミニズム(または新フェミニズム)は、アメリカを中心とするウーマン・リブの影響を色濃く受けており、マルクス主義の立場にたつ「婦人論」への批判、あるいはフェミニズムとマルクス主義の統一という発想を底流に、「女性による人間解放主義」と規定され、性差に起因する政治的、経済的、社会的、文化的、心理的など、あらゆる形態の差別や不平等に反対し、その撤廃を目ざす。とりわけ、意識やライフ・スタイルに深く組み込まれた性抑圧、性差別の告発という点に特徴をもつ。
 しかし、第二次フェミニズムは、なにが女性にとってもっとも根源的な抑圧であるかという論点をめぐって、いくつかの潮流に分かれている。代表的な流れとしては、男性による女性の支配を家父長制ととらえ、これを経済体制の違いを超えて存在すると押さえるラディカル・フェミニズム、無償の家事労働を不可欠の前提として成立する資本主義的生産様式に焦点をあてるマルクス主義フェミニズム、女性の従属を多数の小さな剥奪(はくだつ)deprivationの総和とみるリベラル・フェミニズム(自由主義フェミニズム)、ラディカル・フェミニズムとマルクス主義フェミニズムの結合を目ざし、家父長制と資本主義のいずれかに焦点をあてるのではなく、家父長制は管理や法・秩序などのシステムを用意し、資本主義は経済・利潤追求のシステムを用意するとみることにより、両者の存在が今日の両性(ジェンダー)関係の形成に重要な意味をもつと押さえる社会主義フェミニズム(統合理論)などがある。フェミニズムということばは、思想と運動の双方が含まれて用いられる場合が多い。[布施晶子]
『メアリ・ウルストンクラーフト著、白井尭子訳『女性の権利の擁護』(1980・未来社) ▽エレン・ケイ著、原田実訳『婦人運動』(1924・聚英閣) ▽エレン・ケイ著、小野寺信・小野寺百合子訳『恋愛と結婚』(岩波文庫) ▽平塚雷鳥著『元始、女性は太陽であった――平塚らいてう自伝』全4冊(1971~72・大月書店) ▽一番ケ瀬康子編『入門女性解放論』(1975・亜紀書房) ▽ケート・ミレット著、藤枝澪子訳『性の政治学』(1985・ドメス出版) ▽Juliet Mitchell, Ann Oakley What is Feminism?(1986, Pantheon Books) ▽ナタリー・J・ソコロフ著、江原由美子他訳『お金と愛情の間――マルクス主義フェミニズムの展開』(1987・勁草書房) ▽落合恵美子著『近代家族とフェミニズム』(1989・勁草書房) ▽Sylvia Walby Theorizing Patriarchy(1990, Blackwell Pub.) ▽スーザン・バスネット著、進藤久美子訳『世紀末のフェミニズム――四つの国の女たち』(1993・田畑書店) ▽井上輝子他編『日本のフェミニズム』全7巻・別冊(1994~95・岩波書店) ▽江原由美子・金井淑子編『フェミニズム』(1997・新曜社)』

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世界大百科事典内のフェミニズムの言及

【ポリティカル・コレクトネス】より

…政治的に正確な表現を要求する,アメリカ合衆国における運動で,PCと略して使われることが多い。その主張は広い範囲に及んでおり,性差別に関してはフェミニズムの立場に立ち,民族問題に関しては黒人や先住民など少数派の権利を擁護して文化的多元主義を主張しているほか,環境保護を優先させ,第三世界への軍事介入に反対している。かつてラディカリズムと呼ばれていた政治的立場に近い。…

※「フェミニズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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