吉野(町)(読み)よしの

日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉野(町)」の意味・わかりやすい解説

吉野(町)
よしの

奈良県中央部、吉野郡北部にある町。1928年(昭和3)町制施行。1956年(昭和31)上市(かみいち)町と中竜門(なかりゅうもん)、竜門、中荘(なかしょう)、国樔(くず)の4村と合併。近畿日本鉄道吉野線、国道169号、370号が通じる。吉野川中流域を占め河岸段丘が発達する。農林業が行われるほか、製材銘木木工、新建材など木材工業が盛んで、関連の割箸(わりばし)、木材工芸品、樽丸製作でも知られる。町中に木材市場があり、木材の集散地でもある。吉野川北岸に細長い街村をなす上市地区は、市場(いちば)町として発達した商業中心地で町役場がある。南岸の吉野山は桜と南朝哀史で知られ、金峯山(きんぷせん)寺、吉水神社など古社寺も多く、全域が国の史跡・名勝に指定され、吉野熊野国立公園の北端部に含まれる。さらに2004年(平成16)には霊場「吉野・大峯(おおみね)」が「紀伊山地の霊場と参詣(さんけい)道」の一部として世界遺産(文化遺産)に登録された。吉野川上流の河原屋(かわらや)、飯貝(いいがい)地区には浄瑠璃(じょうるり)の『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』ゆかりの妹(いも)山と背(せ)山があり、全山原始林に覆われた妹山樹叢(じゅそう)は国指定天然記念物。さらに上流の景勝地宮滝(みやたき)地区には、縄文弥生(やよい)、飛鳥(あすか)、奈良時代の複合遺跡である宮滝遺跡(国史跡)があり、出土品は吉野歴史資料館に展示されている。国栖地区には国栖奏(そう)の古舞が伝わり、上質の国栖紙(くずがみ)を特産する。吉野川支流の津風呂川(つぶろがわ)には津風呂ダムと人造湖があり、一帯は県立吉野川津風呂自然公園となっている。面積95.65平方キロメートル、人口6229(2020)。

[菊地一郎]

『『吉野町史』(1972・吉野町)』『『増補吉野町史』(2004・吉野町)』


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