(読み)ズ

デジタル大辞泉 「図」の意味・読み・例文・類語

ず【図〔圖〕】[漢字項目]

[音](ヅ)(呉) (漢) [訓]はかる
学習漢字]2年
〈ズ〉ある枠の中にものの形をえがいたもの。「図案図画図鑑図形図示図書ずしょ図表絵図系図構図縮図製図地図付図略図
〈ト〉
絵。また、本。「図書としょ画図
地図。「版図
思いはかる。「意図
計画。はかりごと。「企図壮図雄図
[名のり]のり・みつ
難読図図ずうずうしい図体ずうたい

ず〔ヅ〕【図】

物の形や状態を描いたもの。絵図・地図・図面など。「掛け」「見取り
点・線・面が集まって一つの形を構成しているもの。図形。
物事のようす。状態。「見られたではない」
考えどおり。思うつぼ。
はかりごとの―を外させ」〈浄・矢口渡
くふう。計画。
「何にてもあたらしい思ひつき、今迄ない―を案ずるに」〈浮・敗毒散・一〉
十二律の各音階の正しい調子を書き表したもの。
当寺の楽は、よく―を調べ合はせて」〈徒然・二二〇〉

ず[接頭]

[接頭]動詞・形容詞などに付いて、とびぬけている、度外れている、などの意を添える。「抜ける」「太い」
[補説]「図」「頭」を当てて書くことが多い。

と【図】[漢字項目]

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精選版 日本国語大辞典 「図」の意味・読み・例文・類語

【図】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 人や物の形や様子などを描いたもの。絵。絵画。
    1. [初出の実例]「天竺より胎蔵界の曼陀羅の図を震旦に持来て」(出典:今昔物語集(1120頃か)六)
    2. [その他の文献]〔漢書‐芸文志〕
  3. 地図。図面。
    1. [初出の実例]「検校東大寺墾田野地并図、具件如前」(出典:東南院文書‐神護景雲元年(767)一一月一六日越中国司解)
    2. [その他の文献]〔戦国策‐燕策下・王喜〕
  4. 奈良・平安前期、全国的に作製され、民部省・国衙に保管された田地の図。耕作者と耕作状況が記載されている。
    1. [初出の実例]「捌野田里〈略〉陸坪参段拾捌歩 東寺。図一町七反東寺」(出典:承和二年東寺領国判(835))
  5. 条里制の条(じょう)の別称。八世紀頃、田地を直交する条と里(り)により地割し、一辺六町の正方形の田地の区画を作った。その一方の区画線。
    1. [初出の実例]「一図 一里三町七段百二十歩」(出典:高野山文書‐保延元年(1135)一二月二九日・某庄田畠桑并在家等検注状案)
    2. [その他の文献]〔日知録‐巻二二・図〕
  6. 光景。様子。事柄
    1. [初出の実例]「此おやしきの図は、五百八十年、万々年、御寿命長おん富貴御子孫御はんじゃう、めでたひおやしきで御ざる」(出典:虎明本狂言・居杭(室町末‐近世初))
    2. 「匡子が街を歩いたり、買物をしたりしている図を想像することも出来ない」(出典:抱擁(1973)〈瀬戸内晴美〉二)
  7. 物事の正しい基準、やり方などを書き表わしたもの。また、その基準。
    1. [初出の実例]「まづ舞曲の体拝を習ふといふは、その図(ヅ)あるべし」(出典:教訓抄(1233)七)
  8. 数学で、点、線、面などの集合でできている形。〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕
  9. 限り。際限。方図。→図(ず)がない
    1. [初出の実例]「我も又世の中の大臣共がせぬ、図にはづれた事をせん」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)四)
  10. あれこれ考えて立てたてだて。趣向。工夫。考案。計画。また、はかりごと。
    1. [初出の実例]「則ち京都へ寄られ候はば、などか思ふ図に合戦一度せでは候ふべき」(出典:太平記(14C後)二九)
  11. 予期したところ。ねらいどころ。ねらう時期。よい機会。思うつぼ。ずぼし。
    1. [初出の実例]「百の物は百、二百の物は二百に買が図のねだぞ」(出典:史料編纂所本人天眼目抄(1471‐73)六)
    2. 「とやせんかくやと思ふ内、又候工藤左衛門が富士野の狩は天の与へ、この図を外さず討取らんと」(出典:歌舞伎・夜討曾我狩場曙(1874)序)

と【図】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 絵。絵図。ず。
  3. はかりごと。計略。
  4. 中国の伝説で、伏羲氏のとき、太平の瑞祥として黄河から神秘な図形を背に描いた龍馬があらわれたというその図。八卦のもととなったとされる。河図(かと)
    1. [初出の実例]「悲哉図不出、逝矣水難留」(出典:懐風藻(751)仲秋釈奠〈藤原万里〉)
    2. [その他の文献]〔易経‐繋辞上〕

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普及版 字通 「図」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 7画

(旧字)圖
14画

[字音] ズ(ヅ)・ト
[字訓] え・えがく・はかる

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
旧字は圖に作り、囗(い)+(ひ)。は倉廩の形。圖は倉廩の所在を記入した絵図で、その耕作地を図面化したもの、いわゆる地図である。〔説文〕六下に「畫計することきなり」とし、「なり」という。〔説文〕五下を吝嗇(りんしよく)の意とするが、それは倉廩の形。その在る所を鄙という。耕作地の状況を示す地図は、その経営のもとであるから、図謀の意となる。〔左伝、襄四年〕に「を咨(はか)るを謀と爲す」とあり、〔説文〕はその意によって「畫計することきなり」としたのであろうが、〔左伝〕の文は字説とは関係がない。〔周礼、地官、大司徒〕「の土地の圖と、其の人民の數とをつることを掌る」、〔周礼、天官、内宰〕「版圖を書するの(法)を掌る」とあるのが原義。金文の〔散氏盤〕は土地の契約関係を内容とするもので、疆域画定の次第をしるしている。その銘末に「圖を(そく)王より、豆の新宮の東に受(さづ)けられたり」という。また〔宜侯(ぎこうそくき)〕に「武王・王の伐ちたまへる圖(殷の版図)を省(巡察)し、(い)でて東國の圖を省す」とあって、その版図・領域を図という。中山王墓からはその塋域図が出土しており、また馬王堆第三号漢墓からは、湘南の九疑山を含む詳細な地図、また駐軍図・街坊図などが出ている。

[訓義]
1. ず、ちず。
2. はかる、考える、計画する、経営する。
3. え、えがく、うつす。
4. 書物、図書
5. 度と通じ、のり、法度。

[古辞書の訓]
名義抄〕圖 シルス・ウツル・ハカリ・ハカル・アラハル・ハカリゴト 〔字鏡集〕圖 アラハル・カタチ・カタドル・ハカリゴト・カケルカタチ・ケガル・ウツス・ハカル・シルス

[語系]
圖da、度dakは声近く、はかる、法度の意において通ずる。圖は農耕地の経営のために、(倉廩)を書きいれた見取り図をいう。度は席をもって場所・間隔をはかる意の字である。

[熟語]
図会・図解・図・図絵・図巻・図鑑・図形・図工・図讚・図志・図写・図象・図説・図像・図牒・図諜・図簿・図様・図緯・図乙・図画・図記・図議・図結・図書・図章・図障・図讖・図籍・図全・図騰・図南・図反・図謀・図頼・図・図録
[下接語]
異図・意図・永図・英図・遠図・河図・画図・海図・絵図・企図・希図・規図・図・旧図・計図・広図・後図・洪図・皇図・構図・鴻図・志図・縮図・真図・深図・新図・陣図・星図・戦図・壮図・地図・覇図・版図・丕図・秘図・不図・負図・浮図・譜図・仏図・方図・宝図・鵬図・謀図・本図・雄図・輿図・要図・略図・良図・

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【絵図】より

…19世紀(明治前期)以前の日本での普通の地図に対する呼称。そもそもは条里制施行時代,農地の状態を表した図に〈田図〉〈文図〉があったが,条里名称などを注記した方格のみの〈田図〉を〈白図〉と呼び,方格のほか山川,湖海,道路,家屋など地形・地物を記入した〈田図〉を,〈白図〉と区別して〈絵図〉と呼んだようである。…

【讖緯説】より

…讖とは〈詭(いつわ)って隠語をつくり,予(あらかじ)め吉凶を決する〉ことで,一種の未来記,予言説である。図(と)また図讖とも呼ばれる。緯は〈よこいと〉で,〈たていと〉を意味する経に対し,経書を解説敷衍したもの。…

※「図」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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