好く(読み)スク

デジタル大辞泉 「好く」の意味・読み・例文・類語

す・く【好く】

[動カ五(四)]
人や物事に心が引きつけられる。魅力を感じる。このむ。「だれからも―・かれる」「かけ事はどうも―・かない」
恋愛感情をいだく。「―・いて―・かれて一緒になる」「―・いたどうし」
風流の道に心を寄せる。
「よき人はひとへに―・けるさまにもみえず、興ずるさまも等閑なほざりなり」〈徒然・一三七〉
好色である。多情である。
「―・きたる罪重かるべし」〈帚木
[類語]愛する恋する惚れるめる焦がれる思う慕う愛慕する思慕する恋慕する惚れこむれる見惚れる惚れ惚れ一目惚れ懸想けそう目尻を下げる思いを掛ける気がある惚れっぽい多情浮気移り気気が多い熱し易く冷め易い気移り心移り色気違いマダムキラーレディーキラー好き者助平すけべい漁色女好き男好きプレーボーイ女たらし女殺し好色好色家色好み鼻下長びかちょう手が早いちゃら浮気者艶福艶福家放蕩ほうとう蕩児とうじ遊蕩ゆうとう色魔女狂い男狂い

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「好く」の意味・読み・例文・類語

す・く【好】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行四段活用 〙
    1. 好色に振る舞う。恋に打ち込む。
      1. [初出の実例]「昔の若人は、さるすける物思ひをなんしける」(出典:伊勢物語(10C前)四〇)
    2. 風流の道に深く心をよせる。風雅の道に趣味がある。
      1. [初出の実例]「そのころいたうすいたるものにいはれ、心ばせなどある人の」(出典:枕草子(10C終)一八〇)
      2. 「哥道のはやりし時、貧しき木薬屋に好(スケ)る人有て」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)四)
    3. ( 「…に好く」の形で ) その物事に興味を持つ。愛好する。
      1. [初出の実例]「或は詩歌管絃に数奇、或転変田猟を好み」(出典:梵舜本沙石集(1283)四)
    4. 好感を持つ。愛情を感ずる。
      1. [初出の実例]「すいた男じゃ〈略〉近付にならふ」(出典:歌舞伎・傾城壬生大念仏(1702)上)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行五(四) 〙
    1. 愛着を感ずる。このむ。
      1. [初出の実例]「いづれも道をすくと云て、花やかなる方は聞えざる也」(出典:古今連談集(1444‐48頃)下)
    2. 異性に対して恋心やあこがれの気持を抱く。愛情を感じる。
      1. [初出の実例]「しかし君のシスターが好いてりゃ仕方がないさ」(出典:何処へ(1908)〈正宗白鳥〉一一)

好くの語誌

( 1 )上代の確例はない。中古においては漢文訓読体では「このむ」が、和文(なかでも散文)では「すく」が用いられた。
( 2 )中古中期までは対象となる語を格助詞で提示しないのが普通で、[ 一 ]のように、格助詞「に」で対象を示す例が見えるのは中世前期からであり、以後中世ではこの用法主流となった。
( 3 )[ 二 ]のように、格助詞「を」をとる他動詞の例は中世後期より見られ、近世期を通じて徐々に使用例を増していく。
( 4 )現代語で多用される、特定の人への愛情を表わす「すく」の使用は近世になってからで、「きらふ」との対義関係の成立がその契機と考えられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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