焦がれる(読み)コガレル

デジタル大辞泉 「焦がれる」の意味・読み・例文・類語

こが・れる【焦がれる】

[動ラ下一][文]こが・る[ラ下二]
いちずに、激しく恋い慕う。切ないまでに思いを寄せる。「長年―・れた相手と結婚する」「故郷に―・れる」
そうなりたいと強く望む。「女優に―・れる」
動詞の連用形に付いて、望むことが早く実現しないかと居ても立ってもいられないほどである意を表す。「思い―・れる」「恋い―・れる」「待ち―・れる」
焼けて焦げる。
「焼け通りて、うとましげに―・れたる匂ひなども」〈真木柱
香を強くたきしめる。
「取る手もくゆるばかりに―・れたる紅葉重もみぢがさね薄様うすやうに」〈太平記・一五〉
日光にさらされて変色する。また、日に焼けたように赤くなる。
「滝の上の御船の山のもみぢ葉は―・るるほどになりにけるかな」〈玉葉・秋下〉
[類語]愛する惚れる好くめる思う慕う恋する愛慕する思慕する恋慕する惚れこむれる見惚れる惚れ惚れ一目惚れ懸想けそう目尻を下げる思いを掛ける気がある思い焦がれる恋い焦がれる胸を焦がす惚れっぽい多情浮気移り気気が多い熱し易く冷め易い気移り心移り色気違いマダムキラーレディーキラー好き者助平すけべい漁色女好き男好きプレーボーイ女たらし女殺し好色好色家色好み鼻下長びかちょう手が早いちゃら浮気者艶福艶福家放蕩ほうとう蕩児とうじ遊蕩ゆうとう色魔女狂い男狂い

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「焦がれる」の意味・読み・例文・類語

こが・れる【焦・&JISF5A1;】

  1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]こが・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙
  2. 焼けて焦げる。
    1. [初出の実例]「熱鉄の丸を呑むとき、口に入れば、口焦(コカル)」(出典:大智度論平安初期点(850頃か)一六)
  3. 日に照りつけられて変色する。また、紅葉したり、幾度も染色したりして、火で焦げたような色になる。
    1. [初出の実例]「下紅葉秋も来なくに色づくは照る夏の日にこがれたるかも」(出典:曾丹集(11C初か))
  4. 香を焦げるほどたきしめる。
    1. [初出の実例]「紅葉重の薄様の取手もくゆる計りにこがれたるに」(出典:太平記(14C後)二一)
  5. 恋人、肉親、友人などを恋い慕う思いで胸が熱くなり、焦げるばかりになる。「漕がれる」にかけていうこともある。
    1. [初出の実例]「舟人も、たれを恋ふとか大島の、うら悲しげに声立てて焦がれ来にける」(出典:謡曲・玉葛(1470頃))
    2. 「ヲモイニ cogaruru(コガルル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  6. 自分の望んでいる状態になってみたいと強く思う。切望する。あこがれる。「流行歌手にこがれる」
    1. [初出の実例]「なににこがれて書くうたぞ」(出典:抒情小曲集(1918)〈室生犀星〉小景異情)
  7. ( 接尾語的に用いて ) 自分の望むことがなかなか実現せず、じっとしていられない気持である。「恋いこがれる」「待ちこがれる」

焦がれるの語誌

( 1 )古今六帖‐一」の「火」の項に「たく」「もゆ」「やく」などを詠みこんだ和歌と並んで「こがる」の表現も収められている。
( 2 )早く「万葉‐二六四九」に「下粉枯(したこがれ)」と恋に身を焦す比喩が見え、「後撰和歌集」以下、「思ひ」の「火」や「煙」などの縁語として使われる点は、類似の表現である「たく」「もゆ」「やく」と共通する。
( 3 )舟路によって都を離れる知人との別離を惜しむ心情を、舟と関係の深い「漕がる」と掛詞にした例も多く、「焦がれ舟」という語も生じた。→こがれしたこがれ

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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