愛する(読み)アイスル

デジタル大辞泉 「愛する」の意味・読み・例文・類語

あい・する【愛する】

[動サ変][文]あい・す[サ変]
かわいがり、いつくしむ。愛情を注ぐ。「我が子を―・する」
性愛対象として)特定相手を慕う。恋する。「―・する人と結ばれる」
とりわけ好み、それに親しむ。「音楽を―・する」
かけがえのないものとして、それを心から大切にする。「祖国を―・する」
機嫌をとる。あやす。
「よしよし、しばし―・せよ」〈平家・九〉
気に入って執着する。
「六趣に輪廻りんゑすることは、ただ一塵のたくはへをむさぼり―・するゆゑなり」〈今昔・五・一五〉
[類語](1慈しむいとおしむかわいがる愛でる寵愛ちょうあいする/(2慕う恋する愛慕する思慕する恋慕する惚れるめる焦がれる思う好く惚れこむれる見惚れる惚れ惚れ一目惚れ懸想けそう目尻を下げる思いを掛ける気がある惚れっぽい多情浮気移り気気が多い熱し易く冷め易い気移り心移り色気違いマダムキラーレディーキラー好き者助平すけべい漁色女好き男好きプレーボーイ女たらし女殺し好色好色家色好み鼻下長びかちょう手が早いちゃら男浮気者艶福艶福家放蕩ほうとう蕩児とうじ遊蕩ゆうとう色魔女狂い男狂い/(3好むでる愛好する

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精選版 日本国語大辞典 「愛する」の意味・読み・例文・類語

あい‐・する【愛】

  1. 〘 他動詞 サ行変 〙
    [ 文語形 ]あい・す 〘 他動詞 サ行変 〙
  2. [ 一 ] 人や動物に対して心が引かれる場合。
    1. 非常に気に入って、いちずにかわいがる。寵愛する。
      1. [初出の実例]「寛平の御孫なりとばかりは申しながら、人の御ありさま有識におはしまして、いづれをも村上のみかど時めかし申させ給ひしに、いますこし六条殿をばあいし申させ給へりけり」(出典:大鏡(12C前)六)
      2. 「この虫どもを朝夕(あしたゆふべ)にあいし給ふ」(出典:堤中納言物語(11C中‐13C頃)虫めづる姫君)
    2. 好意を相手への行動として示す。また、特に、なでさする。愛撫(あいぶ)する。
      1. [初出の実例]「今夜正しく女の彼の許に行て、二人臥して愛しつる顔よ」(出典:今昔物語集(1120頃か)三一)
    3. (男女の間で)慕わしく思う。好きだという気持になる。恋しく思う。
      1. [初出の実例]「これは仇なる男などの、深くも愛せずさすがに捨もやらぬを」(出典:人情本・春色辰巳園(1833‐35)初)
      2. 「苟(かりそ)めにも人を愛するといふからには」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)
  3. [ 二 ] 物事に対して心が引かれる場合。
    1. 貴さ、美しさなどを感じて、強く好きに思う。
      1. [初出の実例]「此の硯を取出して見るに、〈略〉云はむ方无(な)く微妙なれ、愛して、手裏(てのうち)に居(すゑ)て差上げ差下し、暫く見る程に」(出典:今昔物語集(1120頃か)一九)
      2. 「誉(ほまれ)を愛するは、人の聞(きき)をよろこぶなり」(出典:徒然草(1331頃)三八)
    2. 美しさ、おいしさ、良さなどを好んでそれを楽しむ。愛好する。賞美する。
      1. [初出の実例]「『故別当の肉村(ししむら)なれば、吉きなめり。此の汁飲れよ』と妻(め)に云て、愛し食(くらひ)けるに」(出典:今昔物語集(1120頃か)二〇)
      2. 「古人も此国に春を愛する事、おさおさ都におとらざる物を」(出典:俳諧・去来抄(1702‐04)先師評)
  4. [ 三 ] ( 一説、相(あい)する ) 適当に扱う。子供などのきげんをとる。あやす。
    1. [初出の実例]「ちちのみやみ給て、まろをおきて若宮はあしくよみ給かなどあいし申給けるとぞ人のかたり侍し」(出典:今鏡(1170)八)
    2. 「是程の大勢の中へただ二人いったらば、何程の事をかしいだすべき。よしよししばしあひせよ」(出典:平家物語(13C前)九)
  5. [ 四 ]キリスト教で)神が、あらゆるものをいつくしむ。また、そのような精神で、自分以外のものをかけがえのないものと思う。
    1. [初出の実例]「己の如く爾の隣を愛(アイ)すべし」(出典:引照新約全書(1880)馬太伝福音書)

愛するの語誌

( 1 )対象となるのは人・動植物・物事などさまざまであるが、対象への自己本位的な感情や行為を表わすことが多い。また、人に対して使う場合は目上から目下へ、強者から弱者へという傾向が著しかった。
( 2 )明治中期[英語] love [ドイツ語] lieben などの翻訳語として採用され、西洋の「愛」と結びついた結果、人に対しては、対等の関係での愛情を示すようになる。
( 3 )使役「せる(す)」受身「れる(る)」が付くときは、「せさせる(せさす)」「せられる(せらる)」となるが、近世以降詰まって「させる」「される」の形が現われる。樋口一葉「うもれ木‐六」の「喜ばれ度し愛されたし」、夏目漱石「それから‐一六」の「三千代さんの心機を一転して、君を元よりも倍以上に愛させる様にして」など。

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デジタル大辞泉プラス 「愛する」の解説

愛する

1997年公開の日本映画監督脚本熊井啓原作遠藤周作出演:酒井美紀、渡部篤郎、岸田今日子、小林桂樹、宍戸錠ほか。第10回日刊スポーツ映画大賞作品賞受賞。

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