(読み)さかえ

精選版 日本国語大辞典 「栄」の意味・読み・例文・類語

さかえ【栄】

[1] 〘名〙
① (動詞「さかえる(栄)」の連用形名詞化) さかえること。繁栄。栄華。
※書紀(720)欽明五年三月(寛文版訓)「栄班(サカヘ)貴盛(たの)しき例(つら)に入れり」
芸娼妓で、花代を多く稼いだものを表彰する語。
※談義本・養漢裸百貫(1796)序「人形棄而歌舞妓行。栄字始而後△(うろこ)高」
③ 希望をもたらす輝かしい光。
※良人の自白(1904‐06)〈木下尚江〉続「宛然(さながら)世界平和の為めに送られたる天の使の栄光(サカエ)かと思はれた」
[2] 横浜市の行政区の一つ。昭和六一年(一九八六戸塚区から分離成立。市南部の住宅地域。

さか・える【栄】

〘自ア下一(ヤ下一)〙 さか・ゆ 〘自ヤ下二〙
① 草木が繁茂する。転じて、勢いが盛んになる。繁栄する。繁盛する。さかる。さかう。はえる。
※書紀(720)継体元年正月(前田本訓)「冀はくは慇懃(ねむころ)に勧進りて帝業(あまつひつき)を紹隆(サカエ)しめよ」
※源氏(1001‐14頃)賢木「世にさかえ、時にあひ給し時は」
② 話に活気が出る。話がはずむ。
油地獄(1891)〈斎藤緑雨〉八「それから両女(ふたりは)話が栄(サカ)え」

えい【栄】

〘名〙
地位が上がったり、豊かになったりしてさかえること。繁栄。また、盛んな名声
海道記(1223頃)池田より菊川「才、身に足り、栄、分に余りて、時の花と匂ひしかば」 〔孟子‐公孫丑・下〕
② すぐれたものと認められる名誉。また、(へりくだった表現として)敬うべき相手に対してある物事をすることの名誉。光栄。
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一〇「伯氏(ブロサアトン)の求るところの栄は、人に知られ、名誉を得る如きの事に非ず
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉七「謹んで其一般を紹介するの栄を有する」

さか【栄】

〘語素〙 栄える意を表わす。動詞「さかゆ」「さかる」などの語幹にあたる。「さか枝(え)」「さか映(は)え」「豊(とよ)さか」など。
※書紀(720)雄略一二年一〇月・歌謡「神風の 伊勢の 伊勢の野の 娑柯(サカ)枝を」

さか・う さかふ【栄】

〘自ハ下二〙 (ヤ行下二段活用の「さかゆ」から転じて、鎌倉・室町時代ころから用いられた語) =さかえる(栄)名語記(1275)〕
仮名草子浮世物語(1665頃)五「福(さいわひ)ながく子孫につたはり、家さかふるもの也」

はやし【栄】

〘名〙 (動詞「はやす(栄)」の連用形の名詞化) 他人を元気づけるもの。引き立たせるもの。美しくさせるもの。
出雲風土記(733)意宇「吾が御心の波夜志(ハヤシ)と詔りたまひき」

さかや・す【栄】

〘他サ四〙 =さかやかす(栄━)
史記抄(1477)四「そちが氏族をさかやすと云へり」

さか・ゆ【栄】

〘自ヤ下二〙 ⇒さかえる(栄)

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デジタル大辞泉 「栄」の意味・読み・例文・類語

えい【栄〔榮〕】[漢字項目]

[音]エイ(漢) ヨウ(ヤウ)(呉) [訓]さかえる はえ はえる
学習漢字]4年
草木が盛んに茂る。「栄枯
物事がさかえる。「栄華共栄清栄盛栄繁栄
ほまれ。名誉。「栄光栄誉虚栄光栄
体の活力を盛んにする。「栄養
[名のり]さか・さかえ・しげ・しげる・たか・てる・とも・なが・はる・ひさ・ひさし・ひで・ひろ・まさ・よし
[難読]弥栄いやさか栄耀えよう栄螺さざえ見栄みえ

さかえ【栄】

横浜市の区名。昭和61年(1986)戸塚区の南東部が分区。

えい【栄】

価値を高く認められること。名誉。ほまれ。「拝顔のに浴する」

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改訂新版 世界大百科事典 「栄」の意味・わかりやすい解説

栄[町] (さかえ)

千葉県北部,印旛(いんば)郡の町。人口2万2580(2010)。利根川南岸に位置し,南は印旛沼に面する。中心集落の安食(あじき)は明治中期まで利根川水運を背景にした印旛沼東岸地域の交易中心地で,成田山参詣の宿場町でもあったが,鉄道開通後は成田に商圏を奪われ衰退した。耕地の大部分を水田が占め,米作が盛んであるが,近年は野菜の生産もふえている。1973年の成田線電化を契機に安食駅周辺で住宅地開発が進められ,人口が増加している。東部の台地には,頭部が白鳳期の鋳造とされる薬師如来座像(重要文化財)のある竜角寺や方墳では関東地方で最大の岩屋古墳(史)を含む竜角寺古墳群などがあり,76年には県立史跡公園房総風土記の丘(現,県立房総のむら)がつくられた。
執筆者:

栄[村] (さかえ)

長野県北東端,下水内(しもみのち)郡の村。人口2215(2010)。県の北東端にある村で,北と東は新潟県,東は群馬県と接する。北部を千曲川が東流し,その左岸側をJR飯山線,国道117号線が通る。総面積の95%を山林・原野が占める山村で,冬季の積雪は2~3mにも達し,全国屈指の豪雪地帯である。千曲川沿いに低地が若干あって水稲が作られるほか,林業が盛ん。観光の中心は南東部にあって,古くから平家落人伝説の秘境として知られ,また岩魚の宝庫としても知られる中津川峡谷の秋山郷。温泉,民俗資料館などがある。国道405が新潟県と結ぶ。
執筆者:

栄(新潟) (さかえ)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「栄」の意味・わかりやすい解説


さかえ

愛知県名古屋市中区の中央にある地区で,旧区名。東西の広小路通りと南北の大津町通りが交差する名古屋市の都心一帯をいう。 1886年に国鉄名古屋停車場ができたときに栄町までの大通りが完成し,東に愛知県庁,名古屋市役所があって,名古屋の中心地として発展した。地下街があり,百貨店,高級専門店,銀行などの金融機関が集中し,地下鉄も東山線と名城線が接続している。また,南北に貫く 100m道路の久屋大通りは,中央が噴水,花時計,広場のある公園となっていて,日本で最初 (1954) に建てられたテレビ塔とともに市民の憩いの場となっている。


さかえ

新潟県中部,新潟平野の中央にある三条市北西部の旧町域。 1956年福島村と大面村が合体して栄村となり,1981年町制。 2005年三条市,下田村と合体して三条市となった。信濃川右岸の沖積地にあり,県下有数の米の産地。金属・機械工場の進出が著しい。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【名古屋[市]】より

…日本第4の人口をかかえる巨大都市で,1889年の市制施行当時は面積約13km2,人口約15万7000にすぎなかったが,その後守山市(1954市制)など周辺市町村を編入し,1995年現在,面積328km2,人口215万2184の規模となった。区制は,1908年東,西,中,南の4区で施行されたが,以後37年千種(ちくさ),中村,昭和,熱田,中川,港の6区,44年北,瑞穂,栄(45年中区に吸収)の3区,63年守山,緑の2区,75年名東,天白の2区が加わり,現在は16区になっている。名古屋市は太平洋側に位置しながらも,外洋から離れた盆地性の地形を示すため,気候は内陸性に近く,夏季の高温多湿,冬季の厳しい〈伊吹おろし〉が特徴的である。…

※「栄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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