零れる(読み)コボレル

デジタル大辞泉 「零れる」の意味・読み・例文・類語

こぼ・れる【零れる/翻れる/×溢れる】

[動ラ下一][文]こぼ・る[ラ下二]
液体粉末粒状の物などが容器などから外へ出る。すきまなどから漏れ落ちる。「コップの水が―・れる」「袋から米が―・れる」
音や光、匂いなどが、ある範囲を超えたり、すきまから漏れたりして、外に出る。また、隠されていたものが、思いがけなく現れる。「葉の間から日差しが―・れる」「しのび泣きの声が―・れる」「笑った口元に白い歯が―・れる」
感情などが、外に現れ出る。「笑みが―・れる」「色気が―・れる」
花や葉などが散る。
「梅の花折れば―・れぬわが袖に匂ひ香うつせ家づとにせむ」〈後撰・春上〉
[用法]こぼれる・あふれる――「こぼれる」は液体や粒状の物が容器などから外へ落ちること。「あふれる」は量が多くて容器に入りきらず、外へ出てしまうこと。「あふれてこぼれる」とは言えるが、「こぼれてあふれる」とは言わない。◇「コップが倒れて水がこぼれた」は「あふれた」で置き換えられない。◇「大雨で川があふれた」「会場に人があふれる」は「こぼれる」とは言わない。◇比喩ひゆ的に用いる「ほほえみがこぼれる」は、平静表情を保とうとして保てず、ほほえみが思わず外へ現れ出ること。「喜びにあふれる」は、喜びがからだ全体に満ちて、表情や態度に現れている状態である。
[類語](1あふれる溢れ出る溢れ出す満ち溢れるはみ出るはみ出す湧き上がる込み上げる湧き起こる湧く横溢おういつ充溢じゅういつ飽和流れる漏れる滴る零れ落ちる伝う垂れるぼとぼとぼたぼたぽたぽたほろほろぽろぽろぽとぽとぼろぼろたらたらだらだらはらはらぽつぽつぱらぱらばらばらぽろりほたほたぽつりぽつりぽつりぽつんはらりぱらりほろりぽたりどくどくたらりちょろちょろちょろりとくとくしたたりだくだくぽとり滴り落ちる垂らすほとばしる落ちる落ち込む陥る落っこちる下がる沈む下降する降下する沈下する低下する低落する下落する落下する落馬する落輪する脱輪する墜落する失墜する滑落する転落する崩落する滑り落ちる転げ落ちる崩れ落ちる/(4散る落ちる降り敷く凋落ちょうらくする落葉する枯れるしおれるしなびる萎えるしぼむ末枯れる枯らす枯れ落ちる立ち枯れ霜枯れ冬枯れ枯死

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「零れる」の意味・読み・例文・類語

こぼ・れる【零・翻】

  1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]こぼ・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙
  2. 水などの液体が、たまっているところからあふれてしたたり落ちる。あふれ出る。
    1. [初出の実例]「涙のこぼるるに、目も見えず、物もいはれず」(出典:伊勢物語(10C前)六二)
    2. 「いや大盃ぢゃ〈略〉おふ、あるは。こぼれる、こほれる」(出典:狂言記・樋の酒(1730))
  3. 物があまって外へ出る。はみ出る。あふれ出る。
    1. [初出の実例]「物見のかへさに、乗りこぼれて」(出典:枕草子(10C終)三一)
  4. 花や葉、砂など小さなものが落ち散る。
    1. [初出の実例]「むめの花をればこぼれぬわが袖ににほひかうつせ家づとにせむ〈素性〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)春上・二八)
    2. 「たたみの上にこぼれたる米粒を見て」(出典:尋常小学読本(1887)〈文部省〉四)
  5. 色があふれ出るように美しく照り映える。
    1. [初出の実例]「浅緑(あさみどり)野辺の霞はつつめども己保礼(コボレ)て匂ふ花桜かな」(出典:新撰万葉集(893‐913)上)
  6. 表情などがあざやかに外へ現われる。
    1. [初出の実例]「そひふし給へるさま、美しうらうたげなり、あい敬こぼるるやうにて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)紅葉賀)
  7. ことばが、あふれるようになめらかに次々と出る。
    1. [初出の実例]「イヤこれの茶売どのは、ソレハア口からこぼれるは」(出典:滑稽本・田舎草紙(1804)二)
  8. 近世上方語寛政の頃、京都祇園の花街のことば。芸妓が色客を何人も取る。〔滑稽本・戯男伊勢物語(1799)〕

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