デジタル大辞泉 「符」の意味・読み・例文・類語
ふ【符】[漢字項目]
1 両片を合わせて証明をする札。割り符。「符節/配符」
2 割り符を合わせたように一致する。「符合」
3 天からの知らせ。めでたいしるし。「
4 神仏のお守りの札。「護符・
5 一定の事柄を表すように取り決めた記号。「符号・
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
古文書様式の一つ。公式様(くしきよう)文書の一つで,上級官司から管隷下の下級官司へ下す文書。上申文書である解(げ)に対応する下達文書である。太政官(だいじようかん)から八省や諸国へ下す太政官符,省から管轄下の寮や司へ下す省符,国から郡へ下す国符などがある。様式は第1行に差出所と充所があり,本文の書止(かきどめ)文言はすべて〈符到奉行〉(符到らば奉行せよ)である。本文の次に文書発給責任者の位署があり,日付は最末であることが特徴である。太政官符は官符と称され,詔勅の内容をはじめ,国政に関する重大事を下達するもので,律令政府の発する文書の中ではもっとも権威のあるものであった。詔書に添える官符を詔書頌下符,地方に詔書を伝えるため,その内容を盛りこんだものを謄詔符という。八省のうち民部省はその職掌上,地方諸国にも符を発することができ,荘園制が盛んなときは,不輸不入を認める官符とともに民部省符を発した。官符,民部省符を得た荘園は官省符荘(かんしようふしよう)といって権威づけられた。西海道(九州)は大宰府がおかれていたので,この地方へ下す官符はまず大宰府にあてられ,ついで大宰府の符が西海道諸国へ下された。大宰府符は宰符と称された。
官符,省符のうち,諸国へ下すものにはともに内印(ないいん)(天皇御璽)が,京官に下すものには外印(げいん)(太政官印)が捺され,宰符,国符はそれぞれ大宰府印,国印が捺された。律令体制の弛緩,新政治体制の出現とともに,符の発せられることは減少し,中世以降は太政官符を除き,ほとんど消滅した。官符は形式的には律令を奉ずる朝廷=公家政権の最高権威をもつ文書として使われ,その効力は別として明治維新までときどき発せられた。最後のものは律令太政官制が停止される直前の1869年(明治2)3月のものである。
執筆者:飯倉 晴武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
公式様文書(くしきようもんじょ)の一形式。律令(りつりょう)制で、上級官司からそれに直属する下級官司に下す文書。これに対して下級官司から上級官司に差し出す文書を解(げ)という。太政官(だいじょうかん)から八省・諸国・大宰府(だざいふ)に下す符が太政官符(官符と略す)で、律令時代のもっとも重要な政治文書である。また八省から諸寮司(りょうじ)および職(しき)に下すのが各省符(単に省符という場合は民部省符のことをいう)、各国司から郡司に下す符が各国符で、さらに郡司が下級機関に下す郡符などがあり、いずれも官符に準じた書式をとった。普通の文書は本文のあとに日付を入れ、責任者の位署を書き署名するが、符は責任者の位署・署名のあとに年月日を書く。すなわち日付が最後に書かれるのが特徴である。また符にはそれぞれの役所の官印をかならず捺(お)す。初めは字面全部に官印が捺されたが、鎌倉時代ごろになると、官符の場合、最初と最後の三か所に捺されるようになる。官符で諸国に下すものにはだいたい内印(ないいん)(「天皇御璽(ぎょじ)」)を捺し、在京の諸司に下すものには外印(げいん)(「太政官印」)を捺した。平安中・末期ごろから宣旨(せんじ)・官宣旨が、さらに鎌倉中・末期ごろからは院宣(いんぜん)・綸旨(りんじ)が官符にかわる重要な国政文書となり、それに伴って官符は儀礼的なものとなっていった。また、各省符・国符・郡符も律令体制の変質のなかで、平安中・末期には消滅した。
[上島 有]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
公式令(くしきりょう)に定める文書様式。所管・被管の統属関係にある上級官司から下級官司へ命令を伝達する文書の形式。「某符某」の書出文言,「符到奉行」の書止文言,文書作成責任者である主典(さかん)と長官(かみ)の位署,年月日の順で記された。また直接の所管・被管関係にはない場合でも,太政官・八省・弾正台と諸国のような因事管隷関係の場合には符が発給された。平安時代には寺社の政所符(まんどころふ)のように,所管・被管関係にない一般的な命令下達文書として用いられたが,これはしだいに下文(くだしぶみ)形式のものにかわった。その後も形骸化した符の例は江戸時代まで続いた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…各種の災厄をよけ,幸運をもたらすと信じられている物体のことで,呪符ともいう。現代の日本でみられる例には,自動車や身につける交通安全や学業成就などの〈御守(おまもり)〉や家の柱・門などにはり付ける〈御札(おふだ)〉,客商売の家や店に置く〈招き猫〉などがある。…
…漢簡では,漢の1尺に当たる約23cm,幅1cmのものが標準で,2尺のものを檄(げき),3尺のものを槧(ざん)といい,2行書く幅のものを両行,書く面を3面以上作ったものを觚(こ)と呼ぶ。また簡面をカバーし,その表面に宛名を書くものを検,同じものを二分して別に保持し,必要なときにつき合わせて証拠に使うものを符,品物につける鉄道荷札のようなものを楬(けつ),旅行者の身分証明書を棨(けい)というなど,使用目的による名称もある。中国木簡の出土は1901年にA.スタインがタクラマカン砂漠中のニヤ遺跡で晋簡を発掘したのに始まるが,彼はそれ以前にカローシュティー木簡を発見している(カローシュティー文書)。…
…11~13世紀に荘園領主や官司が荘園公領在地や地下(じげ)を支配するため盛んに使用した下達文書。8世紀から10世紀までの律令政治において,所管の官司から被管の官司へ下達する文書としては符が用いられていたが,符の発給にあたっては,官司印の請印や授受の儀式など厳格な手続を必要とし,緊急を要する事項あるいは軽易な事項については,ふつごうで煩わしいものであった。そこで文書作成担当者から直接下達する文書として開発されたのが下文である。…
…ともに天皇の命を伝える文書であるが,詔書は臨時の大事に,勅旨は尋常の小事に用いられた。(c)符(ふ)は所管(上級の役所)から被管(下級の役所)に下す公文書であり,(d)解(げ)は被管から所管への上申文書である。(e)移(い)は対等の役所間に交わされる文書で,(f)牒(ちよう)は本来は主典以上の役人が役所へ申達する文書であるが,後には役所から役所に準ずる所に出される文書として用いられた。…
※「符」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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