(読み)サチ

デジタル大辞泉 「幸」の意味・読み・例文・類語

さち【幸】

海や山でとれる食物獲物収穫。「海の、山の
しあわせ。幸福。さいわい。「あれと祈る」
獲物をとる道具。また、それがもつ霊力。
おのおの―を相易あひかへて用ゐむ」〈・上〉
[類語](2幸福幸せさいわ果報冥利みょうり多幸多祥たしょう万福ばんぷく至福浄福清福福福大福ハッピー

こう【幸】[漢字項目]

[音]コウカウ)(漢) [訓]さいわい さち しあわせ みゆき
学習漢字]3年
運がよい。さいわい。「幸運幸甚幸福多幸薄幸不幸
(「」の代用字)思いがけない幸い。「射幸心
かわいがる。気に入られる。「幸臣/寵幸ちょうこう
天子天皇外出。みゆき。「行幸御幸巡幸臨幸
[名のり]さい・さき・たかたつ・とみ・とも・ひで・むら・ゆき・よし
難読幸先さいさき御幸みゆき

さいわい〔さいはひ〕【幸】

神奈川県川崎市の区名。区内幸町さいわいちょう(もと御幸村みゆきむら)より命名

さき【幸】

さいわい。幸福。さち
「ますらをの心思ほゆ大君のみことの―を聞けば貴み」〈・四〇九五〉

こう〔カウ〕【幸】

さいわい。幸福。「か不幸か誰もいない」

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精選版 日本国語大辞典 「幸」の意味・読み・例文・類語

さい‐わい‥はひ【幸】

  1. ( 「さきわい」の変化した語 )
  2. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. ( 形動 ) 神仏など他が与えてくれたと考えられる、自分にとって非常に望ましく、またしあわせに感じられる状態。運のよいこと。吉事にあうこと。幸運であること。また、そのさま。幸福。しあわせ。
      1. [初出の実例]「雨の降りぬべきになん見わづらひ侍る。身さいはひあらば、この雨は降らじ」(出典:伊勢物語(10C前)一〇七)
      2. 「この人の、かくねむごろに思ひきこえ給へるこそ、今は御さいはゐなれ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
    2. ( 形動 ) ある事態、状況が、ある人にとってうまく利用できるようであること。また、そのさま。
      1. [初出の実例]「番する郎等共も、皆遠侍に臥たりければ、今こそ待処の幸(サイハイ)よと思ひて」(出典:太平記(14C後)二)
    3. 料理で、コイなどの尾ひれの部分の名。
  3. [ 2 ] 〘 副詞 〙
    1. 運よく。折よく。さいわいにして。好機として。
      1. (イ) 「に」「にも」を伴う場合。
        1. [初出の実例]「さいはひに神の助けあらば」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
        2. 「泣く子は幸(サイハ)ひに寝たらしい」(出典:永日小品(1909)〈夏目漱石〉火鉢)
      2. (ロ) 「と」を伴う場合。
        1. [初出の実例]「幸と和国さまへ、つしまの客から参った朝鮮人参」(出典:浄瑠璃・傾城反魂香(1708頃)中)
      3. (ハ) 単独で用いる場合。
        1. [初出の実例]「さいわひもちあわせてござる程に」(出典:虎明本狂言・鍋八撥(室町末‐近世初))
        2. 「幸ひ天気は快(よ)し」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)
    2. ( 「に」を伴って ) そうしてくだされば私はしあわせだの意で、人に頼む気持を表わす。どうぞ。何とぞ。さいわいの事。
      1. [初出の実例]「読む人幸(サイハヒ)に論の到らざるを咎めたまふな」(出典:小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉下)
  4. [ 3 ] 神奈川県川崎市の行政区の一つ。市東部の住宅・工業地域。多摩川西岸にある。かつては多摩川ナシの産地。昭和四七年(一九七二)成立。

さち【幸】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 獲物をとるための道具。また、その道具のもつ霊力。
    1. [初出の実例]「火遠理命、其の兄火照命に、各佐知(サチ)を相易へて用ゐむと謂ひて」(出典:古事記(712)上)
  3. 漁や狩りの獲物の多いこと。また、その獲物。
    1. [初出の実例]「各、其の利(サチ)を得ず」(出典:日本書紀(720)神代下(鴨脚本訓))
  4. ( 形動 ) 都合のよいこと。さいわいであること。また、そのさま。しあわせ。幸福。
    1. [初出の実例]「凡人の子の福(さち)を蒙らまく欲りする事は、おやのためにとなも聞しめす」(出典:続日本紀‐天応元年(781)四月一五日・宣命)
    2. 「人の身に、さち・さいわいといへるさち」(出典:名語記(1275)六)

幸の語誌

元来の意味で用いられ、情態性を表わす「さき(幸)」とは、関係ない語であった。しかし、「さち」を得られることが「さき」という情態につながることと、音声学上、第二音節の無声子音の調音点のわずかな違いをのぞけば、ほぼ同じ発音であることなどから、「さち」にの意味が与えられるようになったと推定される。上代の文献には、狩りや漁に関係しない、純然たるの意味の確例は見られない。


さき‐く【幸】

  1. 〘 副詞 〙 さいわいに。無事に。変わりなく。つつがなく。旅立つ人の無事を祈っていう例が多い。
    1. [初出の実例]「爾(いまし)、皇孫、就(い)てまして治(しら)せしむべし。行矣(サキク)ませ、宝祚之隆(あまのひつきのさかえまさむこと)、当に天(あめ)(つち)と窮り無けむ」(出典:日本書紀(720)神代下(兼方本訓))
    2. 「大伴の 御津の浜びに 直(ただ)泊てに 御船(みふね)は泊てむ 恙(つつみ)無く 佐伎久(サキク)いまして 早帰りませ」(出典:万葉集(8C後)五・八九四)

こうカウ【幸】

  1. 〘 名詞 〙
  2. さいわい。しあわせ。幸福。
    1. [初出の実例]「遇不遇、幸不幸は人より甚しきか」(出典:随筆・胆大小心録(1808)一七)
    2. [その他の文献]〔論語‐述而〕
  3. 天皇、法皇、上皇の外出。みゆき。御幸(ごこう)。行幸。
    1. [初出の実例]「大わうかうありて、あはれげに、御すいでんよにましまし」(出典:御伽草子・熊野の本地(室町時代物語集所収)(室町末))
    2. [その他の文献]〔司馬相如‐封禅文〕

さき‐わい‥はひ【幸】

  1. 〘 名詞 〙 幸運にあうこと。さいわい。幸福。さちわい。
    1. [初出の実例]「佐伎波比(サキハヒ)の厚き輩(ともがら)参到(まゐた)りて正目(まさめ)に見けむ」(出典:仏足石歌(753頃))
    2. 「福(さきはひ)のいかなる人か黒髪の白くなるまで妹が声を聞く」(出典:万葉集(8C後)七・一四一一)

さけく【幸】

  1. 〘 副詞 〙 「さきく(幸)」の上代東国方言。
    1. [初出の実例]「久慈川は佐気久(サケク)あり待て潮船に真梶(まかぢ)(しじ)抜き我(わ)は帰りこむ」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三六八)

さく【幸】

  1. 〘 副詞 〙 「さきく(幸)」の上代東国方言。
    1. [初出の実例]「父母が頭(かしら)かき撫で佐久(サク)あれていひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三四六)

さき【幸】

  1. 〘 名詞 〙 さいわい。幸福。さち。
    1. [初出の実例]「大夫(ますらを)の心思ほゆ大君の御言(みこと)の佐吉(サキ)を聞けば貴み」(出典:万葉集(8C後)一八・四〇九五)

さつ【幸・猟】

  1. 〘 造語要素 〙 ( 「さち(幸)」の変化した語 ) 矢、弓などの狩猟用具や、狩猟をする人などの上について、それが狩猟に関するものであることをあらわす。「さつ弓」「さつ人」など。

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普及版 字通 「幸」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音] コウ(カウ)
[字訓] さいわい

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
手械(てかせ)の形。これを手に加えることを執という。〔説文〕十下に「吉にして凶をるるなり」とし、字を(ぎゃく)と夭(よう)とに従い、夭死を免れる意とするが、卜文・金文の字形は手械の象形。これを加えるのは報復刑の意があり、手械に服する人の形を報という。幸の義はおそらく倖、僥倖にして免れる意であろう。のち幸福の意となり、それをねがう意となり、行幸・侍幸・幸愛の意となるが、みな倖字の意であろう。〔説文〕にまた幸部十下があり、「人をかす以なり。大に從ひ、(じん)に從ふ。一に曰く、大聲なり」とし、「一に曰く、讀みて(こ)の(ごと)くす。一に曰く、俗語、盜の止まざるを以て(でふ)と爲す」とあり、(えき)・執・癸(ぎょ)・(ちゅう)・報・(きく)の諸字がその部に属する。は獣屍の解(とかい)する形、他はみな手械に従う字である。幸福の義は倖。〔独断、上〕に「幸は宜幸なり。世俗、幸を謂ひて僥倖と爲す。車駕の至る、民臣其の澤を被り、以て僥倖となす。故に幸と曰ふなり」とみえる。

[訓義]
1. 倖と通じ、さいわい。
2. こいねがう。
3. めぐむ、したしむ。
4. みゆき、いでまし。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕幸 サイハヒ・タカシ・ノゾム 〔字鏡集〕幸 ヨシ・タカシ・コノム・ヨロコビ・アフ・サイハヒ・ネガフ

[部首]
の字は夭部に従う。幸部には・執・圉・・報・の六字を属するが、執以下の字は手械の象に従う。

[声系]
〔説文〕に幸声としてを収め、倖・を収めない。は很(もと)る、にも直の意があり、は怒るさま。夭の字と声系が異なるようである。

[熟語]
幸愛・幸運・幸宴・幸会・幸姫・幸覬・幸御・幸・幸教・幸近・幸偶・幸好・幸楽・幸察・幸私・幸昵・幸酒・幸処・幸賞・幸辱・幸心・幸臣・幸甚・幸人・幸生・幸多・幸得・幸佞・幸媚・幸便・幸福・幸民・幸免・幸・幸有・幸臨
[下接語]
愛幸・栄幸・恩幸・駕幸・還幸・喜幸・貴幸・冀幸・覬幸・御幸・行幸・僥幸・徼幸・近幸・欣幸・慶幸・巧幸・至幸・私幸・射幸・巡幸・神幸・進幸・親幸・潜幸・遷幸・尊幸・多幸・佞幸・薄幸・不幸・嬖幸・遊幸・臨幸

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百科事典マイペディア 「幸」の意味・わかりやすい解説

幸[区]【さいわい】

神奈川県川崎市中東部の区。1972年区制。区名は旧御幸村の一字に由来。平坦な地形で北西部に独立丘陵の加瀬(かせ)山があり,夢見ヶ崎公園となっている。JR横須賀線新川崎駅に隣接するJR新鶴見操車場跡地(一部は横浜市)は区に残る唯一の大規模開発予定地で,長年放置されていたが2005年以降マンションや商業ビル,研究機関の拠点として順次整備された。北部の堀川町にある市域工場形成の初期に創立された明治製菓跡地は,テクノピアとして再開発,東芝の工場跡地もラゾーナ川崎として再開発された。中東部の柳町,小向東芝町にも東芝などの企業が立地する。西部は中小工場地域から住宅地となる。10.01km2。15万4212人(2010)。

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デジタル大辞泉プラス 「幸」の解説

幸(ゆき)

徳島県徳島市で保護された雑種のメス犬。2006年11月、「崖っぷち犬」として話題となったメス犬(のちのリンリン)と同時期に保護。姿形が似ていることから同犬の姉妹と言われた。

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