畏まる(読み)カシコマル

デジタル大辞泉 「畏まる」の意味・読み・例文・類語

かしこま・る【畏まる】

[動ラ五(四)]
身分の高い人、目上の人の前などで、おそれ敬う気持ちを表して謹んだ態度をとる。「陛下御前に―・る」「―・ってあいさつする」
謹みの気持ちを表し堅苦しく姿勢を正して座る。正座する。「―・っていないで、ひざをお崩しなさい」
命令・依頼などを謹んで承る意を表す。承りました。「はい、―・りました」
堅苦しい感じがする。窮屈である。
「お政は学問などという―・った事は虫が好かぬが」〈二葉亭浮雲
恐縮して感謝する。
「かくおはしましたる喜びを、又なき事に―・る」〈夕顔
わびを言う。言いわけをする。
「仏に―・り聞ゆるこそ苦しけれ」〈初音
謹慎する。
三所ながら―・らせ給へりしかば」〈大鏡師輔
[類語]畏れる謹むしゃちほこばる固くなる・身も縮む・縮こまる小さくなる真面目腐る恐恐恐懼きょうく恐縮有り難いかたじけないうれしいもったいないおそれ多い幸甚恐れ入る痛み入る心苦しい身に余る過分身の縮む思い畏怖

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「畏まる」の意味・読み・例文・類語

かしこま・る【畏・恐】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. 相手の威厳に押されたり、自分に弱点があったりして、おそれ入る。おそれつつしむ。
    1. [初出の実例]「是以て諸の僧尼惶懼(カシコマリ)て所如(せむすべ)を知らず」(出典:日本書紀(720)推古三一年四月(岩崎本訓))
  3. 高貴な人が自分に対して示した行為を、もったいないと思う。恐縮する。また、礼を述べる。
    1. [初出の実例]「物部連に副へて来、己汶(こもん)の地賜ることを謝(カシコマリ)申す」(出典:日本書紀(720)継体一〇年九月(前田本訓))
  4. 申しわけなく思うようすをする。また、わびをいう。
    1. [初出の実例]「心まどはし給ひし世のむくいなどを、仏にかしこまり聞ゆるこそ苦しけれ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)初音)
  5. 目上の人の怒りを受けて謹慎する。
    1. [初出の実例]「めのとかへてん、いとうしろめたしと仰らるれば、かしこまりて御前にも出でず」(出典:能因本枕(10C終)七)
  6. つつしみを表わして、居ずまいを正したり、平伏したりする。
    1. [初出の実例]「君のおり給ふ所に五位六位ひざまづきかしこまる」(出典:宇津保物語(970‐999頃)忠こそ)
    2. 「Caxicomatte(カシコマッテ) イル〈訳〉地面に手をつくなどして、ある人の前に恐れ入っている」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  7. つつしんで命令を受ける。つつしんで承諾するの気持を表わす。→かしこまって候かしこまりました
    1. [初出の実例]「わが言はん事はたばかりてんやなどのたまふ。かしこまりてさぶらふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
    2. 「鄭に滑を伐つ事をやめよと請れたれは、かしこまりたとは云わいで、結句王の使を囚たぞ」(出典:史記抄(1477)三)
  8. ( 助動詞「た」を伴って ) 堅苦しくて、きゅうくつな感じがする。
    1. [初出の実例]「学問などといふ正坐(カシコマッ)た事は虫が好かぬが」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)

かしくま・る【畏・恐】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙かしこまる(畏)
    1. [初出の実例]「玄奘誠に惶(をののき)誠に恐(カシクマリ)ぬ」(出典:大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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