有難い(読み)アリガタイ

デジタル大辞泉 「有難い」の意味・読み・例文・類語

あり‐がた・い【有(り)難い】

[形][文]ありがた・し[ク]《あることがむずかしい、の意から》
人の好意などに対して、めったにないことと感謝するさま。「―・い助言」「―・く頂戴する」
都合よく事が進んでうれしく思うさま。「―・いことに雨がやんだ」「社にとっては―・くない状況だ」
またとないくらい尊い。もったいない。「―・い仏様」「―・いお言葉」
存在しがたい。珍しい。めったにない。
「―・きもの、舅にほめらるる婿」〈・七五〉
むずかしい。困難だ。
「前車のてつを見る事は誠に―・き習ひなりけむかし」〈神皇正統記・後醍醐
世に生きることがむずかしい。生活しにくい。
「世の中は―・く、むつかしげなるものかな」〈・東屋〉
[派生]ありがたがる[動ラ五]ありがたげ[形動]ありがたさ[名]ありがたみ[名]
[類語](1かたじけないうれしいもったいないおそれ多い恐縮幸甚謝る謝するわびわび言平謝り陳謝謝罪多謝わびる恐懼きょうく恐れ入る痛み入る心苦しい身に余る過分かしこまる畏れる謹むしゃちほこばる固くなる縮こまる小さくなるまじめ腐る身の縮む思い畏怖恩義恩に着る頭を下げる腰をかがめる平身低頭身に過ぎる三拝九拝深謝感謝拝謝万謝謝意謝恩感佩かんぱいかしこくも感恩有り難がる言葉に甘えるお言葉に甘える厚意多とする感極まる感じ入る感に堪えない身に染みる思いやり/(2便宜好都合便利利便あつらえ向きタイムリーうれしいおんの字重宝ちょうほう有用有益簡便軽便至便もってこい格好頃合ころあ打って付けぴったり好個好適適する適う適える合う沿うそぐう向く似合う似つかわしいふさわしいしっくり当てはまる適合する適当する合致する即応する同調するフィットする程よい絶好願ったり叶ったり願ってもない渡りに船相応しか即する肌が合う適格適材くみし易いしかるべきマッチ究竟くっきょう合い口合目的文句無しリーズナブル好条件見合う匹敵言い得て妙あたかもよし三拍子そろ似合わしいジャストミート思いがけない当を得る馬が合う息が合う順当どんぴしゃり所を得る最適つぼにはまる水を得たうおのよう結構尽くめ

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精選版 日本国語大辞典 「有難い」の意味・読み・例文・類語

あり‐がた・い【有難】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]ありがた・し 〘 形容詞ク活用 〙 ( 存在することがむずかしいの意 )
  2. 存在がまれである、むずかしい。なかなかありそうにない。めったにない。
    1. [初出の実例]「夕猟に 千鳥踏み立て 追ふごとに ゆるすことなく 手放(たばな)れも 還来(をち)もか易き これを除(お)きて または安里我多之(アリガタシ)」(出典万葉集(8C後)一七・四〇一一)
    2. 「ありがたきもの、舅にほめらるる婿。また、姑に思はるる嫁の君」(出典:枕草子(10C終)七五)
  3. ( 特に、「ある」が世にある、生きる意の場合 ) 世に生きることがむずかしい。生活しにくい。生き長らえにくい。
    1. [初出の実例]「世の中は、ありがたく、むつかしげなる物かな」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
  4. (めったにないくらい)優れている。立派である。
    1. [初出の実例]「かんなびのくら人の腹なり。いとありがたき君と聞き奉るぞ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上上)
    2. 「着付が縞縮に紅鳶一つ、〈略〉黒繻子の九寸幅、ありがてへありがてへ」(出典:滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)上)
  5. (その事柄、行為などがめったにないことで)またとなく尊い。かたじけない。もったいない。おそれおおい。
    1. [初出の実例]「ありがたき法をひろめし聖にぞうちみし人も導かれける〈覚雅〉」(出典:二度本金葉(1124‐25)雑下)
    2. 「法華経の御名を聞く事はをぼろけにもありがたき事なり」(出典:日蓮遺文‐法華題目鈔(1266))
  6. ( 好ましい状態や、人の好意などに出あって、めったにないことと感謝する気持をこめて ) 喜びたい気持である。うれしく、喜ばしく思われる。かたじけない。→ありがとう
    1. [初出の実例]「御免あるはありかたけれども、理には背くほどに」(出典:史記抄(1477)一五)
    2. 「思ひがけない御隠居さまの有(アリ)がたい思召」(出典:人情本春色梅児誉美(1832‐33)四)
    3. 「我々までが喰ふやうになったのは、実にありがたいわけでごス」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉初)

有難いの語誌

からと意味が変化拡大していったが、の意は類義語カタジケナシと関連があり、室町頃は感謝の意はカタジケナイが用いられ、元祿以降アリガタイが優勢になったとされている。

有難いの派生語

ありがた‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙

有難いの派生語

ありがた‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

有難いの派生語

ありがた‐さ
  1. 〘 名詞 〙

有難いの派生語

ありがた‐み
  1. 〘 名詞 〙

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