出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
公式様(くしきよう)文書の一つ。皇太子および皇后,皇太后,太皇太后に対して,その司から上申する文書。養老公式令に春宮(とうぐう)坊の啓の様式が規定されている。それによれば最初に〈春宮坊啓〉と書し,その次に本文を書き,書き止めの語は〈謹啓〉,次に年月日を記し,位署欄は大夫位姓名,亮位姓名とならべて署す。三后にあてるものもこれに準じた。六国史などにみられるが,内容的には書式のととのったものではなく,比較的早くに用いられなくなったと思われる。これとは別に,奈良時代から個人の上申文書に〈啓〉の語を入れたものがあり,それが私文書の源流として現在に〈拝啓〉〈一筆啓上〉のような書簡用語を残したともいわれる。
執筆者:飯倉 晴武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
公式令(くしきりょう)に規定された文書の一様式。皇太子および三后(さんこう)(皇后、皇太后、太皇太后)に上申するとき用いる文書。諸役所、私人が事を皇太子に上申するとき、文書を春宮坊(とうぐうぼう)に送り、春宮坊の啓をもって皇太子の認可を仰ぐこととなっていた。三后は皇太子の場合と同じ規定であった。しかし奈良時代に個人間の私的書状にも「啓」「謹啓」などと書いたものがある。現在、手紙の書出しに使われる「謹啓」「拝啓」などはこの名残(なごり)である。
[百瀬今朝雄]
…古くは上書といい,漢代では章,奏,表,議などといった。魏・晋時代以後は啓といい,唐・宋時代では表,状,剳(さつ),書などともよばれた。内容は政治の得失を論じるのが多いが,儀式や謝恩や天変地異について述べる場合もある。…
※「啓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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