移る(読み)ウツル

デジタル大辞泉 「移る」の意味・読み・例文・類語

うつ・る【移る/遷る】

[動ラ五(四)]
位置が変わる。
㋐場所や地位・配置などが変わる。「新居に―・る」「営業部に―・る」
㋑(遷る)移転する。「都が―・る」

㋐関心の対象が変わる。「興味がほかに―・った」
㋑物事や人の性質・傾向・状態などが変わる。「次の議題に―・る」「すぐさま行動に―・る」
時間が過ぎる。「時代が―・る」
色やにおいなどが他の物に染みつく。「石鹸せっけんのにおいが―・る」
病気や物の勢い・傾向などが他に及ぶ。「風邪が―・る」「火が隣家に―・った」「父の癖が子供にも―・る」
時が経過して色があせる。色がさめる。
「花の色は―・りにけりないたづらに我が身よにふるながめせしまに」〈古今・春下〉
花や葉が散る。
「今日だにも庭を盛りと―・る花消えずはありとも雪かとも見よ」〈新古今・春下〉
霊魂などがのりうつる。
「物の生霊いきすだまなどいふもの、多く出で来て、さまざまの名のりする中に、人にさらに―・らず」〈・葵〉
[可能]うつれる
[類語](1動く移動する移転する引っ越す部署や所属が変わる)転ずる転出する転任する転属する移籍するくら替えする/(2転ずる移行する推移するシフトする移す変わる化する変ずる動く変える移ろう化ける改まる変化する転化する変質する一変する一転する様変わりする豹変ひょうへんする急変する激変する変転する変動する変移する変遷する転変する流転する/(3過ぎる経つ経る過ぎ去る過ぎ行くけみする経過

ゆつ・る【移る】

[動ラ四]経過する。うつる。
「天の原富士の柴山木くれの時―・りなば逢はずかもあらむ」〈・三三五五〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「移る」の意味・読み・例文・類語

うつ・る【移・遷】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] 事物がある位置から他の位置に変わる。
    1. 物や人が別の場所に変わる。移転する。
      1. [初出の実例]「其地(そこ)より遷移(うつり)まして、竺紫(つくし)の岡田宮に一年坐しき」(出典:古事記(712)中)
    2. 官位、職務、職場が変わる。転任する。転属する。
      1. [初出の実例]「右大将の君、大納言に成給ひて、例の左にうつり給ひぬ」(出典:青表紙一本源氏(1001‐14頃)若菜下)
    3. 権限権力などのあり場所が他にかわる。
    4. 人の気持や興味・関心・話題が、今までの対象から他の物、また、次の段階にかわる。他に転じる。また、ある物に心が引きつけられる。
      1. [初出の実例]「花みれば心さへにぞうつりける色には出でじ人もこそしれ〈凡河内躬恒〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春下・一〇四)
      2. 「話は不図(ふと)昨夜の噂に転(ウツ)って」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後)
    5. 色や香などが、他の物にしみつく。
      1. [初出の実例]「色ならば移ばかりも染めてまし思ふ心をえやは見せける〈紀貫之〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)恋二・六三一)
      2. 「優なる女の、姿、にほひ、人よりことなるが、わけ入りて膝にゐかかれば、にほひなどもうつるばかりなれば」(出典:徒然草(1331頃)二三八)
    6. 病人に付いている物怪(もののけ)が、祈祷によって「よりまし」に付く。のりうつる。
      1. [初出の実例]「物のけ、小さきわらはにうつりて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    7. 病気が伝染する、火事が飛び火するなど、ある状態が他に伝わる。
      1. [初出の実例]「都の東南(たつみ)より火出(い)できて、〈略〉大学寮、民部省などにまでうつりて」(出典:方丈記(1212))
      2. 「此島の餓鬼も手を摺(する)月と花〈芭蕉〉 砂に暖(ぬくみ)のうつる青草〈野坡〉」(出典:俳諧・炭俵(1694)下)
    8. 蕉風俳諧連句で、前句の情趣が後句に引き継がれたり、また対照、呼応したりする。〔俳諧・三冊子(1702)〕
  3. [ 二 ] 時間がたつ。時が経過する。
    1. [初出の実例]「たとひ時うつり、事さり、たのしびかなしびゆきかふとも」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
  4. [ 三 ] 物事がある状態から他の状態に変わる。
    1. 物事の状態、性質が変化する。変遷する。
      1. [初出の実例]「これの世は宇都利(ウツリ)去るとも常葉(とことは)に栄(さ)残り坐(いま)せ後の世のため又の世のため」(出典:仏足石歌(753頃))
      2. 「古往今来風俗の移(ウツ)る事は、桑田碧海ぢゃが」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)四)
    2. 色があせる。色がさめる。
      1. [初出の実例]「花の色はうつりにけりないたづらに我身世にふるながめせしまに〈小野小町〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春下・一一三)
    3. 花や葉が散る。しおれる。
      1. [初出の実例]「秋山にもみつ木の葉の移去者(うつりなば)更にや秋を見まくほりせむ」(出典:万葉集(8C後)八・一五一六)
    4. 人が死ぬ。
      1. [初出の実例]「うつりし人の後世を、こまごまと弔(とぶら)ひなんどする人だにも」(出典:撰集抄(1250頃)四)
    5. 次の段階、動作などに進む。
      1. [初出の実例]「かうと思ひこむと事情も顧みないで実行に移る質だ」(出典:星座(1922)〈有島武郎〉)

ゆつ・る【移】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙 うつる。多く、時間が経過する意に用いられる。
    1. [初出の実例]「松の葉に月は由移(ユつり)黄葉の過ぐれや君が逢はぬ夜そ多き」(出典:万葉集(8C後)四・六二三)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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