合う(読み)アウ

デジタル大辞泉 「合う」の意味・読み・例文・類語

あ・う〔あふ〕【合う】

《「会う」と同語源》
[動ワ五(ハ四)]
二つ以上のものが近寄って、一つになる。くっつく。「いくつもの川が―・って大きな流れとなる」
よく調和する。適合する。「配色がよく―・う」「和室に―・った装飾
二つのものが一致する。くい違いがない。合致する。「息が―・う」「気が―・わない」「話が―・う」
ある基準と一致する。「寸法が―・わない」「答えが―・う」「道理に―・う」
それだけのことをするかいがある。引き合う。「―・わない商売
動詞の連用形に付いて複合語をつくる。
㋐互いに…する。「助け―・う」「取り―・う」
㋑一緒になる。「落ち―・う」
[動ハ下二]
他のものに合わせる。また、合わせまじえる。
母刀自おもとじも玉にもがもや戴きてみづらの中に―・へ巻かまくも」〈・四三七七〉
重ね合わせる。まじえる。
鶺鴒まなばしら尾行き―・へ」〈・下・歌謡〉
[下接句]息が合う馬が合う気が合う口に合うりが合わない算盤そろばんが合う手に合わない歯の根が合わないはずが合わぬ肌が合う平仄ひょうそくが合わない間尺ましゃくに合わない目が合う割に合う
[類語]合わせる適うそろ適する沿うそぐう当てはまる適合する適当する合致する即応するぴったりする適える向く似合う似つかわしいふさわしいしっくり打ってつけ持ってこい同調するフィットする正当順当当を得る釣り合う見合う即する調和相応対応相当応分分相応値する兼ね合い均衡平衡バランスマッチ便宜好都合便利利便あつらえ向きタイムリー有り難いうれしいおんの字重宝ちょうほう有用有益簡便軽便至便格好頃合ころあ好個好適程よい絶好願ったり叶ったり願ってもない渡りに船しか即する肌が合う適格適材くみし易いしかるべき究竟くっきょう合い口合目的文句無しリーズナブル好条件匹敵言い得て妙あたかもよし三拍子そろ似合わしいジャストミート思いがけない馬が合う息が合うどんぴしゃり所を得る最適つぼにはまる水を得たうおのよう結構尽くめ

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精選版 日本国語大辞典 「合う」の意味・読み・例文・類語

あ・うあふ【合・会・逢・遭】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ワ行五(ハ四) 〙
    1. [ 一 ] ( 合 ) 物と物とが一つに重なる。また、物と物とがつり合う。
      1. 物と物とが寄りついて一つになる。
        1. (イ) 一方が他方にうまく重なる。また、すきまなく寄りつく。合する。
          1. [初出の実例]「からころも裾のうち交(か)へ安波(アハ)ねども異(け)しき心をあが思はなくに」(出典:万葉集(8C後)一四・三四八二)
          2. 「カイノ クチガ vǒta(ワウタ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
        2. (ロ) ある物事に他の物事が加わる。いっしょになる。
          1. [初出の実例]「声あはせて舞ふほどもいとをかしきに、水の流るる音、笛の声などあひたるは」(出典:枕草子(10C終)一四二)
        3. (ハ) 夢・占い・主張などが事実と一致する。
          1. [初出の実例]「この夢あふまで又人にまねぶなとの給ひて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
        4. (ニ) 両者の心・性質・数量・運動などがうまく一致する。
          1. [初出の実例]「シュビガ vǒ(ワウ)〈訳〉初めと終わりとが符合する」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. 状態や程度が互いによくつり合う。
        1. (イ) ある状態や時期、程度などにふさわしくなる。似合う。適合する。
          1. [初出の実例]「人のほどにあはねば、とがむるなり」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月二一日)
          2. 「すこし春あるここちこそすれとあるは、げにけふのけしきにいとようあひたるも」(出典:枕草子(10C終)一〇六)
        2. (ロ) 二つ以上の音や色、味覚などがうまく調和する。
          1. [初出の実例]「薄色なるうすものの裳(も)をひきかくれば、腰などちりゐて、こがれたる朽葉にあひたる心ちもいとをかしうおぼゆ」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
        3. (ハ) 力などが互いに同程度である。張り合う。
          1. [初出の実例]「兵具を調へ馬に乗せて、郎等二三十人具したる者にてぞ下(くだり)ければ、会ふ敵无き者にてぞ有ける」(出典:今昔物語集(1120頃か)二九)
        4. (ニ) 道理にかなう。
          1. [初出の実例]「あはざる訴訟なりとも、一度は、などや御免なからん」(出典:曾我物語(南北朝頃)三)
        5. (ホ) 費やしたものと、その結果得たものとがつり合う。割に合う。
          1. [初出の実例]「よいやうに我手に占(さん)を置てみる〈利牛〉 しゃうじんたればあはぬ商ひ〈桃隣〉」(出典:俳諧・炭俵(1694)下)
          2. 「それくらゐの事を言はなくて償(ア)ふものぢゃない」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)
      3. ( 刃と石とが適合する意か ) 研いだ刃物などが鋭くなる。よく切れる。
        1. [初出の実例]「いつまでか蛤になる小刀のあふべきことのかなはざるらむ」(出典:七十一番職人歌合(1500頃か)三番)
    2. [ 二 ] ( 会・逢・遭 ) 顔が合う。男女が合う。また、力と力とがぶつかる。
      1. 顔を互いに向かい合わせる。
        1. (イ) 対面する。会見する。
          1. [初出の実例]「吾が愛(は)し妻に い及(し)阿波(アハ)むかも」(出典:古事記(712)下・歌謡)
          2. 「竹取の家にかしこまりて請(しゃう)じ入れてあへり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
        2. (ロ) ( 相手を主語にして ) やって来て偶然出会う。来合わせる。
          1. [初出の実例]「汝(な)が恋ふる 愛(うつく)し夫(づま)は〈略〉黒馬に乗りて 川の瀬を 七瀬渡りて うらぶれて 夫(つま)は会(あひき)と 人そ告げつる」(出典:万葉集(8C後)一三・三三〇三)
        3. (ハ) (そちらに)顔を向ける。対する。
          1. [初出の実例]「あきらけき鏡にあへば過ぎにしもいまゆくすゑの事も見えけり」(出典:大鏡(12C前)一)
      2. ある物事や時期に偶然ぶつかる。
        1. (イ) ある現象や事件などに出合う。
          1. [初出の実例]「利根川の川瀬も知らずただ渡り波に安布(アフ)のす逢へる君かも」(出典:万葉集(8C後)一四・三四一三)
          2. 「かくからき目にあひたらん人」(出典:徒然草(1331頃)一七五)
        2. (ロ) ある時に巡り合う。また、よい時機にぶつかって栄える。
          1. [初出の実例]「沖つ波高く立つ日に安敝(アヘ)りきと都の人は聞きてけむかも」(出典:万葉集(8C後)一五・三六七五)
          2. 「つらゆきが、この世におなじく生まれて、この事の時にあへるをなむよろこびぬる」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
      3. 男女が関係を結ぶ。結婚する。
        1. [初出の実例]「此世の人は男は女にあふ事をす。女は男にあふことをす」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
        2. 「きた八さまに口説(くどか)れまして、ツイ逢(アヒ)まして、かうした身になりましたゆへ」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛‐発端(1814))
      4. 相手に立ち向かう。戦い争う。
        1. [初出の実例]「槻弓(つくゆみ)に まり矢をたぐへ 貴人(うまひと)は 貴人どちや 親友(いとこ)はも 親友どち いざ阿波(アハ)なわれは」(出典:日本書紀(720)神功摂政元年・歌謡)
    3. [ 三 ] ( 合 ) ( 動詞の連用形に付けて、補助動詞として用いる ) 二つ以上のものが同じ動作をすることを表わす。
      1. (イ) ともに…する。一同が…する。
        1. [初出の実例]「紐の緒の いつがり安比(アヒ)て にほ鳥の ふたりならびゐ」(出典:万葉集(8C後)一八・四一〇六)
        2. 「ことゆかぬ物ゆゑ大納言をそしりあひたり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. (ロ) 互いに…する。
        1. [初出の実例]「二人河原へ出であひて、心行くばかりつらぬきあひて、共に死ににけり」(出典:徒然草(1331頃)一一五)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 他ハ下二 〙あえる(合・和・韲)

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