心無い(読み)ココロナイ

デジタル大辞泉 「心無い」の意味・読み・例文・類語

こころ‐な・い【心無い】

[形][文]こころな・し[ク]
思慮がない。無分別である。「―・い観光客が残したごみ」⇔心ある
他人に対して思いやりがない。情がない。「病人にとっては―・い言葉だ」
情趣を解しない。無風流である。「―・い人が花を折る」⇔心ある
「―・き身にもあはれは知られけりしぎ立つ沢の秋の夕暮れ」〈新古今・秋上〉
人間の心をもっていない。無情である。
「―・き草木といへどあはれなり」〈古今哀傷詞書
私意私情をもたない。ふたごころがない。
「―・くして奥州に御供して」〈義経記・二〉
[類語](1大人気ないたわいない無分別不穏当不謹慎不心得非常識不見識言語道断由由しい目に余る成ってない若気の至り年甲斐も無い年寄りの冷や水/(2冷たい冷ややか冷淡薄情不人情非人情無情非情冷酷冷血酷薄クール無慈悲血も涙も無い

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精選版 日本国語大辞典 「心無い」の意味・読み・例文・類語

こころ‐な・い【心無】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]こころな・し 〘 形容詞ク活用 〙
  2. 事象に応じた適切な判断や配慮ができない状態を表わす。思慮がない。無分別である。不注意である。
    1. [初出の実例]「格子をあげたりけれど、守、心なしと、むつかりて、おろしつれば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
  3. 他人の気持人情を理解しない。思いやりがない。情がない。
    1. [初出の実例]「許己呂奈伎(ココロナキ)鳥にそありけるほととぎすものもふ時に鳴くべきものか」(出典:万葉集(8C後)一五・三七八四)
  4. 俗世から離れ喜怒哀楽の情を持たない。世捨人の境地である。
    1. [初出の実例]「こころなき身にもあはれはしられけり鴫たつ沢の秋の夕暮」(出典:山家集(12C後)上)
  5. 風雅、風流を解する感受性がない。情趣を解しない。もののあわれがわからない。無風流である。
    1. [初出の実例]「野分する野辺のけしきをみる時はこころなき人あらじとぞ思ふ〈藤原季通〉」(出典:千載和歌集(1187)秋上・二五八)
  6. 進んで心を働かそうとしない。関心をもたない。気を使わない。
    1. [初出の実例]「紙布(かみこ)、綿小(わたこ)などいふもの、帽子、したうづやうのもの、心々に送りつどひて、霜雪の寒苦をいとふに心なし」(出典:俳諧・笈の小文(1690‐91頃))
  7. 私意、私情をもたない。虚心である。ふたごころがない。
    1. [初出の実例]「その時御目にかかり始めて、又こころなくして、奥州に御ともして」(出典:義経記(室町中か)二)
  8. ( 人間以外の生物や無生物に対して用い ) 知、情、意を具有していない。人間の心をもっていない。
    1. [初出の実例]「こころなき草木といへどあはれなり今年は咲かずともにかれなん〈尚侍広井女王〉」(出典:志香須賀本古今(905‐914)哀傷)
    2. 「心なき草木も、花実の折は忘れめや」(出典:謡曲・西行桜(1430頃))
  9. 無心である。期待しない。
    1. [初出の実例]「われ心ありて来たれども終に索(もとめ)得ず。今心なくして鶴を見るこそうれしけれ」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)前)

心無いの語誌

→「こころなし(心無)」〔名〕の語誌。

心無いの派生語

こころな‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

心無いの派生語

こころな‐さ
  1. 〘 名詞 〙

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