抱く(読み)ダク

デジタル大辞泉 「抱く」の意味・読み・例文・類語

だ・く【抱く】

[動カ五(四)]《「いだく」の音変化》
1
㋐腕を回して、しっかりとかかえるように持つ。「子供を―・く」「肩を―・く」
㋑卵をかえすために、鳥が卵の上にしゃがむ。「親鳥が卵を―・く」
2 男性が女性と共寝をする。同衾どうきんする。「男に―・かれる」
3 人をまきぞえにする。人を罪に陥れる。
「手前てめえも俺も是までだ、手前が―・くか俺が―・くか」〈伎・小袖曽我〉
→抱かかえる[用法]
[可能]だける
[類語](1)抱える・抱いだく・抱きかかえる・抱きしめる・抱き合う・抱き付く・抱きすくめる・抱き上げる・抱き起こす・抱き下ろす・抱き寄せる・抱き取る・抱き留める・抱き込む・抱え込む・抱っこ・抱合・抱擁/(2)性交・交合・情交・セックス・ファック・エッチ・交接・交尾・性行為・房事・同衾・共寝・夜伽・性交渉・性生活・夫婦生活・合歓・関係・寝る・枕を交かわす・夜の営み

いだ・く【抱く/▽懐く】

[動カ五(四)]
1 腕でかかえ持つ。だく。「ひしと―・く」「母親の胸に―・かれる」
2 かかえるように包み込む。「村々を―・く山塊」「大自然の懐に―・かれる」
3 ある考えや感情をもつ。「疑問を―・く」「青年よ大志を―・け」
4 しっかり守る。擁護する。
「任那みまなを―・き守ること、おこたることなきなり」〈欽明紀〉
[可能]いだける
→抱かかえる[用法]
[類語]抱える・抱だく・抱きかかえる・抱きしめる・抱き合う・抱擁・抱き付く・抱きすくめる・抱き上げる・抱き起こす・抱き下ろす・抱き寄せる・抱き取る・抱き留める・抱き込む・抱え込む・抱っこ・抱合/(3)覚える・感じる・感ずる・催す・持つ

む‐だ・く【▽抱く】

[動カ四]《「身む綰たく」の意か。「綰く」は手を使ってある動作をする意》だく。いだく。
「上野かみつけの安蘇あそのま麻群そむらかき―・き寝ぬれど飽かぬをあどか我あがせむ」〈万・三四〇四〉

うだ・く【▽抱く/▽懐く】

[動カ四]腕にかかえる。いだく。だく。
「身をたをやかになして、鞠を―・き侍るべし」〈撰集抄・八〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「抱く」の意味・読み・例文・類語

いだ・く【抱・懐・擁】

  1. 〘 他動詞 カ行五(四) 〙
  2. ① 両腕にかかえて持つ。だく。うだく。
    1. [初出の実例]「大前宿禰、太子を抱(イダキ)まつりて馬に乗せまつれりといふ」(出典:日本書紀(720)履中即位前(図書寮本訓))
    2. 「ひとみな〈略〉こをいだきつつおりのりす」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月九日)
  3. ② 中に包み込むようにする。擁する。
    1. [初出の実例]「任那を擁(イダキ)守(まも)ること、懈(おこた)り息(やす)むこと無し」(出典:日本書紀(720)欽明五年三月(寛文版訓))
  4. ③ 心の中に、ある考えや感情を持つ。
    1. [初出の実例]「慕ふこと異にして、荒れたることを懐(イダ)(〈別訓〉ウダ)けば」(出典:大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃))
    2. 「泣て騒人の恨をいだきけんも」(出典:海道記(1223頃)萱津より矢矧)
    3. 「吾輩は少なからず恐れを抱いた」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一)

抱くの語誌

( 1 )同意語の「むだく」「うだく」「いだく」「だく」の先後関係は、「むだく」が奈良時代から平安初期、「うだく」が平安初期から鎌倉時代頃、「いだく」が平安初期から現代、「だく」が平安中期から現代、という順になる。
( 2 )ダクが①の意味で勢力を拡大していくのに伴って、イダクは次第に③の意味に限定されるようになり、現在に至る。


だ・く【抱】

  1. 〘 他動詞 カ行五(四) 〙 ( 動詞「いだく(抱)」の変化した語 )
  2. ① 腕にかかえて胸の前に支えもつ。
    1. [初出の実例]「いづれの宮をかまづだき給ふと」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲下)
  3. ② ある考え・感情を心にもつ。ひそかに思う。
    1. [初出の実例]「終に捨離退心を懐(タカ)ず」(出典:蘇悉地羯羅経寛弘五年点(1008)上)
  4. ③ 他人に、自分と同じ考えや行動を無理にとらせる。特に、悪事や罪を自分とともにさせる。だきこむ。
    1. [初出の実例]「だいてはいるとは二位どのか言はじめ」(出典:雑俳・柳多留‐八(1773))
  5. ④ 遊女屋の仲居が、幇間を情夫としてもつ。江戸時代、京都祇園の遊里で用いられた語。
    1. [初出の実例]「抱懐(ダイている) たいこもちとわけあるをいふ」(出典:洒落本・箱まくら(1822)上)
  6. ⑤ 男女が抱擁する。交接する。
    1. [初出の実例]「去り難いとてだかりょうか」(出典:歌謡・松の葉(1703)一・錦木)

抱くの補助注記

イダク→ダクの変化については、音韻論的には、語頭狭母音の脱落説や濁音前の入り渡り鼻音のイ表記省略説等がある。


うだ・く【抱・懐】

  1. 〘 他動詞 カ行四段活用 〙 ( 「いだく」「だく」の古語 )
  2. ① 腕に抱える。むだく。いだく。
    1. [初出の実例]「婢即ち勅を受けて抱(ウタキ)て往きて之を棄てつ」(出典:小川本願経四分律平安初期点(810頃))
    2. 「甚だ熱き銅の柱を抱(ウダカ)しめられて立つ。〈興福寺本訓釈 抱 有太加之〉」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
  3. ② 心に思う。
    1. [初出の実例]「稟けたる性淳質にして常に慈悲を懐(ウダき)、博学多才にして諸の技芸備(そな)はれり」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)二)

抱くの語誌

イダクが和文資料を中心に用例が認められるのに対し、ウダクは漢文訓読資料に偏る。ウダクの確例は中古初期からであり、上代はムダク。語頭のウ・ムの交替はウバフ・ムバフなど用例が多いが、イも関わるのはイバラ・ウバラ(ムバラ)ぐらいである。


むだ・く【抱・懐】

  1. 〘 他動詞 カ行四段活用 〙 ( 「身(む)綰(た)く」の意か ) 両手でかかえこむ。抱く。うだく。いだく。
    1. [初出の実例]「抱持 上取也、牟太久」(出典:新訳華厳経音義私記(794))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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