暇・遑(読み)いとま

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (元来、物事と、物事との間にできる空白の部分を表わす)
① 仕事と仕事の間の、何もしないとき。絶え間。有閑期。
※書紀(720)推古一二年四月(岩崎本訓)「冬の月に間(イトマ)有らば、以て民を使ふ可し」
② 特に、物事から解放されて精神的にものびのびと自由にふるまえるとき。ひま。閑暇。
※枕(10C終)三三「猶名残つれづれにて、心ひとつはいとまある心ちすべかめれば」
③ ある物事をするために必要な時間のゆとり。ある物事をするためにあけることのできる時間。てまひま。
※源氏(1001‐14頃)若菜上「仮名文見給へるは、目のいとまいりて」
④ 物と物との間の、あいている部分。すきま。とだえ。
※夫木(1310頃)三「谷風の吹上にたてる玉柳、枝のいとまも見えぬ春かな〈よみ人しらず〉」
⑤ 喪の忌に服すること。忌引(きび)き。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「御ぐしおろし給てかくれ給ぬ。〈略〉殿のきみたち、おとども、御いとまになり給ぬれば」
⑥ 仕事、任務、地位から離れること。休暇、退職もしくは解任。
※宇津保(970‐999頃)楼上上「『ことなる事なくば、おほやけごとをものせず侍らん』とて、院にいとま申侍りしを」
⑦ 人が離れ去ること。離別。辞去。いとまごい。おいとま。→いとまを告げる
※源氏(1001‐14頃)若菜下「二条院へわたり給はむとて、御いとま聞え給ふ」
⑧ 特に、夫婦が離別すること。離縁。離婚。また、離縁状のこと。
※虎明本狂言・箕被(室町末‐近世初)「いとまをやらふ程に何なりともそなたのほしひ物をとっておかいれ」
⑨ 夫婦が離別する時、縁切りのために渡す物品。手切れ。
※虎明本狂言・乞聟(室町末‐近世初)「一どならず二どならず、いつもの事といひながら、ひまをやりやうが有。いとまをやったらば、何共なるまひよ」
⑩ この世から離れ去ること。死去。死没。
※海道記(1223頃)木瀬川より竹の下「『ここにてはや暇うべし』ときこえけるに」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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