精選版 日本国語大辞典 「乙」の意味・読み・例文・類語
おつ【乙】
[1] 〘名〙
② (十干の順位で第二位にあるところから)
(イ) 甲(こう)に次ぐもの。また、甲に次いで第二位にあるもの。物事の順位の第二番目。
※令義解(718)考課「試律令十条。〈略〉全通為レ甲。通二八以上一。為レ乙」
※風姿花伝(1400‐02頃)六「かやうなる品々、所々を、かぎらで甲おつなからんほどの為手(して)ならでは」
(ロ) 第一位、または最高に及ばない状態。
※評判記・秘伝書(1655頃)ちはのへんたうの事「男のいはく、わが身はしんだいもおつ也」
③ 音声や楽器の音で、甲(かん)に対して一段と低く下がるもの。また、低く、しんみりした音や調子。
※太平記(14C後)二一「真都(しんいち)三重の甲を上ぐれば、覚一初重の乙(ヲツ)に収めて歌ひすましたりければ」
⑥ 「甲」などとともに、人や物の名の代わりとして用いる。
※義血侠血(1894)〈泉鏡花〉六「乙者(オツ)も劣らず水を向けたりき」
⑦ うすぼんやりしている人をいう近世の上方方言。〔新撰大阪詞大全(1841)〕
⑧ 物事の状態。具合。調子。おつあい。
※洒落本・蕩子筌枉解(1770)平蕃曲「こんにゃ見せまへにしかけておつが悪くはおらァもふ乗りかいやうと思ふ」
※滑稽本・六阿彌陀詣(1811‐13)初「一度位は負けてやっても好うござりますと、おつを云はれてさすがの亭主も」
[2] 〘形動〙
① 普通と違って、一種のしゃれた情趣があるさま。
※洒落本・辰巳之園(1770)「『このごろ名代の、六部女郎さ』『おつな子だね』」
② 普通と異なっているさま。一風変わっていて変なさま。
おつ‐が・る
〘自ラ五(四)〙
おつう【乙】
〘副〙
① 変に。妙に。むやみに。やたらと。
※歌舞伎・八重霞曾我組糸(1823)大切「お前先刻からおつうわしをはぐらかすが」
② しゃれて。じょうずに。
※黄表紙・三筋緯客気植田(1787)上「こぞうめが、をつう口舌をしかけをる」
き‐の‐と【乙】
〘名〙 (木の弟の意) 十干(じっかん)の第二。おつ。いつ。
※曾丹集(11C初か)「きのと 冬深く野はなりにけり近江なるいぶきのと山雪ふりぬらし」
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