(読み)オツ

デジタル大辞泉 「乙」の意味・読み・例文・類語

おつ【乙】

[名]
十干の第二。きのと。
甲を第一位としたときの第二位。「甲をつけがたい」
物事を図式的に説明するときなどに、甲・丙などとともに、ものの名の代わりに用いる語。「甲丙の三人」「甲の距離」
邦楽で、かんより一段低いおん。⇔かん
[形動]
4の低音の意から》普通と違って、なかなかおもしろい味わいのあるさま。あじ。「な事を言う」
普通とは違って変なさま。妙。「にすます」
「始めて出勤した時は―な感じがした」〈二葉亭浮雲
アクセントツ、はオ
[類語]1いき平淡お洒落小粋洒脱伊達気障気が利く/(2変にいやにいつにない異常異様奇異奇妙面妖不思議不可解不審不自然奇怪奇態風変わり特異異状異例非常別条変ちくりん変てこ変てこりん妙ちきりんけったいおかしいおかしな奇天烈きてれつ珍奇新奇珍妙奇抜奇警奇想天外突飛ファンシー突拍子もない言語道断無茶めちゃむちゃくちゃめちゃくちゃめちゃめちゃ滅法法外無理乱暴無体理不尽非理不当不条理不合理非合理狂的

おつ【乙】[漢字項目]

常用漢字] [音]オツ(呉) イツ(漢) [訓]きのと おと
〈オツ〉
十干二番目。きのと。「甲乙
順位で、第二位。「乙種
〈イツ〉
きのと。「乙卯いつぼう
二番目。「乙夜いつや
文末を止めるしるし。「不乙ふいつ
〈おと〉「乙姫おとひめ乙女おとめ
[名のり]お・き・くに・たか・つぎ・と・とどむ
[難読]早乙女さおとめ独乙ドイツ乙甲めりかり乙張めりはり

めり【乙/減り】

《動詞「め(減)る」の連用形から》
へること。出費や損失。
「一年に殆んど五割の―が立つ」〈魯庵社会百面相
邦楽で、音の高さを低くすること。特に尺八でいう。⇔かり

き‐の‐と【乙】

《「木の」の意》十干の2番目。おつ。

いつ【乙】[漢字項目]

おつ

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精選版 日本国語大辞典 「乙」の意味・読み・例文・類語

おつ【乙】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 十干の第二番目。きのと。〔黒本本節用集(室町)〕
    2. ( 十干の順位で第二位にあるところから )
      1. (イ)(こう)に次ぐもの。また、甲に次いで第二位にあるもの。物事の順位の第二番目。
        1. [初出の実例]「試律令十条。〈略〉全通為甲。通八以上。為乙」(出典:令義解(718)考課)
        2. 「かやうなる品々、所々を、かぎらで甲おつなからんほどの為手(して)ならでは」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)六)
      2. (ロ) 第一位、または最高に及ばない状態。
        1. [初出の実例]「男のいはく、わが身はしんだいもおつ也」(出典:評判記・秘伝書(1655頃)ちはのへんたうの事)
    3. 音声や楽器の音で、甲(かん)に対して一段と低く下がるもの。また、低く、しんみりした音や調子。
      1. [初出の実例]「真都(しんいち)三重の甲を上ぐれば、覚一初重の乙(ヲツ)に収めて歌ひすましたりければ」(出典:太平記(14C後)二一)
    4. 漢籍を読む際に文章の切れ目に朱点を入れたり、文字が脱落している箇所のそのかたわらに注記したりすること。
    5. 能楽の囃子(はやし)の打ち方の一種。太鼓を軽く打ち、撥(ばち)を革からすぐに離さずに打ち出す「どん」という音。また、小鼓の時は、打つと同時にしらべのにぎりをゆるめて発する「ぱ」という音。
    6. 「甲」などとともに、人や物の名の代わりとして用いる。
      1. [初出の実例]「乙者(オツ)も劣らず水を向けたりき」(出典:義血侠血(1894)〈泉鏡花〉六)
    7. うすぼんやりしている人をいう近世の上方方言。〔新撰大阪詞大全(1841)〕
    8. 物事の状態。具合。調子。おつあい。
      1. [初出の実例]「こんにゃ見せまへにしかけておつが悪くはおらァもふ乗りかいやうと思ふ」(出典:洒落本・蕩子筌枉解(1770)平蕃曲)
    9. 物事の道理。理屈。また、事情。
      1. [初出の実例]「一度位は負けてやっても好うござりますと、おつを云はれてさすがの亭主も」(出典:滑稽本・六阿彌陀詣(1811‐13)初)
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙
    1. 普通と違って、一種のしゃれた情趣があるさま。
      1. [初出の実例]「『このごろ名代の、六部女郎さ』『おつな子だね』」(出典:洒落本・辰巳之園(1770))
    2. 普通と異なっているさま。一風変わっていて変なさま。
      1. [初出の実例]「『ゆふべどけへお出なんした。京町かへ』『フウおつな事をいふの。〈略〉おれが京町へ行った沙汰はまだ聞かなんだ』」(出典:洒落本・通言総籬(1787)二)
      2. 「始て出勤した時は異(オツ)な感じがした」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)

乙の派生語

おつ‐が・る
  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙

おつう【乙】

  1. 〘 副詞 〙
  2. 変に。妙に。むやみに。やたらと。
    1. [初出の実例]「お前先刻からおつうわしをはぐらかすが」(出典:歌舞伎・八重霞曾我組糸(1823)大切)
  3. しゃれて。じょうずに。
    1. [初出の実例]「こぞうめが、をつう口舌をしかけをる」(出典:黄表紙・三筋緯客気植田(1787)上)

き‐の‐と【乙】

  1. 〘 名詞 〙 ( 木の弟の意 ) 十干(じっかん)の第二。おつ。いつ。
    1. [初出の実例]「きのと 冬深く野はなりにけり近江なるいぶきのと山雪ふりぬらし」(出典:曾丹集(11C初か))

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普及版 字通 「乙」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 1画

[字音] オツ・イツ
[字訓] まがる・きのと・おとる

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
獣骨の象。〔説文〕十四下に「春、艸木曲して出づ。气(陰気)ほ彊(つよ)く、其の出づること乙乙たるに象るなり。(こん)とを同じうす。乙は甲を承けて人頸に象る」とするが、文意に一貫性を欠く。〔爾雅、釈魚〕に「魚腸、之れを乙と謂ふ」とし、魚尾を丙、魚枕(頭骨)を丁とするが、魚とは関係がない。乙は獣骨で作った骨べらの象である。亂(乱)は(らん)(乱れた糸)を乙で解くので、これを乙治という。

[訓義]
1. まがる、へらの形。
2. 甲乙は五行の木。木の兄(え)(甲)、木の弟(と)(乙)という。きのと。
3. 十干において、甲に次ぐ。おとる。
4. 名の代わりに、某を甲・乙のようにいう。なにがし。
5. に通じ、乙鳥(燕)、つばめ。
6. 軋に通じ、きしる。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕乙 キノト・ヲハル

[部首]
〔説文〕に乾・亂・尤の三字を属する。乾は旗桿の吹き流しの形、尤は祟(たたり)をなす呪霊をもつ獣の象形。ともに乙の形義と関係はない。亂は骨べらで乱れた糸を解く形。

[声系]
〔説文〕に乙声として(やく)・失・を収め、また・失の声系字を収めるが、の乙は軛(やく)(くびき)の象形、失はエクスタシーの状態にある巫女の象形である。(軋)は擬声語

[語系]
乙・eat、燕ianは声近く通用する。燕を乙というのは斉人の語。

[熟語]
乙乙乙科・乙正・乙選・乙第・乙鳥・乙部・乙榜・乙夜・乙覧
[下接語]
魚乙・甲乙・天乙・不乙・鳧乙・風乙

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改訂新版 世界大百科事典 「乙」の意味・わかりやすい解説

乙 (おつ)

雅楽および能の用語で,甲(かん)に対応する。(1)雅楽の笙の音名。平調(ひようぢよう)の音で基本の音。琴や琵琶はこの音で調音する。(2)小鼓の打音名。革の中央辺を打った瞬間に調緒(しらべお)を少し締め,すぐゆるめた低く強い音。〈ポ〉と唱えられ,譜面上では〈〇〉と記される。(3)大鼓の打音名。小さく打った右手でそのまま革をおさえて響かせない弱い音。〈ドン〉と唱えられ,譜面上では〈〇〉と記される。ただし,実演上では〈一調〉などの特別な場合を除いては,甲と区別しない流派もある。
キザミ
執筆者:

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知恵蔵 「乙」の解説

退社するときや仕事が終わったときに交わされるあいさつ「おつかれさま」を略した当て字電子掲示板(スレ)を新たに立てたり、使用法ルールを設定したり、1000の書き込みで消滅する「2ちゃんねる」スレにおいて、これに続くスレを立てた人に、よく「乙」とねぎらって記される。また、人柱になって(自らの身をもって)得たコンピューター関連などの情報の書き込みに対しても「乙」と返す。「乙カレー」も同義。

(川口正貴 ライター / 2009年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「乙」の意味・わかりやすい解説


おつ

日本音楽の用語。「 (かん) 」に対するもので,一般に低音の音またはその奏法もしくはそうした部分をいう。大鼓では,最も弱いドンの音およびその奏法,小鼓では,最も標準的なポの音およびその奏法をいう。

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占い用語集 「乙」の解説

十干の一つ。五行の木行のうち、陰の木をあらわす。自然界では、しなやかな草花・枝葉・ツタに例えられる。周囲の環境に合わせて、しなやかに伸びていく性質がある。

出典 占い学校 アカデメイア・カレッジ占い用語集について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「乙」の解説

乙 (オト)

動物。ネコの古名

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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